都議会民主党 海外調査団 報告
馬場裕子は都議会民主党海外調査団の一員として、オランダ、イギリスを訪問しました。
以下、調査の報告を掲載いたします。
会 派 | 都議会民主党 |
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出張議員名 | 小林正則、和田宗春、馬場裕子 |
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調査項目 | ワークシェアリング・多自然型川づくり・ナショナルトラスト・狂牛病対策・医療制度等 |
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調査の理由 |
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訪問都市 | アムステルダム(オランダ)・ハーグ(オランダ)・ロンドン(イギリス) |
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出張期間 | 平成14年1月27日(日)〜2月5日(火) 9泊10日 |
月日(曜日) | スケジュール | 宿 泊 地 |
1月27日(日) | 12:50成田発(JL411) 17:05アムステルダム着 |
アムステルダム |
1月28日(月) | 多自然型川づくりの現場視察 |
ハーグ |
1月29日(火) | ハーグ市労働担当との懇談 午後:ロンドン着 |
ロンドン |
1月30日(水) | ナショナル・ヘルス・サービス ロンドン事務所訪問 |
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1月31日(木) | ドッグ・ランド再開発視察 自然保護団体BTCV訪問・懇談 |
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2月 1日(金) | 食料基準局訪問(狂牛病対策について懇談) |
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2月 2日(土) | 街頭市民アンケート実施 (ナショナルトラスト)(税制度)(狂牛病対策)(医療制度) |
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2月 3日(日) | アンケート結果整理 オックスフォード大学街視察 |
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2月 4日(月) | 獣医学研究局訪問(狂牛病対策について懇談) 19:00 ロンドン発(JL402) |
機中泊 |
2月 5日(火) | 15:45 成田着 |
東京都議会海外調査団調査報告
馬 場 裕 子
(1月27日)
夕暮れのアムステルダムの街に降り立ちました。
こぬか雨が降っていますが、思ったより暖かく、早速3人で街を歩いてみました。
古い街並みを生かしながら生活している。街づくりの参考になります。やっぱり、自動車の駐車場の確保や自転車専用レーンの設置など、苦労している様子です。
明日は写真も撮りながら、市内をウオッチングしますのでお楽しみに。
(1月28日)
昨夜の散歩、ダム広場近辺の夜も風情がありましたが、楽しみにしていた朝のアムステルダムはまた雨、それに加えて強風が吹き荒れ、カサもおちょこになってしまいました。その中を行動開始。ホテルマンに「オランダ人はまだみんな寝ているよ」と言われながらバスに乗り込みました。
皇太子のご結婚日(2月2日)準備のため、街中の広告をはずしていてさらに美しい街並みを楽しみ、運河やアンネ記念館へ。西協会からカリオンの音が流れてくると、60年の歳月を越えて、戦争の非情さと人権の大切さを思いました。
エコリントプロジェクトは、私の地元、東京港の運河の再生に大変参考になりました。埋め立ての工法について、これを生かしたいと思っています。フランケンダール公園は10年前に市が買い取り、池をつくり、プロジェクトに連携させたもの。自然を守るための多大な努力はすごいです。このプロジェクトは3年がかりで、予算は1億5000万円とのこと。オランダの土木建設業は必ず環境担当部署を持っていると聞き納得しました。日本・東京も行政、業界、市民が各々の立場でもっと強い取り組みを進めるべきと思いました。
午後、雨も風も止んでいましたが、市美術館での特別内覧終了後、朝よりさらに強い風が吹き荒れた中で夕食をしながら書きました。明日をお楽しみに。
(1月29日)
昨夜来の強風が少し収まり、ホテル前の海辺がやっと見えるようになった朝8時。打ち合せも兼ねて皆で食事を採る。そしてハーグ市役所へ向けて出発。
モダンな乳白色の透明感のあるビルが市役所。大きな吹き抜けのホールを中心に小さな部屋が連なり、はるか上のほうまで伸びている。その2階、実に実務的な設備と、美術館から借りているという非常に高価な絵画が飾られた小部屋が市長室。そこで市の概要と教育省の大臣であった頃からのワークシェアリング等への取り組みについて伺う。実務力と人間性あふれる市長でした。
次に、ワークシェアリングについて、実務担当の女性(ご自身も管理職ですがパート勤務)から導入についての状況を聞く。ジェンダー意識の強い家庭重視のオランダ。1960年代の女性解放運動から今日のオランダモデルと称されるまでになった活動の歴史は、同様の日本にとって参考になりました。今はリバウンドと人材不足、また女性のフルタイムは4%とのこと。政・労・使・の三社合意もオランダの国ならではでしょうか?
(1月30日)
緊急でない病気は1年待ち! 緊急はフランスへ!
