陸海空軍その他の戦力

陸海空軍その他の戦力

「陸海空軍その他の戦力」という表現は、日本国憲法第9条に記載された文言である。
陸海空軍とは、陸軍、海軍、空軍をさし、その他の戦力とは、その組織形態をとわず、あらゆる戦力を漏らさないための記載である。
が、ここでは条文解釈を目的とはしていない。

陸軍、海軍、空軍は、短絡的には、地上軍、海上戦力、航空戦力を意味する。
が、本来は、組織を指す。
近代では、統合軍として、統一組織化することが多くなっているが、やはりその戦闘対象毎による分化も必要不可欠なものでもある。

さて、実体としての各組織の分担はどうなのであろうか。
戦力とは、自己完結を基本とする。
されば、単一の組織で全てをこなせることが望ましい。

陸軍=地上軍ではあるが、渡河作戦では舟艇を必要とするし、渡洋作戦には、船舶、航空機を必要とする。
また、地上戦闘としても、近代戦では航空支援は欠かせない。
ここで、船舶を海軍、航空機一切を空軍に預けるのもひとつだが、よほど緊密な統合組織となっていない限り、作戦時の共同は困難だ。
されば自ずと独自の装備を必要としてくる。
旧帝国陸軍においては、輸送船はおろか、小型の護衛艦艇、潜水艦、空母をも保有した。

また、旧帝国海軍においても、海軍陸戦隊をもち、大規模な航空部隊を持っていた。
旧帝国陸海軍には、空軍という組織が独立していなかったため、空軍力が陸海軍に含まれていた。
アメリカ軍の場合は、太平洋戦争中に、陸軍航空部隊が独立し、空軍となった。
それでも、陸軍航空部隊は存続し、輸送船や護衛艦艇をも陸軍は持っていた。

陸海空の装備をそれぞれで重複して持つことは、一説には協調関係のなさを言われる。
しかし、全てが全て別組織が持つことは、調整のわずらわしさもあるのだ。
また、太平洋戦争の場合、帝国陸海軍は、それぞれの分担範囲で手一杯であり、陸海軍それぞれが、互いに支援しうるほどの余力はなかったとも言える。
されば、独自に確保するという悪循環も致し方ない要素ではあった。

自衛隊の場合、協調関係にあるアメリカ軍に準じた組織分担となっているが、敵前攻撃を目的とした海兵隊を別にして、陸海空軍に対応して、陸海空自衛隊がある。
が、その行動範囲がアメリカに対して規模限定となる以上、食い違いも出てくる。
例えば、防空ミサイル部隊である。
米軍の場合、迎撃航空部隊は空軍であるが、地上の最終防空は、陸軍の対空ミサイル部隊である。
自衛隊の場合、航空自衛隊自体が迎撃航空部隊であり、防空の責任を一括する必要もある。
そのため、米陸軍の高射ミサイル部隊のうち、遠距離防空ミサイルを航空自衛隊が、近距離防空ミサイルを陸上自衛隊が、それぞれ分担することとなった。

統合軍を謳うカナダの場合、対潜哨戒機は空軍が持っている。

イギリス海軍の場合、第二次世界大戦中、空母は海軍、艦載機は空軍の指揮下にあり、統一作戦にしばし支障があったとも伝えられている。


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新規作成日:2004年8月13日/最終更新日:2004年8月13日