平成14年 総務委員会

2002年9月27日

馬場裕子

一 電子投票について

一 電子投票について

◯馬場委員
 電子投票について何点か伺わせていただきます。
 本年六月二十三日に、我が国初の電子投票が岡山県の新見市で行われました。新見市のこの取り組みは全国的に注目を浴びて、マスコミを初め、私どももそうですが、視察者のラッシュのような形でありました。にぎわったわけですが、この投票を終えた新見市の有権者の皆さん、アンケート調査では、83.4%の方が導入に賛成ということで、反対の人は3.6%、導入に大方の賛同を得たという結果になっております。
 全国的に見ますと、来年の統一自治体選挙等に向けて、数団体が電子投票の導入の準備を進めていると報告をいただきました。全国で数団体というのは、何か大変寂しいな、余り各地で声が上がっていないのだなと改めて私は思ったんですが、都でも、今回報告いただきましたように、三年をかけて研究会を設け、その報告書がこの三月に出されています。
 ここでいち早く、それでは、国が電子投票特例法というものをつくられて、その結果、新見市でできたということなんですが、この電子投票特例法に関してまず質問をさせていただきます。
 この特例法、今回の特例法では、電子投票の対象となる選挙を地方公共団体の選挙に限定をしておりますが、なぜ地方公共団体だけに限定したのか、その背景を伺います。おわかりでしたらお願いします。



◯押切選挙管理委員会事務局長
 いわゆる電子投票特例法でございますが、平成13年11月に国会で成立し、平成14年2月に施行されました。
 ご指摘のとおり、この特例法は地方公共団体の選挙に限り電子投票を可能とするものでございますが、この背景といたしましては、総務省によりますと、投票方法の変更は広く有権者の合意を得て進めていくべきものであり、国政選挙の投票方法の変更については、現時点で広く合意が得られたという状況とはいえないと考えられると。一方、地方公共団体の選挙においては、合意の形成された意欲的な団体があり、それら団体からの導入要望もあって、その取り組みまで阻害することのないようにするということでありまして、この特例法は地方公共団体の選挙に限定され、試行的な実施が可能となったものでございます。



◯馬場委員
 今ありましたように、国は、全面的な公職選挙法を改正して電子投票を導入する、つまり、国が全体で進めるというところまではいってない、国民のまだ合意が得られてないというふうないい方でありますが、そういう状況だということで、しかしながら、やりたいところがあればやってもいいよという、いってみれば、やりたいところはモデルケース的にやって、それでうまくいくんなら全体的にやろうかというような感じを受けておるんですが、それでは、今、特例法について、大きな、地方公共団体の選挙に限りというのを伺わせていただいたんですが、もう少しこの特例法の概要について伺います。



◯押切選挙管理委員会事務局長
 まず、特例法の趣旨でございますが、地方公共団体が条例で定めることによりまして電子投票を行うことができるように公職選挙法の特例を定めるものであるとされております。
 特例法の対象となる選挙は、地方公共団体の議会の議員または長の選挙で、対象となる投票は投票日当日の投票、つまり不在者投票を含まないという意味なんですが、投票日当日の投票における通常の投票となっております。
 また、投票の方法は、候補者の氏名を電子投票機に表示し、投票機の操作により候補者のいずれかを選択させ、その結果を電磁的記録媒体に記録させるものと規定されております。



◯馬場委員
 特例ということで、問題点も、メリットもデメリットもあるということなんですが、それでは、この電子投票特例法が成立したことを都ではどのように評価をとりあず──とりあえずというのは失礼でしょうか、評価していらっしゃいますでしょうか。



◯押切選挙管理委員会事務局長
 現在、選挙の管理執行は、投票時間の延長や不在者投票の事由緩和に加えまして、即日開票の定着など、ますます複雑になってきております。
 こうした中で、今回の特例法は、IT化の進展を踏まえまして、地方公共団体がみずからの責任と判断で電子投票制度を導入することを可能とするものでございまして、選挙の公正かつ適正な執行を確保しながら、開票事務の効率化と開票結果の公表の迅速化を開く道であると。課題は残っているものの、基本的には意義あるものと認識しております。



