本の価格の設定事情

最近はインターネットなどの情報流通に押されて、本の売れ行きが鈍っているようだ。
しかし、じっくり色々なことを調べるには、やはり本ではなかろうか。
さて、本の値段はどのような要素があるのだろうか。

出版社の原価計算は、費用と部数による損益分岐により設定されている。

原価要素
編集制作費 編集作業の費用
原稿料
写真使用料
編集レイアウト
校正、監修
製版
印刷
製本
流通経費
保管経費 一気に売り切れることは希なので、倉庫の費用もかかる。

このうち、
出版部数にかかわらず、編集制作費〜製版 費用は掛るから、部数が多いほど、単価は下がるし、内容も資金的に充実する。
製版〜印刷 費用は、モノクロに比べて、カラーは約4倍掛る。
印刷〜保管 費用は、部数に正比例する。

また、各要素の単価も、ピンからキリまであり、不景気な今日、実際問題、支払遅延や、\0で処理しているところも少なくない。

部数設定
レコード業界のミリオンセラーや、ハリーポッターのような爆発的売れ行きがあれば言うことはなかろう。
読者層の想定は大きな問題だ。
例えば、航空祭などの動員客は20万人とも言われるが、その割本を買う人は多くないらしい。
対して艦船ファンは1桁も2桁も少なく、空母の公開でさえも2万程度なのだが、資料を求める人の数は、比較的多いらしい。
全国に書店は1万くらいあるらしい。と言うことは、ある程度の部数を発行しなければ、全ての書店の店頭にならばない。
現物を見てから買うと言う向きには、店先にないものは、購入対象となり得ない。
もちろん、津々浦々の店先に並んでも、全てが売れるわけでもないのだが。
と言って、部数を限定すると、比例する以上に、指数関数的に売上も減る傾向があるらしい。ジリ貧とも言う。
また、取り次ぎの問題もある。取り次ぎ、すなわち、本の問屋である。本の場合、取り次ぎが流通を仕切っているのだが、この業界は、著作と出版を奨励する意味で、書店に売り渡すのではなく、貸し渡して、売れたら入金、売れなければ返品と言う方式を取っている。これにより、書店では、リスクなくいろんな本を店先に並べることが出来る。
が、実際問題「ホントニ売れそうもない本は、流通コストをかけるだけ無駄」と言う判断も有り、実際、書店に回っても、店先におかずに、戻してしまうことも有るようだ。
その売れそうな感覚を醸し出すのが、高積みした本と言うことになる。

また、年齢層による購買力も判断要素だ。
大人なら数千円でも支払能力はあるのだが、子供のおこずかいでは、\1000を超えるとキビシイだろうし。

内容設定
原価設定、部数、費用見積りなどとともに、どの順で設定するかは別だが。
読者対象をどこに置くかも問題だ。
限定された読者対象に、濃いものをおくるか。


競合他誌
飛行機雑誌は、「航空情報」「航空ファン」「エアワールド」「Jwings」等がある。
かつては軒並み、類似の雑誌だったらしいのだが、現在はそれぞれに特色を持っているようだ。
対する艦船雑誌は「世界の艦船」「Jships」「船の旅」「クルーズ」くらいだろうか。
「船の旅」「クルーズ」は、船旅雑誌に特化している。
「世界の艦船」と「Jships」は、掲載対象が共通しているが、読者層は大いに異なろう。
かつては「世界の艦船」に「シーパワー」が挑んだが、付加価値に求めすぎた為か、廃刊となっている。
定期誌の他に、特集もの、写真集などは、最近乱立気味である。
同時期に、同じ内容が出ると、読者としては困ってしまう。
資金が潤沢であれば買い揃えるであろうが、いずれかの選択に迫られる。
内容の充実度、価格の安さ、のバランスだろう。


広告収入
広告が掲載される場合、広告収入がある。
部数によっても価格には大きな開きがある。
この分、出版社は潤うと共に、出版経費への充当もされる。
新聞の価格は、広告収入によりまかなわれていると言っても過言ではない。
テレビ放送などは、民放の場合、全てがスポンサーによりまかなわれているが、NHKの場合は受信料によりまかなわれている。ケーブルテレビ、衛星放送などは契約料でまかなわれている。
もちろん、広告が多すぎるとうんざりすることは言うまでもない。


設定価格
基本的に、原価+利潤であるが、出来上がった本の付加価値により、設定価格を高くすることもある。要は、この内容なら「売れる」と言う場合である。
また、部数を掃く為に、安めに設定する場合もある。


最近の出版では、出版社と発行社が別の場合が多い。
これは、取り次ぎが、実績のない出版社を受付けない事情がある。
正確には分からないが、登録業者の枠みたいな扱いらしい。
その為、名義貸し/口座貸しのような扱いもあるようだ。
ここで、まるっきり貸し渡す場合もあれば、出版元として責任を持とうとする場合とがある。


読者の意見
アンケート葉書の回収率は1%前後のようだ。
この結果をどのように判断するかは、編集部次第だが、より良い本を求めるなら、積極的に意見を伝えるべきであろう。
編集部は、あくまで、読者のニーズを想定し、試行錯誤を繰り返しているのである。
この場合注意すべきは、単なる文句ではなく、建設的な内容であるべきだ。
「高い割に内容がない」なら、「どうして買ったんですか」と言うことで終ってしまう。
ポイントを明確にすれば、質の悪い筆者は改善を迫られ、あるいは駆逐される。
結果、より良い本が読者に届くのである。
「もっと高くても良いから、多くの内容を」と言う意見もあれば、「ページ数を減らしてもう少し安く」と言う、相反する意見も実在する。



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新規作成日:2002年12月18日/最終更新日:2003年1月2日