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銃口から平和は生まれぬ
『新美術新聞』平成15年3月21日付「色いろ調」より

 横浜の知友、加藤義郎から手紙を貰った。エコロジスト、いつも封筒は裏白広告、廃物利用 の手作り。動物愛護から普段はゲタ履き。捨てられた中華ナベやヤカンを河川敷に持ち出 し、ハンマーでつぶす家元、金槌流のアーティスト。痛快な人物。神奈川県内在住アーティスト に呼びかけ、米国のイラク攻撃に反対し「ノー ウォー 横浜美術家の集い」発起人のひとり、 賛同とカンパを求めてきた。あわせて「米国に協力しない、有事法制、メディア規制法反対」 を叫ぶ。異論のないところだ。

 敗戦の1945年8月28日、神奈川県、厚木飛行場に連合軍先遣隊が降りた。この日から星条旗 はためく日本占領が始まる。1956年、日本国は独立したという。40万の占領軍が去り、戦争を 放棄した日本国は東西冷戦構造のなか、米国極東戦略のカナメ、日米安全保障条約が結ばれた。 58年後の今日も横須賀、沖縄など4万3千の在日米軍が居座ったまま。核つき強力な米軍に首を 押さえられている日本国、これを独立国といえようか。冷戦は終わった。安保条約は日本国の 領土、尖閣諸島、日本人拉致事件には全く機能していない。

 政治家は有事法制、戦争立法を唱え、日本国民は「平和呆け」になったという。よくも言え たものだ。実質的、米軍占領下にあるこの日常化こそ政治家を「占領呆け」にした。78% 国民 の意思に反し米国支持を唱える二枚舌の政治家。1兆8千億円の援助を棒に振り米軍駐留拒否決 議のトルコ国会。10万米軍駐留のドイツはイラク侵攻に反対。米軍ひとり当たり年間、1500万 円近い金を払い、湾岸戦争米軍に1兆円戦費拠出の日本国。

 世界600の都市でイラク軍事攻撃反対のデモ、集会が開かれた。ローマ300万、ロンドン100万、 八割以上の市民が戦争に反対している日本国だが不気味なほど平穏。何を叫んでも無駄だとい 敗戦以来の挫折と絶望がもたらしたとしたら明るい未来は望めない。大統領ブッシュはイラク 戦後「中東アラブ世界を民主化する」という。異文明との共存こそ平和への道であるのに。テ キサス人の叫ぶ民主化とは弱肉強食、金融市場主義経済、力は正義なりのカーボーイスピリッ トである。人狼時代の再来である。

 病院も株式会社に、福祉と文化切り捨て。外電によれば新大統領のためアリゾナ州議会なと゜ は文化予算ゼロに。構造改革と称し、これを真似るのが日本国総理、小泉純一郎。イスラム 諸国に特使を送るが、これは高校生不良言葉によれば、米国のパシリ(下っ端の使い走り)で ある。

 パレスチナに出かけ難民に絵を手ほどきする上條陽子、アフガン難民の母子像を描く画家 など。アートとは世界観、イデオロギーの創造的、多様的な造形表現、異文化を認めること。 革命は銃口から生まれるというが戦争は憎しみをもたらすだけ。それでも米軍はイラク侵攻 を始めるだろう。 (安井収蔵)

[お断り] 原文は縦書き、漢数字はアラビア数字に変えました。電子画面の習慣に 従い、改行の後に一行空けました。(責・転用者、頓転館主人)

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