子供
2章



ベッドに明を寝かせた。
気持ちよさそうに眠っている。

メアに案内され7階のエレベーター近くの部屋に入った。


鵺野たちに茶を出し、彼らと向かい合うように座った。
「さて、何から聞きたいの?」
優しげに微笑んで聞いた。玉藻は遠慮無く、
「何を企んで、お膳立てして下さったんですか?」
少し皮肉混じりに聞いた。
「私がしたことなんて、このマンションを造り、あの子の魂をあの子の気で包んで外に出られるようにしてあげただけよ。
 あとは、ある子供が手に入れた情報や物を取り上げて、あなたの背中を押しただけよ。」
ニッコリと玉藻に微笑んだ。
いたずらっ子のように・・・
「ある子供?」
「ええ、年は明より下だけど妙に頭のいい子でね。」
と言いながら鵺野の方を見て、
「明と同じような話聞いたこと無い?」
と聞いた。
「はい。確か、生まれた子は人の世で化け物と言われ母に捨てられ、神や妖怪にも嫌われ殺されたという・・・」
メアは溜息混じりに
「・・・そうしてあげた方が良かったのかね・・・」
と言い気分を直して、
「その伝説は真実と違うわ。本当は殺されず、その反対殺されかけたのを私が封印したわ。この子のように不完全だけど。」
と言い横に置いてある鑑に、
「立ちぎきは、あまり趣味のいいこととは思わないけど・・・」
すると鑑から
「人の予定を知りながら、それを利用するだけするよりましだと思いますよ」
と言いながら、鑑から黒髪の少年が出てきた。
「零(れい)。その伝説の子よ。性格は明の正反対と思っていいわ。」
零はメアの隣に座った。
「でも明のことが好きなのよね」
と優しく言った。それから、零の方を向き
「苦情付きでいいからあなたのしたことを全て話して。」
零は素直に
「結界に封じられた明を悲しいだろうと一緒にいようと誘っていたら、誰かさんが明にも外に出られるようにして下さり。
 明を囲むたくさんの子たちが目障りなガキだと思い、追い出すよう説得するために何人か人を送り成功させた。けど、こんどは
 せっかく裏切ってくれそうな人を説得したり、しかも、僕が彼女からもらった物を取られ話を立ちぎきされ・・・、良いように
 僕を利用されました。」
メアは微笑んで聞いていた。

鵺野たちは聞きながら必死に話の筋を理解した。

おそらくこういう事だ。
1人で封印された明を零は誘おうとしていたが、メアにより外に出られるようにされ明は1人でなくなった。
おそらく結界をゆるめ出られるようにしてやり。さらにこのマンションを建て足場を造ったのだ。
明がたくさんの子を誘拐してきたため、彼女は1人でなくなり誘いにくくなった。
そこで、俺たちがここに来るよう仕向彼女を説得し、子供をいなくさせた。
おそらく零が、美樹の聞いた噂のしんげんだ。
そして、再び1人になった明を誘おうとしたが・・・
メアが玉藻の背中を押し、お迎えに来させた。
おおかたこういう流れであろう。

ー俺たちはこの2人、・・・いやメアの筋書き通りに動いたと言うことだ。

「分かってみると簡単なことでしょ?」
メアは微笑んでいる。
「全てはあなたの筋書き道理に何事も行われた。」
零が冷たく言うと、メアはくすくす笑いながら
「そういう事かしらね。」
メアは声を出して耐えきれないとばかり笑った。
メアをのぞく全員は、


この女は悪魔だ。

「玉藻さんと言いましたっけ、この方を創ったあのときから始まっていたんですね。」
零はまた冷たく言う。
「ちがうわ」
メアは微笑みながら否定した。
「彼には確かに明の父親の気で創られているけど、それは偶然よ。」

だから父親と勘違いしたのか・・・

「もちろん、彼が今つけてるどくろを手に入れ、今もそうなのも全て偶然」
と笑顔で言ったが、誰も信じなかった。

図られていた何もかも・・・

「ついでにここに住んでいたって言うのは本当よ。カメラを設置しに来た人たちが来る前に入って、あなた達の活躍をカメラで
 見ていたわ。いやー、大活躍だったわね。狐はやっぱり化かすのが上手いわ。」
玉藻は頭を抱え溜息をつく

こういう人じゃないか・・・。

「で、僕の行動も監視していたと・・・」
「ええ。あなたが明ちゃんからどう思っているのかの情報や物を手に入れるかひたすら待っていたのよ。思いの外遅かったわね。」

この女には罪の意識というものは・・・


「僕が本来の力を取り戻し、明から愚かな考えを消したら最初にあなたを消してあげますよ。」

愚かな考え?

