都議会レポート 平成12(2000)年4月
平成12年度第一回定例会
(予算議会)号
石原知事初の予算が成立
石原知事が誕生して初めての予算議会は、銀行業等に外形標準課税を導入する条例や福祉・高齢者施策の見直し、男女平等参画基本条例、地方分権の推進など、さまざまな提案がなされました。
私たち都議会民主党14名は、知事の提案を十分に審議し、都民の立場から、それぞれの提案に賛否を示すとともに、積極的に政策提言してきました。
財政再建に向けて超緊縮予算
平成12年度一般会計において、政府が3.8%増の拡大予算を組んだのに対して、東京都予算案は、12年ぶりに6兆円を割り込む5兆9,880億円、前年度比3,100億円、4.9%の減となりました。
個々に見ても、給与関係費は1,432億円の大幅な減で3年連続の減少となったほか、投資的経費も20%減の7,260億円とピーク時よりも1兆3,000億円も低い額となっています。
「福祉と保健」も、前年度に比べ減少しましたが、構成比は過去最大の11.5%となりました。
私たちは不満な点もありますが、それでもこの財政危機を乗り越えるための第一歩として、予算案に賛成しました。
外形標準課税を可決!
私たちは、銀行業等に外形標準課税を導入する提案について、感情論に流されることなく、事前に銀行業界の方々の意見も十分聞きながら、慎重に検討してきました。
その結果、@銀行業が旺盛な事業活動で莫大な利益をあげていながら、応益課税である事業税をほとんど払っていないこと、A全国3,800余りの民間金融機関の資金量の5割、業務純益の7割を上位30行が占めていること、B過去15年間の事業税負担の平均値を税率としていることなどから、この条例案に賛成しました。
銀行業以外の業種についても検討しましたが、事業税負担の低い他業種においては売上も落ちてきており、事業活動の規模そのものが低下していました。旺盛な事業活動を展開していながら、事業税をほとんど負担していないのは銀行業だけでした。
分権改革、さらに一歩前進へ
今年4月より、機関委任事務の廃止を軸とした第一次分権改革がスタートします。
しかし、地方分権一括法では税財源の移譲が先送りされ、国から都道府県や都道府県から区市町村への権限移譲もわずかにとどまったこともあり、不満の声も少なくありません。
私たちは、市民の自治権の拡充のためにも、東京都が独自に区市町村への権限移譲を進めるべきと主張してきました。東京都は私たちの主張に応えて、「現状で東京都が処理している権限のうち、現行法制度の中で区市町村への移譲が可能なものについては、移譲を検討し、区市町村への一層の分権を進めていく」としています。
東京都、道州制を検討 七都県市で東京圏構想も
私たちは、石原都政の長期構想である「東京構想2000」の策定に際しては、地域特性や区市町村の合併をも視野に入れて策定すべきと主張し、石原知事も「地域の個性を重視しながら際立たせていく」としています。
また、石原知事の東京圏メガロポリス構想に対しては、七都県市が一体となった東京圏構想の策定を求め、さらに道州制の検討をも求めました。
東京都も「七都県市による東京圏のあり方についての調査検討に積極的に取り組む」とし、石原知事は「道州制という強力な自治体が誕生すると地方主権が加速される」と積極的に応えています。
障害施策の見直しに反対
東京都は、昨年来、シルバーパスや重度障害者手当、乳幼児医療費など、福祉施策の見直しに取り組んできました。
都議会民主党の昨年12月議会での代表質問などを受け、石原知事も、乳幼児医療費助成の対象年齢を引き上げるなど当初の見直し案を改善しました。
しかし、障害者施策の見直しについては、引き続き厳しい内容となっていたことから、私たちは、心身障害者医療費助成と重度障害者手当の2つの条例改正案に反対しました。
また、シルバーパスについては、新たに徴収される年間1,000円の事務手数料が、高齢者の社会参加に活用されることや、パスの対象外となっている70歳未満の高齢者に対する有料パスの発行に積極的に取り組んでいくことなどを確認し、賛成しました。
大気・原爆の見直しで付帯決議を提案
今議会では、大気汚染健康障害者、被爆者の子などの医療費助成に、新たに入院時の食事代(1日760円)の自己負担を導入する条例が提案されました。
私たちは、大気汚染では、認定方法の改善や対象年齢の引き上げなどを求め、被爆者では、関係団体の要望が強い居宅生活支援事業等の早期事業化を主張し、それぞれの条例に付帯決議をつけて、賛成しました。
また、12年度予算では、私たちが復活要求していた「精神障害者への都営交通無料パス」が新たに予算化されています。
医療改革の推進を
医療事故の防止は当然のことですが、それ以前に、医師や病院側は、医療行為に不安や疑問を感じる患者や家族に対して、誠意をもって説明する責任があります。
今、介護保険の導入にあわせて、特別養護老人ホームなどでは、サービス評価や相談窓口の設置などを進めています。私たちは、医療機関についても、利用者に対する権利擁護制度や苦情処理の仕組みといった利用者保護制度の創設を提案しています。
また、駒込病院の救急医療体制の整備など「365日・24時間」医療に向け、着実に取り組んでいます。
男女平等参画条例を実現
今議会において、私たちが強く推進してきた「男女平等参画基本条例」が成立しました。
東京都が全国に先駆けて基本条例を制定することは、全国への力強いメッセージの発信となります。今後の課題は、条例制定後の具体的な施策の展開をどうするかにあると思います。
私たちは、議会において、石原知事に対し、各局・各分野の連携強化を含めた推進体制の確立と条例の具体化ともいうべき行動計画の早期策定を求めました。これに対し、知事は男女平等参画審議会の意見を踏まえた上で、平成13年度中の行動計画策定を約束しました。
私たちは引き続き東京都の男女平等施策に注目していきます。
青少年とマス・メディアの問題を提起
今議会で、私たちはマス・メディアの青少年への影響について、再三問題を提起しました。
例えば、テレビゲームやインターネットから、青少年が簡単に有害情報に触れることができることや、書店やコンビニエンスストアにある一部の雑誌の問題、電車の中吊り広告のあからさまな性表現などについて、何らかの対応が必要ではないかとの立場で主張しました。
これに対し、石原知事はコンビニエンスストア等の雑誌の分別陳列についての現状調査を早速開始し、また、広告については取扱基準の運営の強化を検討し、適切に対応していく旨回答しました。
ディーゼル車にNO!
