翌日、治子が舞をつれてきた。 「3時間預からせて頂きます。」 「はい。お願いします。後でお迎えに伺います。」 といい、治子は帰っていった。舞はみちへを抱いている。 「おはよう。」 志摩は戸を閉め、舞をリビングの椅子に座らせ挨拶をした。 「おはよう。」 と返した。 「誰?」 「まい」 と言っていると、ドアが開き映児も来た。 「お兄ちゃん、傘持ってきてないの?」 まいは映児を見て言った。 「ああ。良く晴れてるからな。」 「もう少ししたら大雨降るよ。」 「どうして分かるんだ?」 「みおちゃんがに日記に書いてたから。」 「日記?」 「うん。これ」 といい、背負っていたリュックから1冊の落書き帳を出した。 志摩が開くと、日付と絵が沢山描かれてあった。 「前の先生がやったらって言って、毎日夜寝る前に明日何が起こるかみようとしてみてるの。みおちゃん。最初は間違ってたけど、 今は必ず当たるの。しかも、見たい物がみれるらしいの。」 まいが説明した。志摩と映児は話にも驚いたが、確かに、今日の日付に大雨の絵がある。 「この絵、本当に、みおちゃんが書いているの?」 とっても上手かった。どれも何であるか、どこであるか。 小さい物、まで完璧に書かれていた。 「うん。みおちゃんみんなの中で1番、絵上手なの。毎日練習してたから。」 「そう・・・」 と、志摩がつぶやくように言った。 「おい、志摩さんこれ。」 映児は1枚の絵を見せた。日付はクーデターをつぶした日であった。 戦いの様子など誰にも言っていない。しかし、みおの絵は完璧に再現されていた。映児の捕まったところや、地下での攻防など。 すべて読まれていた。尚かつ、沢木の車のナンバーまで完璧だった。 「すごーい」 「ああ、だけどここ・・・」 映児は絵の隅を指さした。そこには、沢木が歩いて車の沈んだ現場から去っていく様子が書かれていた。 「やっぱり生きているのね」 「ああ」 志摩は落書き帳を閉じ、 「まいちゃんはサイコメトリーどのくらい出来るの。」 「分からない。」 「分からない?」 「うん。みおちゃん以外はやらないの」 「どうして?」 「前の先生がやめた方がいいって、このままやらなかったら力無くなるかもって、いってくれたの。」 「みおちゃん以外みんなやらないの?」 「うん」 「そう。みんなやらないように言われてるの?」 「うん」 志摩は少し考えてから、何か分かったのか。 「みおちゃんは沢山、サイコメトリーしてるのよね?」 「うん。」 「その日の診察終わった後って、みんな疲れてない?」 「うん。すごいね。お姉ちゃん。何か分からないけど、みんな疲れてるの。」 「みおちゃんも?」 まいは首を振った。 「そんなに疲れていないよ。まだ、沢山出来るくらい元気あった」 「そう。」 志摩は映児に目配せしてから、 「のど乾いてない?ブドウジュースあるけど」 「のむ」 「そう。映児君、ちょっと手伝ってくれない。」 「ああ」 2人は部屋を出た。 「何か分かったのか?」 ダイニングで、映児は小声で聞いた。 「ええ。沢木が何でみおちゃん以外の人格を残したのかが。」 「何でだ?」 「サイコメトリーやった後疲れるのよね?」 「ああ、頭ががんがんする。」 「使いすぎれば暴走するわよね」 「ああ。それがどう・・・。ああ」 映児も分かった様子であった。 「分かった?みおちゃんには力を使わせて、他の人格たちに負担を押しつけさせたんだと思うわ。」 「ひっでー!」 「しかも、今までの話からたぶん主人格は今みおと名乗っている子だと思うんがけど、だとしたら今のままじゃ治せないわ。」 「なんでだ?他の人格消してきゃ・・・」 「みおちゃんの孤独感とかが元で他の人格が出来ていると思うから、もし他の人格を消してもまた次が出てくるわ。 みおちゃんをまづ、何とか今の孤独とかから解きはなってあげないと。」 「みおは俺たちの話を聞くかな?」 映児は不安そうに言った。 志摩たちはしばらくはなした後部屋に戻ったすると、舞が編み物をしていた。 「だれ?」 志摩が聞くと、編んでいた物を机に置き 「みかともうします。昨日はいきなり来て、去っていってしまいすいませんでした。」 とても、礼儀正しい子だ。 志摩はお菓子とジュースをおいた。みかはまた編み物を始めた。 「何を編んでいるの?」 志摩がきいた。 「手袋です。そろそろ、冬が近いですから。みおちゃん、すごい寒がりなんですよ。」 と、笑顔で言った。頭の中には寒がっているみおが映っているかのようであった。 「みおちゃんに変わってくれない?」 「ちょっと、まってください。みおちゃんに聞いてみます。」 編み物を袋の中に入れ、目を閉じた。 「ええ。出てきますって、ただ・・・・」 志摩と映児は壁により掛かった。が、みかは 「どうぞ、椅子に座ってください。ただ、みおちゃんはカーテンに隠れるんでそれは許してください。」 「ええ」 と、志摩が答え、映児と椅子に座った。みかはお菓子を少しリュックに入れ、ジュースとリュックを持ってカーテンの中に隠れた。 「なに?」 怯えた声がカーテンの影からした。 みおだ。 「何が恐いんだ?全てが見えているくせに」 映児が聞いた。 相手の思っていることが分かれば恐れることなど何もない。 しかし、みおは怯えている。 恐怖をびんびん感じる。こちらにも移りそうなくらいの 「・・・こわいの」 小さく答えた。 「なにがだよ?てめーにも俺たちが何を思っているか分かるだろ。俺よりはっきりと・・・」 「恐い物は恐いんだもん。お兄ちゃん以外みんな・・・みんな・・・」 映児がまた何か言おうとしたが、志摩が制した。 「お兄ちゃんが何をしたか知ってるわよね?」 志摩が聞いた。 「・・・うん」 「彼は仲間を殺したのよ。用が済んだら・・・、だから・・・」 「みおのこと捨てないもん」 みおは声を上げた。 「みおのことだれよりも<好き>って言ってくれたもん。優しく包んでくれたもん。みおのこと・・・」 泣き出した。 分かっているもん、 どうせ捨てられちゃうて・・・・ でも・・・ 愛されているもん みおの心の悲鳴だ。 <愛されているのだ> たとえ偽りであったとしても。 <愛されたい>のだ。 一時でも、偽りでも、分かっていても、その愛を受けたいのだ。 おそらく、みおは親の愛も知るまい。真実の愛を知らない子。 偽りの愛のみに生きる子。 映児の胸はうずいた。 同じサイコメトラーとして、母に捨てられたものとして・・・ |