貨幣価値の比較

経済が疲弊、混乱した国の取材において、必ずといっていいほど「月収数千円程度の貧しい暮らし」という表現がなされる。

例えば、1992当時のロシアにおいて、平均的月収は日本円換算で\3000〜\5000であった。
日本人の月収は、\200000〜\700000程度であるから、1/100程度である。
その程度では、日本では一日も暮らせない。

しかし、よく考えてもらいたい。
ロシアでの月収をもって、日本で暮らすなら、生活できないのである。
ロシアでの月収をもって、ロシアで暮らすなら、どうなのであろうか。

私がウラジオストクを訪れた頃、現地の人々の月収は、約3000P(ルーブル)だった。日本円に換算して、5000円前後だった。
当時のウラジオストクでは、路面電車が1P(ルーブル)で乗れていた。すなわち、月収で3000回も乗れるのである。日本では、月収で、都市交通に何度乗れるであろうか。
人それぞれの所得や、地域差による料金体系も有るだろうが、とても3000回は乗れないだろう。すなわち、当時の日本の方が、生活経済としては貧しかったのである。

報道において、現地通過で表現しても、その価値がわかりにくいから、日本円に換算するという。
しかし、その先、日本の経済体制にまで当てはめて、日本で暮らすとひどい目にあうような感覚を与えるのは大きな間違いだ。
少なくとも、現地で通常の生活をするならいくらかかるのか、それに対して貧しいのかどうかを言わなければなるまい。


同様に、江戸時代以前の貨幣価値の比較として、米一石が一両ということから、10万円と換算する。
しかし、今の時代、10万円くらい、誰でも持つことが出来る。
非合法とはいえ、女子高生でも一晩でも稼げる金額だ。
が、当時、一両小判を手にした事のある人の数は一握りもいない。
日本のGDPは、2004年において 3兆7,450億ドル(1人当たり 29,400ドル)なので、ざっと430兆6750億円(1人当たり 3381000円)である。
当時は、全国で3000万石程度であるから、これで按分すれば、一石は14,355,833円になる。
単純な換算が乱暴だとしても、一石が一両10万円と言う換算もおかしいだろう。
加賀百万石でさえ、1000億円にしかならないのだから。

テレピも電気もない暮らしは貧しい暮らしというだろう。
では、徳川15代の将軍家は貧しい暮らしだったのだろうか。
そんな比較はくだらないと思うことだろう。
当時は栄耀栄華を極めたことはいうまでもない。
当時の生活文化水準としてどうだったかがテーマであるべきなのだ。



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新規作成日:2004年1月9日/最終更新日:2006年2月6日