石原知事の政策の目玉の一つであるディーゼル車規制について、私たちは予算特別委員会質疑において、知事に対し今後の具体的課題について質問しました。
都が率先して都の所有するディーゼル車にDPF(排ガスに含まれる有害な微粒子を除去するフィルター)を装着することを表明したことは評価します。ただし、民間の事業者に対し規制が徹底されるには、DPFの価格が高い事などの課題が残されています。民間の事業者にとって過大な負担とならないように、DPFの価格を下げる事と、DPF装着資金の融資あっせん制度を充実させる事等が、実効性のある規制のカギを握っていると考えます。
そんな中、先の質疑において、都は軽油の低硫黄化の早期実現を国等に対し強く要望する旨約束し、また、業界もそれに反応して、早速硫黄分削減の方針を打ち出しました。軽油の低硫黄化が進めば、DPFの低価格化と高性能化が一気に進むことが期待できるので、私たちもこの動きを支持したいと考えます。
産業廃棄物の不法処理は許さない
今定例会で、私たちは産業廃棄物の問題についても取り上げました。産業廃棄物の不適正処理を防止するには、廃棄物を排出する事業者と処理する業者がきちんと責任を果たすことが重要ですが、現状では必ずしもその責任が果たされているとはいえません。
廃棄物の適正処理の確認をするために、いわゆるマニフェスト制度が法定化されていますが、マニフェスト(管理表)を出さない事業者に罰則がない事や、架空のものが売買されていると言われている事など、制度の形骸化が目立ちます。また、規制を強化しても、違法を承知で行う処理業者が後を絶たないのでは何にもなりません。
これについて、都も他県と連携し、不法な処理業者の根絶に努めると答弁しているので、都の強い姿勢を期待したいと思います。併せて、不法な業者に廃棄物が流れないように、産廃処理の適正価格を公表するなどの情報開示を都に対しては求めています。
玉川上水全域を歴史環境保全地域に
玉川上水のうち、羽村取水堰から宮本橋までの約2kmの区間は歴史環境保全地域の指定から外されています。この区間が、届け出により開発が可能である自然公園の普通地域に指定されているからです。そのため、より規制力の強い保全地域の指定を求める声が大きくなっています。
私たちの質問に対して、東京都は、「自然公園の普通地域に条例の保全地域を重複指定できる条例改正が必要である」との認識を示し、「現在、関係規定の整備について検討している」と答弁しています。
動物の保護・管理の適正化を
動物の保護及び管理に関する条例では、ペットショップなど動物取扱業の指導育成やトラやワニなど特定動物の飼育許可制度の見直しなどの改正が提案されました。
動物取扱業者では施設を持たない露天商やインターネットを利用した動物の販売業者が対象となっていないことを指摘し、施設の定義を広げることにより、動物が不適切に扱われることのないよう都に求めました。
また、トラやワニなどの遺棄や逃走があった場合に備えて、特定動物の登録方法の改善を求め、都に「対応していく」と約束させました。
西多摩地域における生活バス路線を確保
2月24日に、都議会民主党と生活者ネットワークとの都議会議員七名で、西多摩地域のバス路線の実態を調査しました。
現在、乗合バスにおける需給調整規則が廃止されるともいわれており、今後、バス事業者が不採算を理由に撤退することも考えられます。
私の質問に対して、東京都は「来年度に、国、地元市町村、事業者からなる地域協議会を設置し、生活交通のあり方やバス交通の維持活性化方策の検討などを行い、生活交通の確保に努めていく」と地域の足の確保に積極的な答弁をしました。
都庁の情報化を
今年の年初来、政府のホームページがハッカーによって改ざんされ、各省庁のソフト開発にオウム関連企業が携わっていたことが明らかになりました。
私たちは、万全のセキュリティ対策を求め、東京都も情報セキュリティ研究会を設置し、対策を強化していくとしています。
また、都道府県中最下位ともいわれる都庁の情報化の遅れを指摘し、改善を求めるとともに、その効果を最大限に生かしていくためにも、業務プロセスそのものを抜本的に見直し、都庁の組織体制のスリム化・フラット化を図るよう求めました。
石原知事も都庁の情報化には積極的な姿勢を示し、推進体制の整備を検討することになりました。