船の操船指揮の号令

船舶の船橋における操船指揮の号令は、発令者(船長など)の号令を、次席者が順次復唱し、伝達する。
これは、聞き違いを防ぎ、また、意思の疎通を図るためでも有る。

その号令は、日本海軍や、海上自衛隊、海上保安庁などの場合は、日本語で行われるが、商船などの場合は、英語の単語をベースにおなわれる。

なぜか?? 以下は推論である。
幕末までの水軍、海運は、もちろん日本語である。
が、幕末に、西洋文明の近代化の波により、海軍伝習として、オランダから洋式艦船の運航技術が伝わった。
が、このとき、号令は、幕府水軍や水夫の用語にあわせて行かれた。
そして日本海軍に伝わっていった。
しかし商船は・・・
同じ船舶であるから、同じ流れになるはずだが、旅客や積荷を載せて安全に走る裏づけが求められ、日本人船長では、この要件を満たさないとされた。
非文明国の猿が操船指揮する船に運命は託せないということである。
すなわち、国際航路に就航できないということである。
この対策として、外国人船長を高額で雇い入れることが行われた。
その結果、船橋での操船指揮は、英単語を基本として行われることとなった。
そしてその伝統が今に続いている。


以下に、操船指揮で用いられる主な用語を並べてみた。
尚、日本海軍や、海上自衛隊、海上保安庁などの場合は、カタカナ用語ではなく、漢字単語で号令される。
また、業界(海運、水産、海上自衛隊、海上保安庁など)や会社、地域などによっても、差異はある。


[離岸、後進、回頭、出港の一例]
レッコー: 係船ロープを外す。
スタンバイエンジン:
スラスターサイド: スラスターを右舷側にセット。
ハーフアスタンスターボード: 右舷半速後進
スターボード45度: 右舵45度
スローアヘッドポート: 左舷微速前進
ストップポート: 左舷(機関)停止
ミジップ: 舵中央
ハーフアスタンツー: 両舷半速後進
ハードスターボード: 右舵35度
ハーフアヘッドポート: 左舷半速前進
ストップスターボード: 右舷(機関)停止
ハーフアヘッツー: 両舷半速前進
スラスターセンター: スラスターを中央に戻す
ミジップ: 舵中央
フルアヘッツー: 両舷全速前進
ステディー: そのまま
298度: 針路を298度へ
翼角20度: 翼角を20度へ
スターボード5度: 右舵5度
ミジップ: 舵中央
ステディー: そのまま
2番通過: 航路の2番ブイを通過
ポート5度: 左舵5度
リングアップエンジン: 港内操船から航海中の巡航状態へ。(翼角を29度まで上げる)
ミジップ: 舵中央
堺航路クリアー: 堺航路からの出港船がないこと。


[入港、着岸の一例]
ジャイロ: 自動操縦に切り替え
305度: 針路を305度へ。
ハーバーフル: 港内最大速度
ハーフダウン: 半速前進に減速
スローダウン: 微速前進に減速
デッドスローダウン: 極微速前進に減速
ストップスターボード: 右舷(機関)停止
スターボード45度: 右舵45度
スローアスタンスターボード: 右舷微速後進
スタン左いっぱい: スタンスラスターを左全開
ヘッドウェイ5ノット: 前進速度5ノット
スラスターサイド: スラスターを右舷側にセット
ストップポート: 左舷(機関)停止
ミジップ: 舵中央
スローアスタンツー: 微速後進
ストップエンジン: 機関停止*1
両舷プラス3: 翼角を前進3度へ
スローアヘッツー: 両舷微速前進
両舷マイナス3: 翼角を後進3度へ
下り5メートル: 後方へ5メートル移動
前後位置: 船体を岸壁の所定位置に着岸したこと。
上り1メートル: 前方へ5メートル移動
メイクファースト終了: 係船完了


*1: 可変ピッチプロペラの場合、翼角0として推力0を示す場合もあり、この場合、機関停止しない。


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新規作成日:2005年1月24日/最終更新日:2005年1月24日