艦船ウォッチング指南
艦船をウォッチングする。
艦船が好きな人は、色々な趣があるが、やはり現物を見たい物。
ぼんやりながめるならいざ知らず、特定の船を見たかったりする場合、その船の行動予定は重要な情報だ。
が、船の場合、通勤電車の時刻ほど正確な物ではない上、気象条件など諸般の事情でしばし変更もされる。
適宜、関係部署に確認が取れればよいが、四六時中確認しつづけるわけにも行かず、第一関係部署にも迷惑だ。
また、行動予定が非公開情報とされている場合も多く、悩むところである。
しかし、船と言うものは、突然港に沸いたり消えたりする物でもない。
よく観察していると、いくつかの要素から、いろいろな推測も可能である。
これを「長年の経験と感」とも言うが、それほどたいそうな事でもあるまい。
出港の気配、入港の気配 は、それぞれ以下の要素がある。
これらの条件のうちいくつかから、出港、入港の動向が推測できる。
尚、当然のことながら、気配の時間的スパンには、近日中、当日、一時間以内、など各種レベルがある。
出港の気配
- マストにP旗が揚がっている。
P旗は出港の信号旗であるので、当日中の出港を意味する。
- 煙突から黒い煙が出た。
蒸気タービンの船の場合は何時間も前からボイラーを焚くが、ディーゼルやガスタービンの場合、30分から1時間前あたりから始動する。最新のガスタービンと言えども、始動時には多少なりとも黒煙がまう。
また、よく見ると、煙突から煙も出ているはずである。
- 甲板上に乗員がいる。
出港作業のため、乗員が配置される。
- レーダーが回っている。
航行する場合に必要なレーダーは、点検を含めて早めに動かし始める。
護衛艦は対空レーダーも回すが、本来航海に必要な物は、航海レーダー(対水上レーダー)である。
尚、数日間碇泊していた艦艇は、出港前日に試験的に動かす場合もある。
- タグボートが寄って来ている。
出港前30分前後には、待機する。
しかし、タグ無しで離岸する船もあるから注意。
- 係船ロープを外す為、岸壁に作業員が出ている。
岸壁に舫っているロープは、誰かが外さなければ、船は繋がれたままであり、引き千切って出港する事はない。
- 航路信号が「O」か「F」になった。
港によって規程が色々有るが、大型船や、馴れない外来船の場合、航路信号に従う。
航路は一方通行なので、「I」の状態では、すれ違う事になる為、「O」か「F」になるまで出港して行く事はない。
特に大型船の場合は、「O」になるまで出港して行く事はない。
- 舷梯等が片付けられている。
- 音楽隊が来ている。
出港見送りで、音楽隊が演奏する場合があり、特に、外国艦艇の場合は多い。
出港しない気配
- 前述の出港の気配が全くない場合
- 航路信号が「I」である。
少なくとも次に「O」になるまでの間の入港はない。
- 艦艇の場合で、指揮官不在を示す旗が揚がっている。
指揮官不在のまま出港と言う事は基本的にない。
- 乗員が私服で遊びに行った。
艦艇の場合、訪問先での自由行動は、往復で約2時間、現地で約1時間、出港前の早めの集合で1時間前としても、4時間以上、停泊していることを意味する。
ただし、クルーの交代で、空路帰る場合もある。
入港の気配
- 岸壁にN旗が立っている。
このN旗の位地に、船橋をあわせて着岸する。
- 舫い取りの為に作業員が集まっている。
- 岸壁の水道管から水が出ている。
点検中の場合もあるが、一般に近傍の船舶への給水の為、水道管に溜まっている水を流し出しているもの。
- 航路信号が「I」か「F」になった。
港によって規程が色々有るが、大型船や、馴れない外来船の場合、航路信号に従う。
航路は一方通行なので、「O」の状態では、すれ違う事になる為、「I」か「F」になるまで入港してくる事はない。
特に大型船の場合は、「I」になるまで入港してくる事はない。
- ボーディングブリッジの用意が有る。
- 入港歓迎の音楽隊などが待機している。
- 警備陣が待機している。
紛争当事国など、警備の強化が必要な艦船が寄港する場合、岸壁に機動隊などが展開している。
入港しない気配
- 前述の入港の気配が全くない場合
- 航路信号が「O」である。
少なくとも次に「I」か「F」になるまでの間の出港はない。
- 予定バースに船がいる場合
艦艇の場合は、2隻並べる事もあるが、一般に、1隻づつ着岸する。
従って、先客がいる場合は、入港予定や、着岸バースが変更となっている事も考えられる。
尚、2隻並べる場合は、舷側に防舷材を当てる。
- 待機要員が引き揚げてしまった。
入港時刻に変更が有ったりで、しばらくの時間入港しない場合など、入港歓迎の音楽隊がそのまま岸壁で待機する意味が無いので、一旦引き揚げることが有る。
入港時刻、出港時刻
旅客機の場合、スポットから動き始めた時刻が出発、スポットに停止した時刻が到着となっている。
船舶の場合、一般に、着岸し、舫いをかけた時刻が入港時刻となります。
