2015年を振り返る
「戦争法」反対で日本列島が揺れた年
2015年も師走に入った。歴史的猛暑の中でのノー・ウォー横浜展もつい最近のような気もする 一方、一昨年暮れの「国家機密法」反対の大闘争から切れ目なく安倍政権のファッショ的暴挙 に怒る国民運動の中にあったためか、この一年間を区切って振り返るのが難しい気さえする。 戦後70年にあたる2015年の4月29日、安倍首相は米国連邦議会上下両院合同会議で、「米 国の『リバランス』を徹頭徹尾支持することを明言する」と述べ、日本の国会にもかけら れていない「安保法制」を夏までに成立させると宣誓した。憲法九条を破壊し、自衛隊が米国の 戦争に地球の裏側まで駆けつけ、殺し殺されることを可能にする、「戦争法」(安全保障法)成立を 誓ったことで、議席数を頼みとする安倍政権の異常な憲法破壊、国会軽視、ファッショ的姿が明 らかになり、国民の安倍政権打倒のたたかいが本格化した。
▲8月18日の国会前/藤田観龍さん撮影・提供
法曹界、学者・文化人の圧倒的多数、職業、階層、地域、学園、全国津々浦々に広がった様々
な反対運動がデモや集会を繰り広げ、国会は8月から連日のように数万の国民に包囲され、
1960年の安保闘争をはるかにしのぐ国民的大運動となった。法案は9月19日未明、速記者
も「聴取不能」と記録するほどの暴力的強行採決の中で“成立”した。が、国会の外では抗議と反
対運動は静まる筈もなく、「誰の子どもも殺させない」(安保関連法に反対するママの会)、「従来
の政治の枠組みを超えたリベラル勢力の結集を」(SEALDs)など、今までにない反戦平和の
連帯が生まれた。掲げるスローガンも多様、「国民主権・立憲主義を守れ」「民意軽視の政治を
問い続けよう」「国民が政治を鍛え直す時が来た」「民主主義ってなんだ」など戦後民主主義の
根底にある主権者の思いが国民の中に広がっている。それは「戦争法反対」の一点で内閣をつく
ろうという運動に発展し、沖縄・辺野古基地建設反対、反原発運動とも結び政治を洗い直す大き
な波となっている。実感するのはこの一年間の画期的な「戦争反対・憲法守れ」の大運動が、文化、教育、芸術の 分野を含めて大きな影響を広げていることだ。マスコミ・メディアでは「政府が右ということを左と は言えない」と言って、公共放送の倫理を投げ捨てた会長の居座るNHKに対して、公然と批判の 声が世論として上がりはじめた。新聞の主張も国民の声を反映するようになり、「戦争法」では独 自に法案を調べ、政府答弁の問題点を鋭く追及した。教育の分野では18歳選挙権施行にともな う教育における国民主権、議会、行政などへの若者世代の関心の広がりがすでに見え、映画や 演劇の分野はさらに顕著で、これまで政治的な発言を控えてきた俳優や作家、芸能人がはっき りと主権者の一人として発言をし続けている。 美術の分野も同様、戦後70年を節目として進む「戦争画」を柱に美術・美術家と戦争をその「時 代空間」に取り込んで立体的に見直し、「美術界」の空白を問い直す作業が広がっている。こうし た中で、ノー・ウォー横浜展は8月11日から16日まで、県民ホールギャラリー全室を使用して 96人の出品者、出品作品199点で開かれ、入場者は1000人を超え「ノー・ウォー」「憲法九条 を守れ」を強く訴えた。
宣言した時に、次の3項目(要約)を掲げて発足した。 (1)道理のない先制攻撃・戦争はやめ、国連による平和的解決を。 (2)日本自衛隊は戦争に協力・参加してはならない。 (3)日本国民を戦争に引きずり込む有事法制、メディア規制法等に反対する。 残念なことにこのポリシーはイラク戦争の後にも掲げ続けなくてはならない現実がある。しかし、 この精神は多くの血と涙をみながら世界の共通のものになっている、と私たちはこの一年の中で 改めて確信した。 いま、世界ではテロと内戦、難民の長い列を見つめながら、「空爆ではテロはなくならない!」 「戦争は問題解決の扉を閉ざす!」「国際社会は結束して根本解決に踏み出せ!」という声が急 速に広がっており、それは日本国民の「戦争法反対」とも結びついている。 私たちは今、日本でのこの一年を振り返り「ノー・ウォー」の運動の確かな広がりに確信を持ち、 これを妨げ(日本を戦争できる国にするために憲法改悪を目論む)者たちとのたたかいをさらに広 く、深く続けなくてはならないと強く思う。「戦争法反対」「憲法九条を壊すな」「立憲国家を守れ」 を掲げて2016年を迎えよう。 (文責 藤井建男)
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