都議会レポート 平成14(2002)年4月

平成14年度第一回定例会号


都民生活の質的向上をめざし
活力ある都政の展開に全力投球!
 平成14年第一回定例会が2月20日から3月27日まで36日間の日程で開催されましたが、都議会民主党は代表質問に田中良幹事長をたて、また、予算特別委員会には和田宗春政調会長を中心に林知二、河西のぶみ両副幹事長、青木英二、山下太郎両副政調会長、坂口こうじ総務委員会委員長、藤川隆則都市・環境委員会委員長の布陣でのぞみ、定例会での議論をリード、党利党略に走る自・公路線にブレーキをかけるとともに、ややもすると、都民を忘れ、自己主張に捕らわれがちの石原知事へ強力なる警告をいたしました。
 代表質問における田中幹事長は、まず自治・分権社会の創造をテーマに、地方自治体の代表を最低でも副大臣クラスとして、政府に送り込み、直接自治権拡充に取り組むべきとの提言をおこないました。また使用料・手数料の改定にあたっての、説明責任の重大さを力説、今後、より広汎にわたる情報公開を約束させました。
 さらに、東京版FDAの積極的展開、「風の道」の確保をはじめとしたヒートアイランド対策の強化、ワークシェアリングの導入等を強く主張、加えて都民の皆様が抱いている治安に対する不安については、代用監獄を増やすことに腐心するのではなく、犯罪発生を抑止する対策の強化こそが肝要と警視総監にせまり、前向きの答弁を引き出しました。
 なお、本会議一般質問には、樋口ゆうこ(中野区)初鹿明博(江戸川区)大塚隆明(港区)花輪ともふみ(世田谷区)の一年生議員が立ち、それぞれ新人らしからぬ質問との評を得ました。
フーリガン対策に万全を!
犯罪発生抑止力の向上図れ
 ワールドカップ・サッカー大会開催で心配される、フーリガンによる各種不法事件の発生、また今回は、特に国際テロ発生の懸念もあることから、直接、警視総監に万全なる対策の確立を求め、国内だけでなく、外国の治安機関とも緊密な連携を図り、警戒警備に全力を上げるとの答弁を得ました。
 また、90%以上の都民が不安を抱いている治安対策についても地域に密着した、都市型駐在所の増設、パトロール強化などの、犯罪発生抑止力の強化をはじめとした、対策の拡充を主張しました。
学校週五日制で生まれる余暇時間の有効活用を!
 4月からスタートする学校週五日制で生まれる余暇時間が、塾通いに振り替えられただけということにならないよう「心の東京革命」を提唱する東京都として、こうした時間を、子ども達に様々な体験や経験をさせるよう、地域ぐるみで有効活用できるよう支援すべきとの提言をいたしました。
 都は、私たちの提言に、基本的に同じ姿勢であることを明言、子ども達に、実体験をさせる先駆的な取り組みをしている地域活動を、都内全域に拡大していく努力を積み重ねていくことを明らかにしました。
<14年度予算>
 都民福祉の向上に重点配分
 財政再建に課題残した編成
 平成14年度東京都一般会計予算は、法人二税の大幅減収を見込んだマイナス編成となりましたが一般歳出で、4兆3,763億円を確保し、福祉と保険に7,067億円、教育と文化に9,758億円を確保、構成比を高めるなど、限られた財源を都民福祉の向上に重点配分されていること等を評価し、知事原案に賛成しました。
 しかし、事業評価のバランスシートが活用しきれていない点を中心に、財政再建に課題を残しており、事業執行には万全を期すよう、強く指摘しました。
ストップ2?福祉改革
 福祉改革ステップ2は、「利用者本位」をキーワードに都の福祉施策全体を見直すもの。都立施設はコストパフォーマンスが悪く、改革が必要であることは以前から私たちが提案してきたことです。
 しかし、特に重度者の受入れ等不採算分野で行政が果たすべき一定の役割を踏まえ、サービスの効率化だけでなく、「福祉水準の向上」につなげるよう求めました。
 第三者評価については、利用者の視点に立った評価基準の設定と評価結果を都民にわかりやすく情報提供することを求めました。
予防的観点からも対策を
 児童虐待対策として、早期発見・治療の強化が図られています。私たちは、今後の課題として、虐待の激増に対応した一層の体制強化と各機関・職員の専門性の強化を図ること、虐待者へのカウンセリング等予防・再発防止策の強化を図ることを求め、都は「専門的な研修への参加・派遣研修生の受け入れ」等地域の子ども家庭支援センター職員への支援策と、親へのカウンセリング・治療を強化することになりました。また、里親への支援を強化することを約束しました。
改革ありき?まず地域の声を
