ソ連軍侵攻のシミュレーション

ソ連邦が崩壊して、10年になる。
かつての東側陣営の雄、ソビエト社会主義共和国連邦が、分離独立し、冷戦崩壊となった途端、経済危機や、張子の虎の如く言われてる。
果たして、軍隊は、1日にして弱体化する物だろうか。
これは、単に、貧弱な分析による、思い付きの発言に他ならない。

ソ連軍の主たる構図は、
・戦略核兵器により、アメリカ、イギリスなどと対峙し、
・ソ連軍は、ワルシャワ条約機構軍を頼みとして、NATOと対峙する。
・太平洋と大西洋では、潜水艦隊が、アメリカの空母を狙い、アメリカの対潜部隊を、ソ連の対艦ミサイルが狙う
という物だ。

そんな中、極東地域では、ソ連軍の、日本侵攻も噂されていた。
真相は明らかではないが、ここに、少しシミュレーションしてみたいと思う。

シミュレーション
仮のテーマとして、ソ連軍、北海道侵攻をテーマにしてみたい。
これは、当時の脅威論として最たるもので、その実現性を議論したい為である。

ソ連軍は、不凍港確保、領土拡張、太平洋への突破口確保と言う意味で、日本侵攻を企図する。
しかしながら、アメリカとの全面対決は意図せず、アメリカの反撃前に、陣地確保し、国境線を確定する事により、終結する事を企図する。
もちろん、本テーマは仮想であり、実際のソ連の戦略を表現していない。
あくまで、冷戦時代の虚像とされる、東側陣営に対する西側の推定脅威が前提となっている。−結論から言って、近代国家は、もはや侵略と言う政策は持てない時代である−

前提。
・ソ連軍は、極東地域への増援は期待しない。
これは、欧州地域から、ソ連軍を移動した場合、NATO軍との軍事バランスを危うくするばかりではなく、ワルシャワ条約機構軍の各国に、反乱的要素が生れる為、兵力移動に慎重にならざるを得ない。
すなわち、我が国としては、欧州地域での緊張状態が維持できるように、西側各国との連携を深める事が、重要な外交テーマであると言える。
これは、海軍に付いても同様である。
ただ、かつて、ロシアバルチック艦隊増援の事例もあるように、軍事バランスが維持できる限り、部隊の移動が可能である事を示している。
当時は、ロシアとフランスが協調し、イギリスと対峙する構図で、ロシアバルチック艦隊の極東派遣に際しては、フランスとの同盟関係が重要であった。
・時代は、ソ連崩壊の時点としたい。
・侵攻に際して、当然の事ながら、日本への宣戦布告があったり、奇襲であったりするが、そのへんは省略する。
・法整備が整っていない自衛隊が、戦力として実力発揮しずらい事情も無視する。
・また、国家総動員法など、緊急立法云々も省略する。

さて、実際の侵攻に際して、当然の言ながら、相手陣地への一斉攻撃が伴う。
空軍力により、レーダーサイト、防空陣地(ミサイルサイト)、基地、航空基地、駐屯地など、多岐に渡る。
ここで、拠点は250を超えるのだが、侵攻地点が北海道とした場合、まずは、北海道を影響範囲とするレーダーサイト、基地、防空陣地(ミサイルサイト)が対象になろう。
極東ソ連空軍が、全力を投入して、これに当たり、主として航空自衛隊が、防衛に当たる。
航空自衛隊もよく防御するが、100%の防空と言う事は不可能で、かつまた、同時多数の集中攻撃に対しては、如何ともし難い物があろう。
この辺りの、処理に、1両日を要する。