零が怒り混じりに微笑んで言った言葉に首を傾げた。

「それは楽しみね。で、明ちゃんのでも、あなたのでもいいけど封印は見つかった?」
零は答えない。
「屋上のじゃないんですか?」
雪女が聞くとメアは首を振った。
「あれは明ちゃんを入れておくために創った空間よ。明ちゃんが望めばその通りになる空間よ。」
「明にはそれを与え私よりも多い力を封じなかった。私なんてほとんどの力を封じられた。与えられた空間は鑑の中」
「当たり前よ。あなたは力の使い方を知っているし、残酷、非情、疑うことしかしない。明の反対の考えだからね。
 全くどうして同じ事を経験してもこうも違うのかしら・・・」

愚かな考えとは明の優しさや疑わない事か・・・

「まっ、明はいきすぎな感じはするけれど・・・」
と言い、お茶をすすってから
「同じ時、場所は離れていたけど、2組の妖怪と人が愛し合い子をなした。同じように親や神々に愛され育ち。同じように裏切られた
 でも、1人はは裏切られたと思わず未だ信じ続け、1人はその恨みに身を焦がす。」
コップを起き
「同じ境遇なのにこうも違うのね」
と言っていると、寝室から明が瞼をこすりながら出てきた。
「うるさかったわね。ごめんね」
と、メアは優しげに言った。
明は首を振り、玉藻の側に駆け寄ってきた。
その様子を見て、舌打ちして零はまた鑑の中へ消えていった。
玉藻は明を膝に乗せた。
「言うまでもないだろうけど、玉藻その子をよろしくね」
と言った。玉藻は黙って頷いた。

計らいに乗った愚かな自分を呪いながら・・・・

メアは微笑んで、
「よかった。・・・明ちゃんに体プレゼントしてあげるわね」
と言った。

おそらく昔体と幽体を無理矢理引き離し、体は処分したのであろう。

「体?」
明が不思議そうに聞き返す。
「ええ、ちゃんと人と同じように大きくなるね」
「ふうん」
とあまり乗り気でないように返事をした。
そして玉藻の顔を見た。
玉藻はもう1つメアからの視線を感じ溜息をつき、
明を力一杯抱きしめた。普通であれば痛みを感じるのだが、陽神の術で出来た体には痛みが感じられないから、だっこしてくれていると微笑んだ。
「明いたいかい?」
玉藻が聞くと首を振った。
「抱っこしているけど、昔と違わないかい?」
玉藻が聞くと寂しそうに
「暖かくない。抱っこ感じない」
玉藻は腕を放した。
「でも、抱っこされていたよね?」
「うん」
「体があった昔は感じていたのにね?何で今は駄目なのかな?」
玉藻が首を傾げた。
「体ないから?」
「そうだね。じゃあ、体欲しくないかい?」
「うん、欲しい!」
と、満面の笑みで言った。
メアはも微笑んで明を指さした。すると、玉藻の膝、明を乗せているところに重さと暖かさをを感じた。
「明ちゃん、ちょっと歩いてみて」
と言われ明は膝を下り、トコトコと歩いて見せた。
「どこか痛いところや動きにくい所は?」
「ない。」
「そう。よかった。」
明は玉藻の膝に乗ってきた。玉藻は腕で包んでやった。
明は凄い嬉しそうな顔をし、玉藻の服を掴んで眠ってしまった。メアは微笑みながらその様子を見て、席を立った。
「じゃ、よろしくね」
と、言ったかと思うと一瞬にしてその姿が消えた。


続く




ぬ〜べ〜の間
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