海軍(海洋力)の色々

海軍は、すなわち、海の守りの力である。
しかしながら、世界に数多の国があれば、数多の組織体形が存在する。

海軍は、英語では一般にNAVYであるが、これとて必ずしも一律なカテゴリーにはならない。

海軍の第一の任務は、武力による海洋防衛である。
これは、戦いを第一とするわけではなく、戦わずして守ると言う事も含む。
そして、主たる活躍の場は、海である。
しかし、海を持たない国にとっては、河川であったり、湖沼であったりする場合もある。

保有する装備も、艦艇は当然として、航空機や海兵戦力に及ぶ場合もある。
また、沿岸防衛を海軍が行うと言う見地から、沿岸砲台や地対艦ミサイルを海軍が管理する場合もあれば、艦艇の搭載機すら空軍の指揮下にある場合もある。

海を守ると言う事は、なにも外的からの直接攻撃だけに対する物ではない。
自然災害に対するもの、船舶事故に対するもの、漁業資源の保護、更には海洋犯罪なども対象になる。

また、海を制する為には、勢力範囲の海図を整える必要が有る。
航海の安全の為には、燈台などの航路標識の整備、維持管理も大切な物だ。

古くは、これらをすべて、海軍が行っていたが、専門分野の多様化により、それぞれの部署に割り振られる事も多い。

現在の日本の場合はどうであろうか。
海洋力と言う、広い意味で捕らえるならば、多くの組織が該当する。
海上自衛隊:軍事的防衛を担当する。平時において海上保安庁と連携し、我が国の海洋の安全を守る。
海上保安庁:海洋における、警察、救難任務のほか、海図作成、航路標識の維持管理を行う。
気象庁:海洋を含む気象観測を行う。
税関:麻薬などの密輸取締に当たる。
水上警察:沿岸、港湾での警察業務を行う。
入国管理:港湾での入国管理業務を行う。
水産庁:漁業資源の保護、密漁の取締を行う。
都道府県水産部門:漁業資源の保護、密漁の取締を行う。
自治体消防:港湾地域での災害防止活動を行う。

このように、数多くの部署が存在し、各種海洋の保安業務に当たっている。

ジェーン軍艦年鑑などでは、海軍のみならず、準海軍たる沿岸警備隊などの他、海軍を持たない国の場合、それに代わる海洋警察などを掲載している。
もちろん、ジェーン軍艦年鑑の掲載が、国際法による海軍の基準に一致しているわけではないのだが、広い意味での、その国の海洋支配を行う組織として、代表的な物を掲載しているわけである。

司法警察権限を持つ海洋警察と、海軍とは必ずしも一致する物ではないが、国によって組織体系は色々であり、任務分掌も複雑である。
地上戦の例であるが、明治維新後の日本においても、新生陸軍では反乱軍鎮圧ができず、警視庁が鎮圧の支援に当たった例も実在する。

各国海軍の名称はどうなっているのであろう。
海上自衛隊は、Japan Navy と呼ばれる事もあるが、正式には「海上自衛隊」である。
最近、各国とも、任務の多様化により、海軍と海洋警察を分離する事が多くなっている。
また、海図作成部門を独立させている場合も多い。
が、中小規模の国にとっては、数少ない船舶を効率的に運用する為、1つの組織で賄っている場合が多い。
が、周辺諸国とのバランスなどにより、必ずしも海軍と言う戦力にはこだわっていない様だ。
かつての香港は、イギリス統治と言う事もあり、香港海洋警察を持っていた。
アイルランドの場合は、Naval Service と言い、Navyとは言っていないのだが、一応海軍と言って差し支えないであろう。
また、ボリビアなどの様に、現在海を失っているが、再び領土を回復した時に備え、海軍の組織を細々ながら維持しているところもある。
通常、陸軍はARMY、海軍はNAVYなのだが、大陸国においては、海軍が陸軍の組織内に置かれている国もある。
現在、世界の海に展開しているアメリカ海軍でさえ、建国以来継続した海軍を持っているわけではなく、独立後の平和となった一時期、海軍は解散し、その間、海洋の守りについていたのは、沿岸警備隊である。


参考
港の業務(保安編)
ジェーン年鑑


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新規作成日:2003年4月6日/最終更新日:2003年4月6日