「さっ、好きな椅子に座って」 案内された部屋には幾つもの大きさや形の違う椅子があった。 見羽は1つに座った。 「あなた方もどうぞ。」 志摩たちも適当にすっわった。 「私はここに座って良い?」 明子は見羽の目の前の椅子を指さして聞いた。 「うん」 見羽の返事を聞いて、笑顔で座った。 「見羽ちゃん。自慢っこしない?」 「自慢?」 「ええ。こんな事をしたとか、こんなすごい人が知り合いにいるとかよ。」 「うん。分かった。」 「お姉ちゃんからやるね。」 「うん。」 明子は志摩の顔をちらっと見て、 「昔ね、今もそうかもしれないけど凄い強かったのよ。50人相手にしても1人で勝ったのよ。しかも私は無傷で相手は何人も、 病院に行ったのよ」 「凄い」 見羽は言った。 後ろにいた映児たちは、 「おい、志摩さんあれほんとかよ?」 明子の腕は細くとても強そうに見なかった。 「本当よ。何度も警察から注意受けていたわ。暴力団も1つ潰したのよ」 「見かけに寄らずすげ−」 「見羽ちゃんは?」 「見羽ね。凄く優しい人いるの。」 「どんな人?」 「見羽のこと大好きって言ってくれるの。見羽の力頼りにしてくれて、優しくって、約束守ってくれるの。」 「そう。いいわね、私もその人に会ってみたいわ。」 と言い、羨ましそうに見羽を見た。 見羽は少し不安げに、 「見羽のこと好き?」 と、聞いた。 明子は優しく微笑んで、 「ええ。大好きよ。」 見羽は嬉しそうに笑んだ。 明子は頭を撫でた。 「相変わらず、すごいわ」 志摩がはつぶやいた。 会って10分ほどというのに完全に見羽は懐ききっていた。 「今度、見羽ちゃんのためにあの本の続き書いてあげるね。」 「ほんと?」 「ええ。何か書いてほしい動物さんいる?」 「ええっと・・・・、お兄ちゃん」 「わかったわ」 と、微笑みながら答えた。 <コケコッコー!ワンワン。ニャーニャー> と、動物の鳴き声がした。 見ると、隅にある大きな時計から動物たちが行進している。 見羽は楽しそうに時計に駆け寄った。 見羽は真剣に時計を見ている。 「かわいいこね。」 明子は小声で志摩たちに話しかけた。 「分析はしないんですか?」 志摩が心配そうに聞くと、明子は笑って。 「してるじゃない。例えば椅子。」 志摩は少し驚いて周りを見た。 「なんだ?」 映児と阿部は分からないらしい。志摩はやっと理解したのか説明した。 「この部屋には大小や形の違う椅子があるでしょっ?」 「ああ」 「どれに座るかで判断するのよ。」 「へえっ」 阿部と映児は納得した。 「あと、話してみて」 「で、どういう結果が?」 「不安なのね。見羽ちゃんの心のコップにはお兄ちゃんが満たした水がいっぱいあるけど、何か変と思っているわ。満たされているはずの コップが本当はからなのかなって思っているわ。」 と言い、机の中から缶ビールを出し一気に飲んだ。 「で、あの子をどうしてほしいの?」 「あの子の心をお兄ちゃんから引き離してほしいの」 「無理ね。」 明子ははっきり言った。 「コップは満たされているのよ。彼女が水を捨てようとしなくっちゃ。で、お兄ちゃんって言うのは誰?」 「沢木晃」 「ああ、あいつ。」 と、言っていると見羽が戻ってきた。明子は優しそうな笑みを浮かべた。 「あのね、うさたんがね・・・・」 舞は時計の感想を話し出した。明子はうなずきながら聞いていた。 |