日本の地対空誘導弾

わが国における防空は、主として航空自衛隊が担当する。
が、その成立時の支援組織、すなわちアメリカ軍との相関関係により、いくつかの問題点が存在する。
すなわち、アメリカ軍においては、陸上の本土防空組織は陸軍の担当なのである。
このため、地対空誘導弾の所管を巡って、航空自衛隊と陸上自衛隊の間で調整を必要とした。
結果、遠距離防空を航空自衛隊が、近距離防空を陸上自衛隊が担当することになり、地対空ミサイルのナイキを航空自衛隊が、ホークを陸上自衛隊が継承した。


ナイキ・アジャックス

Nike Ajax
米軍より継承した、航空自衛隊の地対空誘導弾。
アメリカで1953年から実戦配備された最初の地対空ミサイルで、SAGEのネットワークに組み込んだ運用が行えた。レーダー指令 射程約40km。
陸上自衛隊のホークに対して、長射程型である。
1962.9.5横浜港ノースピア米軍埠頭から陸揚げされ供与された92発は、習志野(千葉)、土浦(茨城)、入間(埼玉)、武山(神奈川)の各基地(陸上自衛隊駐屯地)に配備されたのが始まりである。
アメリカでは、本土防空にあたる地対空ミサイルは、陸軍が管理しているため、当初陸上自衛隊に所属したが、自衛隊においては、主たる防空を航空自衛隊が担当するため、1964.4からは装備はそのまま航空自衛隊に移管さた。
第1高射群(首都圏/入間)、第2高射群(北九州/春日)に配備され、その後ナイキJに換装された。


ナイキ・ハーキュリース

Nike Hercules
1953年から米国ウエスタン・エレクトリック・カンパニーなどで開発された高高度迎撃用地対空ミサイル。
ナイキアジャックスの後継として、アメリカで1958年から実戦配備された。
射程は約130kmで、発射後、一旦30000m程度の高度に上昇した後地上からの指令誘導で目標に向かう。
固体燃料の二段式で、ブースターは4基のモーターを束ねている。
米軍仕様は核弾頭の装備が可能だが、自衛隊装備分では高性能炸薬専用となっている。
陸上自衛隊のもつ地対空誘導弾ホークが低空用であるのと異なり、高空用誘導弾である。
1973.10在沖縄アメリカ軍のナイキハーキュリーズの移管を受けて第5高射群(沖縄/那覇)を編成した。
従って、航空自衛隊での導入順序は、ナイキ・Jよりも後である。


ナイキ・J

ナイキ・アジャックスの後継である、米軍のナイキ・ハーキュリースを国産化した、航空自衛隊の地対空誘導弾。
「ナイキ・ハーキュリーズ」をマクダネル・ダグラス社との技術提携で三菱重工がライセンス生産したもの。
1967から国産が開始され、1973製造終了。
1971.6に第1高射群(首都圏/入間)、1972.6に第2高射群(北九州/春日)をそれぞれナイキJに換装した。
また、1970.6に第3高射群(北海道/千歳)、1973.11に第4高射群(中京/岐阜)、1979第6高射群(東北/三沢)をナイキJで新編した。
航空自衛隊では、1995年まで運用した。

p1408036. Dcim0309/Dsc_3856.

ナイキ部隊一つの高射群の構成は、ナイキの指揮、運用をする指揮運用隊、指揮業務の補佐機関である群司令、ナイキを運用する高射隊、その整備補給をする整備補給隊から構成されている。
高射群は、3〜4高射隊を指揮下に持つ。
一つの高射隊は、150〜200人で編成され、射撃統制小隊と発射小隊に分かれる。
射撃統制小隊は、レーダーを運用して相手機の発見、捕捉、ナイキの誘導にあたる。このためのレーダーには、捜索、日標捕捉、ミサイル追跡、目標測距の四種類がある。
発射小隊は、一隊に九つの発射機が配置され、通常一発射機に二基のナイキ弾体が準備されている。

日本国内には射場が無いため、実弾の発射訓練とテストは、アメリカ・ニューメキシコ州のマックグレゴアー射場で行われる。

尚、ナイキの発射機は地上据え置き型であるが、分解して移動が可能であり、また、レーダーや統制装置も、トレーラーによる移動が可能で、ペトリオットほどの機動性は持たないまでも、基地に束縛されないシステムではある。
また、アジャックスとハーキュリースの発射機は、直接の互換性はないものの、若干の改造によって使用が可能である。


ペトリオット

ナイキ・Jの後継として導入された、航空自衛隊の地対空誘導弾。
パトリオットとも記載することがある。


ECS 射撃管制装置
p2235023.