◯馬場委員
 投票の、いろいろな複雑な状況になってきているというところで、また、先ほどお話しいただいたように、地方公共団体がみずからの判断と責任でこの導入ができる、可能性はあるということなんですが、東京でも、この報告をいただきましたように、都の電子投票研究会、平成11年の9月に設置されました。各区市の担当者やITの技術専門者の方も含まれておりますが、この平成11年の9月に設置されたときは、まだこの特例法できておりません。この研究会が検討している途中でこの特例法が成立されたという状況にあるわけですが、この研究会が、検討の枠組みというんでしょうか、検討をしているときに成立したというこの法の影響というのはどんなふうにあったんでしょうか。



◯押切選挙管理委員会事務局長
 この研究会では、電子機器に関する技術革新が進む中で、おおむね向こう数年の間に実現可能な技術というものを前提として検討を行ってまいりました。
 電子投票特例法の成立におきまして、実効性のある議論を行うために、導入時の実務的な課題と対応、また導入に伴う事務の流れ等に関することについては、特例法に規定された枠組みと内容で、電子投票を実施する場合を念頭に置いて検討をいたしました。
 他については、例えば投票種別の区分としては、投票日当日の通常の投票だけでなく、今回の特例法で対象外とされた通常の不在者投票についても検討の対象とするなど、広い範囲で議論を重ねてまいりました。



◯馬場委員
 都では、この研究会で、電子投票を導入するに当たって、要するに、必要な条件、必要なことは全部仮定をして考えていこうという姿勢だったというふうに思うんですが、途中でこの特例法ができたということで、ある意味では促進、具体的に即できるところはしていいよということになったわけですから、具体的なできる方法を考えなければならない。しかしながら、この特例法が特例法のゆえをもって、できないことが何点も出てきたわけですね。そこのところを──今おっしゃられたように、国の枠を超えて問題点というところが出てきたというふうに思います、不在者投票の件等あるんですが、この点について、都としての今後の課題というのはどんなふうに考えられたんでしょうか。



◯押切選挙管理委員会事務局長
 選挙を実際に執行する立場から見まして、電子投票導入を円滑に進めるためには幾つかの課題があると考えております。
 まず、特例法が対象としています選挙を、地方選挙だけでなくて、規模の大きい国政選挙も含めることによりまして、投票方法の一体性を確保し、有権者の理解を得ることもできますし、また、選挙事務の効率化や財政負担の低減なども図ることができると考えています。
 また、昨今の選挙におきましては、全体の投票に占める不在者投票の割合が一割を超えている状況でございます。特例法で除外されています不在者投票についても、開票の迅速化を図るということであれば、電子投票の対象とすべきであるというふうに考えています。
 また、投票データを開票所に伝達する手段といたしまして、記録した媒体を運搬するということでございますが、運搬ではなくて、オンラインによって送信する、もちろんセキュリティーを確保するということは当然ですが、そういったオンライン送信を可能とする道を開くことなどが課題ではないかと考えています。



◯馬場委員
 公職選挙法に触れることができないということで、ささいな問題ならいいんですが、非常に大きな問題が結果的には今回のこの特例法では解決をされていないということがはっきりわかったわけなんですが、まず初めの投票方法の一体性、つまり、自治体は自分のところの首長さんや議員の選挙はこの電子投票でできるけれども、国の選挙はだめだというと、例えば一緒に選挙が行われたときに、片一方は電子投票で片一方は手書きでやらないといけない、そういう意味の一体性が損なわれる、確保できないということですよね。そのことはまず大変大きな問題だというふうに思います。
 そして、二つ目に挙げられました不在者投票、この問題もあると思います。私も、はっきりわからず、今回調べて、ははあなんて思ったんで、大変申しわけないと思ったんですが、不在者投票、つまり投票権、報告書にもきちんと書いてあるんですが、現行制度では、投票権を有する日は投票日当日のみということになっている。つまり、そのために、今の不在者投票も、開票はあくまでもその投票日にする。つまり、事前に預かって、預かり状態で置いて、開票日にする。それが電子投票ではそういう形が多分とれないということで、不在者投票は対象にならないということなんだというふうに思います。
 これも、公職選挙法を改正して、事前に投票日を例えば告示日からにするとかいう形にすれば解決することであるというふうに思いますので、この辺も、そういう意味では、この特例法のまま置いておくよりは、公職選挙法を改正すればいいのではないかなというふうに単純に私は考えているんですが。
 それから、三点目に述べられましたオンラインによる送信ができない、つまり、それぞれの投票所で電子投票をしても、それを、この機器を開票所まで運ばなければいけない、新見市でもそのことが大変大きく問題になったといわれています。つまり、せっかく遠い、開票所が大体一つの自治体に一カ所というふうに想定されていますが、そこまで、大変遠いところから、昔でいえば投票箱を運ぶわけですよね、それを電子機器を運んでこなければならない、そんなような状況であるというのは実にもったいないというか、何のためにというような気がしました。
 これもなぜなのかというふうにお尋ねしたところ、公職選挙法で、投票所と開票所は別にということで定められているということだと、私どもは、セキュリティーとか、そういうものもあるのかなというふうに思っておりましたが、いろいろな意味が何点か重なっているのかもしれませんが、このオンラインによる送信が不可能であるということも、大変この特例法を実施するのに、導入するのに、しにくいという大きな要素になっているのではないかというふうに思っています。
 こういう問題は国でもわかっていたのではないかというふうに思いますが、こういう課題がありながら、その電子投票制度の導入をしたということ、この経緯についてはどのように考えられるでしょうか。



