ボ卜ルシップ
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洋酒ビンに入れられた、美しく、勇ましい帆船。数々の帆は風を受けて大きくはらみ、船体をわずかに傾けて、白波を蹴立てて青海原を突き進んでゆく・・・・・・大洋を優雅に帆走する姿そのままに。
ボトルシップは、19世紀の半ぱ頃、風まかせの長い航海に厭きた、工夫好きの一水夫によって創作されたものといわれています。
当時は一航海が3年に及ぶことも珍しくなく、海に閉ざされた船上で、無聯に苦しんだ水夫達は、手近な材料を利用して、木工細工、彫刻、ロープ編みなどに腕をふるい、時を過ごしていました。
初めて作られたボトルシップは、仲間達の興味と競争心を煽り立てたに違いありません。新しく珍しいホビイの誕生として喜ぱれたことでしよう。
ボトルシップの第1の魅力は、細いビンの口から、比較的大きく、複雑に艤装されたミニチュア帆船を、どのように入れるか、という不可思議さにあります。初めて見た方がまず考えられるような「長いピンセットを使い、器用さと忍耐力で」とか「ビンの底を切り継ぎして」等のものでは決してありません。
そのビン入れの方法は、当初から"ボトルシップの秘密"'として殊更に謎めかされ、それ故にますます人々の気をそそり、"魅惑のホビイ"として興味をかきたてました。
それは主に船乗り達により次第に広く伝わってゆきましたが、更に時の流れと共に多くの人々の知恵が加わって、さまざまなビン入れ手法となって伝えられています。伝承されたそれらの"ビン入れ手法"は、強力な接着剤の発明や、使いやすい塗料等の出現に助けられ、現在では、合理的で、誰にでもたやすく習得出来るものにまで洗練されて来ております。
日本では、近世に外洋帆船の活躍した時代のなかったこと、あるいは、最近まで適当なガラス製酒ビンが普及しなかった故か、その知名度の割には実際にホビイとして楽しんでいる人々はごく少なく、一般には作品の実物に接する機会もほとんどないものとおもわれます。
"ボトルシップの秘密"すなわち、"ビン入れ手法"は200年足らずのその歴史の間に各国でさまざまな方法が考えだされました。主として洋酒の空ビンを用いますが、ビンを立てた形で使う「竪型」、と横たえて使う「横型」とがあります。横型でも、中の船が、船首をピン口に向けているものを「出船型」、船首をビン底に向けているものを「入船型」と称します。
ビン内での組み立て方法には、欧米の主流である「牽引組み立て方式(=引き起こし式)」や、日本独自の「結索組み立て方式(=ビンの中で糸結び)」等々があります。
海に閉ざされた帆船の麓しい水夫に使えたのは、小さな木片とジヤックナイフ、布切れ、糸、針、ニカワ、わずかな塗料にすぎませんでした。ボトルシップ作りの唯一のルールは「すべてを自作する、材料、道具は出来るだけ身近にあるものを利用する」となっております。高価な材料、機械、道具をわざわざ購入使用したり、既製の部品(プラモデル、スケールモデルキットの部品等)を利用するのは避け、費用もかけません。
"秘密"の手ほどきさえあれぱ、より多くの人々に愛され楽しまれることとなりましょう。
⇒ 2002.11.21 横浜港 横浜マリタイムミュージアム 平成14年秋季第7回横浜ボ卜ルシップ愛好会作品展
新規作成日:2002年11月21日/最終更新日:2002年11月21日