AMG アンテナマストグループ
p2235027. Dsc_5828.

RS レーダー装置
p2235024.

LS 発射機
p2235026. p2299031. Dsc_4575.

EPP 電源車
p2235025. Dcim0644/DSC_8978.

ペトリオット PAC3

弾道ミサイル防衛の一環として2007.4導入された、航空自衛隊の地対空誘導弾。

Dcim4398/DSC_1536. Dcim4398/DSC_1546.
Dcim1321/DSC_0401. Dcim1312/DSC_9603.

03式地対空誘導弾

改良ホークの後継として開発された、中距離地対空誘導弾
陸上自衛隊の師団等及び重要地域の防空任務を担う。
プログラム、間欠指令、アクティブ電波ホーミングを複合した誘導方式のミサイル。
通称、中SAM
陸上自衛隊で装備する。
「これは当たります」という技術研究本部の方には、当たりすぎて笑いが止まらない笑みが浮かんでいた。
射撃指揮装置、レーダ装置信号処理車(中継器)、射撃用レーダー装置、発射機のセットで運用される。


射撃統制装置
Dcim3512/DSC_3910. Dcim3513/DSC_3914.

射撃用レーダー装置
Dcim3512/DSC_3866. Dcim3505/DSC_4896. Dcim3507/DSC_5109.

レーダ装置信号処理車
Dcim3512/DSC_3892. Dcim3512/DSC_3896.

発射装置
Dcim3512/DSC_3895. Dcim3512/DSC_3900. Dcim3511/DSC_0487. Dcim3509/DSC_5360.

運搬装填装置車
Dcim3512/DSC_3898. Dcim3512/DSC_3903. Dcim3513/DSC_3920.

ホーク

米軍より継承した、陸上自衛隊の地対空誘導弾。
通称、中SAMともいわれる。


改良ホーク

陸上自衛隊の地対空誘導弾。
ホークの性能改善型。
通称、中SAMともいわれる。

発射機
Dcim0351/Dsc_9085. Dcim0352/Dsc_9266.

改良ホーク中隊指揮装置BCP
Dcim0354/Dsc_9472. Dcim0865/DSC_0910. Dcim0865/DSC_0911.

測距レーダー
R0020004.

CW捕捉レーダー
Dcim0354/Dsc_9499. Dcim0354/Dsc_9500.

パルス捕捉レーダー
Dcim0355/Dsc_9655. Dcim0351/Dsc_9109.

高出力イルミネーターレーダー
Dcim0865/DSC_0915. Dcim0865/DSC_0917.

81式地対空誘導弾

拠点、部隊の、近接防空用として開発された、短距離地対空誘導弾
通称、短SAM
陸海空各自衛隊で装備している。


発射機
p2310016. p2310022. Dcim0352/Dsc_9253. Dcim0354/Dsc_9455. Dcim0602/DSC_3034. Dsc_2765.

射統装置
p2310017. p2310019. Dcim0352/Dsc_9243.

指示機
p2310018. p2310020. p2310021.

81式地対空誘導弾改

拠点、部隊の、近接防空用として開発された、81式地対空誘導弾を性能向上した、短距離地対空誘導弾
通称、短SAM
陸海空各自衛隊で装備している。


発射機
Dcim0864/DSC_0787. Dcim0866/DSC_0952.

射統装置
Dcim0865/DSC_0895. Dcim0866/DSC_0994.

指示機
Dcim0866/DSC_0973. Dcim0866/DSC_0970.

11式地対空誘導弾

拠点、部隊の、近接防空用として開発された、81式地対空誘導弾の後継、短距離地対空誘導弾
通称、短SAM

Dcim12629/DSC_0896.

93式地対空誘導弾

部隊の、近接防空用として開発された、近距離地対空誘導弾
91式携帯地対空誘導弾の車載版。
通称、近SAM
陸上自衛隊で装備している。

Dcim0352/Dsc_9232. Dcim0354/Dsc_9515. Dcim0330/Dsc_6358.

スティンガー

携帯式地対空誘導弾

p2310014. p2310015.

SAM2/91式携帯地対空誘導弾

国産の携帯式地対空誘導弾

Dsc_4389. Dcim0824/DSC_0981.

SAM2改

91式携帯地対空誘導弾の改善としてライフサイクルコストを抑制しつつ、航空機等を撃破する性能を向上させた赤外線画像誘導方式の携帯式地対空誘導弾。
目下、防衛庁技術研究本部で開発中。


参考
ミサイル
ミサイルの誘導方式
弾道ミサイル




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新規作成日:2004年10月11日/最終更新日:2016年10月24日