 現在都立病院は、地域医療の拠点として、大きな役割を担っています。都立病院の再編・整備に当たっては、地域医療の確保が、欠くことのできない前提となります。特に、地域の小児科医不足は深刻で、医療の空白地帯ができてしまうことが懸念されています。はじめに移転ありきではなく、地域の声をきちんと聞いて、地域住民が安心できるよう対策を講じることを求め、都からも「小児科医療と地域に必要な医療を確保」するとの答弁を得ました。
使用料に利用料金制を導入
 今回の定例会には、34件の使用料・手数料の改定案が提案されました。
 私たちは、これまでにも再三原価や施設毎のバランスシートの公開を求めてきましたが、今回は、原価を公開した上で、運営委託施設については、各施設の自主的自律的運営を促す利用料金制を導入することになりました。これは、条例で料金の上限額を設定し、各施設はこの上限額の範囲内で、それぞれの経営判断に基づき、料額を設定するというものです。
 不満は残りますが、一歩前進と評価し、賛成しました。
職員給与条例に修正案
 自民・公明は、職員給与削減措置が3月で終了するのはケシカランとして、法定されたルールを無視する条例案を提案していましたが、定例会最終盤にこれを取り下げました。
 改めて、知事が提案した給与削減案は、一般職員について労使合意に基づいている点は評価できますが、管理職職員の実施時期を8月に遅らせるものでした。
 民主党は、管理職職員の4月実施を求める修正案を提案しましたが、自民・公明・共産の反対で否決されました。
議員定数削減を提案
 民主党は、都区制度改革や分権改革で、都の事務事業が特別区や市町村に移譲されている現実をふまえて、都議会議員の定数を削減することを求めました。
 都財政が厳しいのだから職員の給与を削減しろと主張している自民党・公明党は、自分たちの定数削減には猛反対。審議することにすら反対する有様でした。
 そこで民主党は、削減実現の立場から議会運営委員長の要請を受け入れ、今回の提案を見送るとともに、今後、各会派に対して定数削減について協議することを申し入れていくこととしました。
ヒートアイランドの解消を!
「風の道」への取り組み始まる
 熱帯夜や集中豪雨の原因となるヒートアイランド現象。私たちは、その対策として、海からの風や河川沿いの風を利用して都市を冷やす「風の道」や街のコンクリートをはがしていくことを提案しています。
 私たちの提案に、都は、14年度から局地的な気候を明らかにするモニタリング調査を区部約100か所で実施するほか、東京体育館でコンクリート舗装をはがし、保水性の高い芝舗装を導入するパイロット事業の実施、議会棟の屋上緑化などを行うことになりました。
地球温暖化阻止!
京都議定書の目標達成を
 温暖化対策に対する政府の取り組みは非常に遅れており、もはや都が国に率先して温暖化対策を提起していくところまできています。東京都は、すでに地球温暖化対策計画書制度を創設し、業務部門からの排出量の抑制を進めようとしていますが、私たちの主張に対して、さらに効果的な施策についても検討すると答弁しています。具体的には、大規模事業所などへのCO2排出削減義務化や「CO2削減証書」市場の創設、新築建築物への自然エネルギー利用の義務化などですが、私たちは、引き続き温暖化対策に取り組みます。
雪印食品の偽装事件
 この間の狂牛病に対する政府の対応や雪印食品の偽ラベル事件などは、現在の食品安全や表示をめるぐ体制がいかに不十分であるかを認識させました。私たちは、石原知事がアメリカの食品安全局FDAを参考に東京都版FDAを創設したことを評価するとともに、さらに消費者の視点からの施策の充実を求めました。また、消費者が小売段階でも、食料品の原産地や生産履歴などについて正確な情報を知ることができるトレーサビリティーの導入を主張し、都からも前向きの答弁を得ました。さらに議会でも、各会派に働きかけ「食品表示対策の推進に関する意見書」を取りまとめました。
花粉症対策として森の再生を
 スギの木に「マレイン酸」を注射すると花粉抑制の効果があると判明しましたが、一本500円のマレイン酸を全てのスギの木に注入するとなると年間200億円もかかるなど課題もあります。一方で、手入れが行き届いたスギの人工林は花粉を出さないことも分かっており、スギを経済ルートに乗せるなど、常に森林を循環させることが重要です。私たちは、そのために、スギによるバイオマス発電を提案するとともに、雇用対策もかねながら、間伐の推進などを主張しています。もちろん、身近な地域ではマレイン酸を活用するなど、引き続き花粉症対策に取り組んでいきます。

 


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