さて、如何に、相手に打撃を与えたとしても、最後に地上部隊がかの地に存在しない限り、支配地域とする事は出来ない。
その意味で、ソ連軍上陸は、不可欠な課題である。

ウラジオストクや、ペトロパフロフスクに終結した、輸送船団が、北海道に進撃する。
事前集結は、当然アメリカの監視活動により察知されるであろうし、また、察知されない様に秘匿する為には、大規模な動きは押さえたい所だ。
ここで重大な問題が有る。
単に、兵員を運搬するだけであれば、輸送能力だけで良い。
ただ、その場合は、相手からの反撃がない場合であり、完全に制圧した地域への進駐と言う局面以外ではありえない。
その意味では、空軍力による、十分な制圧が不可欠であるが、必要以上に日数を掛けると、アメリカ軍の介入に接する。それ以前に制圧していなければならないから、多少の犠牲はあっても、敵前上陸を敢行しなければならない。

ここで必要となるのが、揚陸艦艇である。
当時のソ連海軍において、揚陸艦は、約90隻、192000トン。
海上自衛隊の6隻、約10000トンの輸送艦で、陸自1個師団の半数の輸送能力しかないから、どう見ても10万人の輸送能力しかないのである。しかも、それが海軍の全力であるから、極東地域は、4万人が限度であろう。
また、陸自の場合は、部隊の移動だけが、輸送艦定数の計算対象で、その後の補給は別である。
しかしながら、敵地に侵攻する部隊は、補給線の確保は、必須課題である。
そして、敵前上陸に際しては、激しい抵抗線がある。
ミサイル艇や、地対艦ミサイル、空対艦ミサイルによる、反撃により、2割程度の犠牲は覚悟せねばなるまい。
また、ソ連軍には、空挺師団があり、戦車をも空挺できる事は含む必要が有ろう。
一部でいわれた、カーフェリー揚陸艦論であるが、カーフェリーは、甲板強度を確保してあれば、戦車などの重量物の運搬は可能である。しかしながら、敵前揚陸は、本船から直接揚陸させる事が必要で、一般船舶のような船首では、上陸地点への進出は「座礁」であり、とても、貨物を戦力投入しうる物ではない。ただ、既に接岸揚陸中の艦艇に、ポンツーンなどを介して接舷するのであれば、不可能ではない。但し、この作戦は、橋頭堡確保以降の後詰めであり、交戦中にその様な事をしていれば、直ちに損害のみ発生するであろう。

さて、このようにして、上陸を達成しうる部隊は、およそ5万人。
対する陸自は、北海道、北部方面隊と4個師団をあわせて、4万人。
また、有事には、本土から1個師団が北方機動するので、更に増強が可能である。(但し、この場合は、十分な準備期間が必要で、約2週間前に、察知している事が必要であろう)

地上軍の攻撃には、「攻者3倍の法側」と言う物がある。
これは、2対1で、完全相殺し、残る1で占領維持する物である。
5万の攻撃部隊と、4万の守備隊。
この辺でお分かり頂けると思うが、国土の損害や、犠牲を別にしても、攻撃に踏み切るだけの兵力投入が、ソ連軍には出来ないのである。

と言う図式から、北海道侵攻の脅威は、幻に過ぎなかったのである。
もちろん、これには、記載したような、条件が伴うわけで、侵攻を意図させない程度の、抑止効果は、外交や防衛など、さまざまな分野で、確保しなければならない事は、言うまでもない事である。

また、ソ連軍側の政治的判断がある要素として、例えば、在日米軍に対する、先制制圧を行うかどうか。
制圧できた場合、当面の反撃の心配がなくなるのだが、その攻撃、すなわちアメリカへの攻撃と解釈されかねない。
もし、在日米軍を無傷にした場合、戦力として脅威だが、日米安保を額面通り発動してまで、ソ連と事を構えるかと言う判断を、アメリカが迫られる格好となるのである。
そしてまた、アメリカの参戦は、しいては、米ソ両国の、戦略核戦争にまで及びかねない要素もあるのである。

このように、近代戦争では、直接の衝突以外にも、多々政治的要素が潜在する。
国を守ると言う事は、外交を含めた、高度な政治的判断を必要とする物なのである。

また、侵攻が成立しなければ、攻撃もないかと言うと、とんでもない。
迎撃手段を持たない兵器の攻撃には、損害のみ発生する。
そして、その損害を対価に、脅威は存在するのである。

日本の侵攻能力


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新規作成日:2001年5月18日/最終更新日:2001年5月18日