また、舫いを外した時刻が出港時刻となります。
自衛艦の場合、離岸して十分岸壁から離れるまで、ロープは最後の1本を舫ったままにしており、これを外す時が「出港用意」の号令のかかる時である。
埠頭管理事務所の予定表などは、バースの確保スケジュールから設定されているので、予約時間帯となっている。
入港の一連の動作としては、港外でパイロットをのせ(パイロット乗船)、進発(沖スタート)、港口を入り、着岸、舫いを取って、ボーディングブリッジを付けて完了となります。
電車なら、見えてからホームに付くまで1分もかかりませんが、船の場合はスケールが異なります。
大きな港湾の場合、航路が一方通行で設定され、時間帯により、交互通行となったりします。
東京港の場合、概ね奇数時間帯が入港信号、偶数時間帯が出港信号となっている場合が多いようです。
従って、10時入港と言う場合、奇数時間帯である9時の入港信号で沖スタート、30分前にはほぼ岸壁まで来ている。
船舶の予定変更の要素
- 天候
台風接近や、時化などにより、予定を早めたり、あるいは遅らせたりする。
晴れていても波が高かったりと言う事もある。
また、港の天候のみならず、航路の天気状況も影響する。
帆船は風がなければ動けない。
- 戦争
地域紛争などにより、航行する海域に危険が伴う場合、航路変更される。
世界一周の予定が、迂回したり途中で引き返したりする。
- 病気
強力な伝染病などにより、寄港する地域に危険が伴う場合、航路変更される。
世界一周の予定が、迂回したり途中で引き返したりする。
2003春のSARS(肺炎)など。
- 国際関係
親善訪問艦艇の場合、両国の関係がギクシャクすると取り止めとなってしまう。
- 乗員乗客の遅れ
船の出港時間に遅刻者が出たりすると、待ったりする事もある。
- 港湾の状況
マストが高くて橋がくぐれない、水深が浅くて航路が通れない、岸壁につけられない、などの情報は、あらかじめ船舶と港湾関係者の間で調整の上、岸壁が決定されている物だが、何らかの手違いで、直前に判明する事がある。この場合、急遽予定バースが変更される。
航行針路の予測
- 先導のタグボート
タグボートが先導している場合、基本的に本船は追従する事になる。
- 海上衝突予防法による針路
船舶は右側通行、交差する場合は右側優先。
船舶の衝突防止の為の航行規則があり、これに準じて各船は運航されるので、船の見合い関係を考えれば、針路の想定も可能となる。
着岸時の船の向きの予想
- 伴走のタグボート
タグボートが本船の岸壁側について来ている場合、反転させて着岸する事を意味する。
この場合、ロープを取っているタグは引き、ロープを取っていないタグは押す事になる。
タグボートが本船の岸壁と反対側について来ている場合、そのまま着岸する事を意味する。
- 投錨用錨の位置
入港に際して、錨を落とす場合があるが、当然、岸壁側には落とさない。錨を舷側から垂らしている側と反対舷を岸壁につけるようになる。
- ボーディングブリッジの位地
舷門の位地に見合う場所に設定される。
- 岸壁のN旗の位地
このN旗の位地を目標に、船橋の位地をあわせて着岸するので、バース長さに対しての相対関係から、船の着岸の向きも想定できる。
船の行き先信号
マストに掲げられた信号旗により、航路や着岸バースなどを示している事もある。
第二代表旗に続いてバース記号を表示する。
船の定位置
海上自衛隊や海上保安庁の船の場合、通常係留される場所は決まっている。
配属先による定係港の、どの桟橋に係留されているかを覚えておけば、新たな予想もできる。
いつもいる場所が空いているだけなら、単なる出港中かもしれない。
が、定位置とは別の場所に泊まっている。
とすると、岸壁が工事中など、使用できない場合のほか、他の船舶の利用の為に、空けているという事が考えられる。
情報収集
各港を管理している港湾局などでは、寄港予定をプリントして配付したり、インターネットで公開したりしている。
が、予定はしばし変更される。
最新の情報を確保したいところだが、関係先への照会は、必要最小限にとどめよう。関係先の本来の業務に支障が出ないように。
東京海上交通センター
http://tokyowan.kaiho.mlit.go.jp/
大型船入航予定情報に、浦賀水道航路の通航予定が掲載される。
ここでは総トン数1万トン以上の船舶を大型船としている。
浦賀水道航路に対する入航予定であり、浦賀水道航路の南口入航予定船(北航船)が東京湾への入港、浦賀水道航路の北口入航予定船(南航船)が東京湾からの出港を示す。
従って、北航船の掲載で、6:00とあれば、浦賀水道航路の航行時間が約1時間で、横浜ベイブリッジなら7:30、東京港レインボーブリッジなら8:00頃の通過となる。
情報記録
港のウォッチングの際、記録を取ろう。
各船の定位置を知っていれば、動きも見えてくる。
新規作成日:2005年5月22日/最終更新日:2006年9月6日