ロンドンの朝も遅い。オランダの風と空の話しをしたら、ロンドンをはじめ北欧中が嵐で死者も出たとのこと。
『嵐ヶ丘』など文学や芸術の育つエネルギーの源を実感しています。ロンドンも歴史の重さをいたるところで感じます。
今日はイギリスの医療制度の勉強ですが、かつての「福祉国家イギリス」なればこその苦悩を抱えていて、日本以上に緊急の対策が迫られています。1月28日にはブレア首相が自ら「悪化する医療の現状を改革できなければ次期はない」とまで述べています。日本の厚生省にあたる医療省のロンドン事務所で、イギリスの医療の現状を聞き本当にビックリしました。例えば病院での待ち日数(時間ではないですよ!)を短くするために改正した例として、
@診療の申し込みより6カ月以内に何らかの対応をしなければならない!
Aガンであれば2週間以内に診療が受けられる!
B緊急を要さない病気であれば今まで18カ月→12カ月以内に診療!
C先週の初めに実際にあった、フランスの病院への入院!
手厚い医療制度がありながら、病院不足で国民の不安が極限となっています。明日の日本の姿とならないようにと本当に願います。
(1月31日)
ドックランドと臨海副都心―似ていて違う? 再開発のこだわり方
今朝はまずまずのお天気で12階の部屋の窓からきれいなまん丸お月様が見えました。
本日の報告の前に、昨日の報告の続きを1つします。
イギリスの社会保障制度の話しを聞いていたら、年金の支給年齢が女性60歳、男性65歳であったため、ある男性から不平等だと訴えられて、現在検討中とのこと。時代とともに平等の基準も意識も変わるものだと思いました。
午前中は「ドックランド」視察。ここはかつての船の荷降しや倉庫(古い建築物で砂糖、煙草、お茶などをストックする建物でしたが、現在は内装替えしてレストランなどに使われています)。貧しい港湾労働者が居住し荒地だったこの地区は、20年前サッチャー前首相によって再開発されました。10分前の手続きで近隣諸国へ向け搭乗できる空港を含めて大きな再開発が成功した所です。
印象に残ったのは、ここで働き、生活をしていた港湾労働者に教育や就業相談などが行われたということです。新しいシステムに代わる際には、同時に充分な配慮が必要だと思いました。
午後はBTCV訪問、NGOの大きな力に感動しました。ロンドンの道路交通状況は次回に。
(2月1日)
世界中の誰もが安心できる食品づくりを目指して
―狂牛病の対策と情報公開は世界一 でもまだイギリス市民は一抹の不安?
今日も1日雨まじりの風が吹くお天気でした。夕方になって「メリー・ポピンズ」が傘を開いてやってくるような強風が吹き出し、枯葉が渦を巻いています。
道はどこも東京と同様に車があふれ、訪問を約束した建物が見えているのになかなか到着しません。一方通行や駐車場、バイク置き場(道路の中央車線沿いに設置)道路上の様々な線形など工夫が見られますが、渋滞の解消になっていません。昨日のドックランドのように街の機能の分散をしなければならないと考えているようです。
バスから商店街の通りを眺めていると50%、60%オフの「セール」の張り紙が目立ちます。昨秋の米国同時多発テロの影響で観光客が減り、ガイドや通訳さんも仕事がないという状況を聞いて、1日も早く平和が来ることを願いました。
一方の食の安全では、狂牛病について英国食品基準局の説明を聞き、現在できうる対策とその情報の公開がされているとのことですが、私は英国や日本のみでなく世界に誰もが安心して暮らせるような「約束」をつくらなければならないと、つくづく思いました。
(2月2日)
ロンドン市民と直接ふれ合い 生の声が聞けた「市民アンケート」!!