◯押切選挙管理委員会事務局長
 課題を抱えながら国がスタートした理由、経緯でございますが、総務省によりますと、社会のIT化が進む中で、一つは、複数の地方公共団体から、長時間にわたる開票作業の負担を解消するために電子投票を実施したいという具体的な要望があったために、意欲的な団体が実施できるようにするということ、また、選挙事務についても、投開票等の各段階で電子機器を導入していくことは避けられないものだという認識を国として持ったこと、三番目には、特例法成立後については、投票の運用の実態あるいは電子機器の開発状況を踏まえた見直しを行う必要が出てくることも想定されるということや、今後、電子投票の対象選挙の拡大について議論となる可能性もあることなどから、当分の措置として、地方の選挙において試行実施を可能とするための特例法にするというふうに聞いております。



◯馬場委員
 また戻ってしまいましたけれども、結局、国ではまだ課題があるので、できるところから導入をしようということを可能にするためにつくったということですので、できるだけ各自治体でやれる方向でということを考えざるを得ないと思っていますが、それでは、東京都内ということで、自分のところというところで考えさせていただいて、早速来年の統一自治体選挙があるわけですが、都内の区市町村が来年度の統一自治体選挙で電子投票を導入する場合、条例制定の手順というのは、それでは──まず決めなければいけませんね、条例で。その手順というのはどんなことになるんでしょうか。



◯押切選挙管理委員会事務局長
 都内の区市町村が電子投票を導入する場合の条例制定の手順でございますが、電子投票特例法によりますと、一つの場合は、区市町村が管理する長または議員の選挙において電子投票を導入する場合でございますが、これは、対象となる選挙などを条例で定めることが必要となります。
 また、もう一つ、都が管理する都知事選挙また議員選挙等において電子投票を導入する場合につきましては、まず区市町村で電子投票を導入する条例を制定することが前提となり、その上で、都知事選挙において、あるいは都議会選挙においてでもいいんですが、都知事選挙等において、電子投票を行う区市町村を都の条例で定めることが必要となります。



◯馬場委員
 要は、区がまず自分のところの選挙を電子投票でやりますという条例をつくり、また、その開票、投票事務の役割分担ということで、その事務のいろいろ設備もしなければならないということですね。
 それから、では都の選挙はどうなるかというと、都は開票、投票ありませんから、まず都知事や私どもの都議会議員選挙を決めるとすると、都で条例を定めると。そのときに、私も、全部が、各自治体がその条例ができないとだめなのかというふうに思ったんですが、そうではなくて、例えばどこそこの、例えば私の品川なら品川が条例で定めていれば、東京の条例は、品川区で都知事の選挙を電子投票でやることを定めるという条例をつくればいいということですよね。そういうことですよね。
 ちょっとややこしいというか、条例をそれぞれつくっていかなければならないわけですが、こういう状況の中で、さっきの検討会もそれぞれ区市の担当者の方も入っているということで検討してきた、このことは十分ご承知だというふうに思うんですが、それでは、東京都内で近々にこの導入を予定しているところはあるのでしょうか。