ロンドンでの私たちの常宿「口イヤルランカスターホテル」は広大なハイドパークに隣接して建てられている高層ビルです。緑の芝生が広がり、大きな木々が枝を伸ばし、池では白鳥やカモが泳いでいます。天気は相変わらず、雨まじりの風が強く吹いていますが、歩いていると汗ばむほど気温は高く、これがまさしくエルニーニョ現象と思わせます。
今日は土曜日だからでしょうか。一人、またはカップルで半袖、半ズボン姿でマラソンをしている人びとが行き交います(最も、雨の夜でもマラソン人はいますが…)。子ども連れで遊びに来た人、犬の散歩の人、時間を持て余していて(失礼)話し相手の欲しい高齢の方(この方は日本語で「おはよう」と声をかけてくださいました)、こうした方がたに、今回の視察の大きな目玉の取り組みである「市民へのアンケート調査」をしました。
今回勉強した私の感想と、このアンケートの集計結果とが一致するかどうか楽しみです。視察の合間に大英博物館、国立美術館も見学しました。いずれも莫大な収蔵品や作品が展示され、無料で入館できます。小学生がたくさん勉強にきていました。学生から外国人まで、誰でもが歴史を感じ、現在の自分の立場や大きな歴史の流れを体感できる所として大切にされています。
(2月3日)
学ぶとは考えること! 古都オックスフォードを訪ねて
午前中、街頭市民アンケートで3人がとったデータを持ち寄り、大雑把な整理をしました。税、狂牛病、ナショナルトラスト、医療などの項目別にみると、医療制度では待ち時間の長さなど不満が確認できます。税制、とくに付加価値税(17.5%、日本の消費税にあたる)には賛成の人が予想をこえて多かったことに驚きました。
帰国してからできるだけ詳しく報告したいと思います。この度の調査報告は第1回定例会の冒頭での本会議報告にとどまらず、さらに詳しい報告書を作成するなどし、3月1日には3人の共催報告会なども予定しています。
さて、今日は日曜日。フリーデーということで、オックスフォードを訪ねることにしました。ハイドパークの角にあるバス乗り場から15分毎に出ている2階建てのバスで1時間、料金は8.5ポンド1700円)。このバス停の前の公園の一角が「スピーカーズ・コーナー」と呼ばれる所で、誰もが自分の主張を演説できる所と聞き、(朝でしたから誰もいませんでしたが)東京でもこんな所があったら面白いと思いました。
オックスフォードは想像したとおり、古い学問の都といった風情が溢れ、伝統がきちんと守り続けられることの大切さを深く、重く感じされられました。文化とは、人や物、自然を大切にするということですね。
バスも電車も往復で買うととても安いのですが、帰りは勉強のため電車に乗りました。向かいの席に、犬をつれて乗りひざに抱いたままの夫人がいました。一緒にガイドのノウスさんが同行してくださったので、いろいろな話しを聞きました。現在の問題点の一番は医療で、とにかく病院が足りなくて困っている。特に救急の対応ができていない。2番目は鉄道が民営化されて設備の老朽化に対応できず、また、時間に遅れて困る。3番目は車の渋滞、などなど生活者にとっては暮らしにくい街のようです。
(2月4日)
あなたは何を食べているか知っていますか?―私たちの食べ物は世界中の生き物です
横なぐりの雨が吹きつけるなか、車で1時間あまり、今回最後の訪問調査に向かいました。車中でガイドや通訳さん(お2人とも女性でそれぞれ英国でキャリアを積まれた方がたで、大変お世話になりました)に女性の税金や年金、また家族の日常の様子、教育や介護のことなど話しを伺いました。英国の抱えている問題ですが、同時に日本でも同じ状況が来るのだと強く思いました。
訪問した「Veterinary Laboratories Agency」(狂牛病対策についての研究所)の所長さんは、大変熱心に2時間にわたり説明をくださいました。英国のBSEへの取り組みの経過と今後の問題まで、反省点も含めて述べられました。感染ルート究明に力を注いだこと、一次的な対策が不十分だったために病気の発症を防ぐどころか、増やしてしまったこと。とにかく、1ミリグラムたりとも動物の肉すべてを飼料にしてはならない、させてはならないということが理解できました。
経済に与える影響の大きいことから、政治的にも弱腰になっては取り返しがつかない。最後はペットフードにも触れ、生き物すべての食に関する考え方を根本から見直すことが早急に必要と思っています。これで、風と雨のイギリスと別れて帰ります。メンバーになれて本当によかったです。
東京都議会海外調査団民主党調査団
調査報告会を開催
2002年3月1日
都議会民主党は、3月1日午後6時より、都議会議事堂会議室で海外調査団の報告会を行いました。
報告会では、調査団3名よりそれぞれ、上記の視察の詳細な報告、感想などを発表しました。
当日は参加者からの質問や意見表明も多数あり盛会でした。参加者の皆様に対しては、私たちの「情報公開」する姿が伝わったものと自負しております。
もちろん、今回の調査における全費用も公表いたしました。3人分の調査費用は以下のとおりです。
4,349千円(旅費、通訳等) | |
●旅費 3,384千円 | 航空運賃等 2,295千円 宿泊費等 666千円 日当等 423千円 |
●通訳等 965千円 | 専用車 340千円 ガイド 265千円 通訳 360千円 |
東京都議会の旅費規程(*)に基づく支出ですので、一般の海外旅行に比べると割高ですが、この経費が高いのか、安いのかは、私たちが今回の調査で得た資料・情報をどう活かすかにかかっていると思います。
これからの私たちの活動にご注目ください。
*旅費規程=議員の報酬、費用弁償及び期末手当に関する条例第7条
OHPを使って説明