◯押切選挙管理委員会事務局長
 現在、大方の都内の区市町村では、電子投票に関する情報収集や研究をしている段階でございまして、具体的に導入を予定している団体はないと承知しております。



◯馬場委員
 つまり、条例制定だけではできないということ、それから施設設備をしなければならない、費用対効果の問題、とりあえず、自分のところの四年に一度の選挙にそれだけの費用はかけられないというような状況なんだというふうに思うんですが、そういうことでは、国の目的からしても十分ではないというふうに思うんですが、その大事なところの財政支援というところでは、どんなふうになっているんでしょうか。



◯押切選挙管理委員会事務局長
 財政支援についてですが、原則的な話でございますが、電子投票特例法におきましては、電磁的記録式投票機の使用に要する費用の負担は当該地方公共団体とされております。
 しかし、現在は投票機コストが高いということなどを考慮しまして、電子投票の円滑な導入を支援するために、国は、地方公共団体の導入経費の二分の一を当分の間補助するとしております。
 一方、都では、導入する団体がございましたら、当面パイロット事業といたしまして、区市町村選挙における電子投票導入経費の四分の一を予算の範囲内で補助するとしておりまして、そのために、平成14年度予算におきまして四千万円を計上しております。



◯馬場委員
 この予算も、報告書を見せていただいて、経費はどのぐらいかかるのかなというふうに、報告書にもありましたけれども、区部では二億六千万、市部でも一億二千万ですか、これを単純に計算して、四分の一自己負担というふうに計算して、区部だと六千五百万円、市部だと三千万円ですね。都が、今おっしゃられたように、14年度予算四千万円ということは、都内で一カ所分しか都として予算をつけてないということですよね。
 そういう中で、この研究会も含めて、今後本当に積極的にやっていくには、都としてどんなふうな取り組みをすればいいと考えていらっしゃるのか、改めて伺います。



◯押切選挙管理委員会事務局長
 まず、IT化が進展する中で、有権者の投票環境の向上や、選挙事務の迅速化や効率化を図る上で、電子投票制度導入は有効な方策の一つであると考えています。
 まず、都民の間に定着しています現行の自書式投票を変更し、電子投票の円滑な導入を図るとすれば、まず有権者である都民の皆さんに理解を得ることが重要でありまして、都選管としても、選挙啓発の一環といたしまして、さまざまな機会をとらえながら、都民に対して、その意義やシステムの信頼性について周知を図っていきたいと考えています。
 また、電子投票の導入は、投開票など実際に選挙を執行いたします区市町村の実態を十分踏まえたものでなければならないということでございまして、区市町村に対しまして、相互の連携を図りながら、必要な情報の提供や助言などをできる限り努力してまいりたいと考えております。
 またさらに、これは基本的なことですが、国に対しても、これまで申し上げた課題、国政選挙への導入、不在者投票の問題、こういった課題を踏まえまして、さまざまな機会をとらえまして、地方公共団体が導入しやすい環境づくりというものに取り組まれるよう、積極的に要望してまいりたいと考えています。



◯馬場委員
 最後に、意見というか、申し述べさせていただきますが、まず一番の都民への周知、これをするのであれば、新見市の例にあるように、実際に来年の選挙でやるのが一番なわけですね。私も反省はしているんですが、今回の条例制定のいろいろ過程、期間等を考えると、来年の選挙に導入をするというのはかなり難しい、時間的な意味でも難しい状況にあるのかなというふうに思っていますので、そうすると、あとは今後の選挙ということになるんですが、それも自分たちで、自治体が決められるのは要するに自治体の選挙ということですので、これは随分先に延びてしまうなと。せっかくここまで来ていて、今回の来年のチャンスを逃したということは、この周知ということからも、都側の積極的な取り組みというのが不十分だったのではないかなというふうに思わざるを得ないんですが、そのことで、今後、そういう意味ではもう少し積極的にやっていただきたい。
 それから、二番目の区市町村の支援、これはひとえに、これからの時代、今のお話のように、財政の支援か、もしくは、そのことを一体として、IT化を図っていく上での一体的な問題だというふうに思っています。実際に区市は投票、開票事務をやっているわけですから、これは今後のいろいろな選挙の中で大変大きな負担になってきますので、この辺も含めて、ぜひ、特に国の選挙、大規模な選挙も含めて、細かいものは細かいので大変ですし、大きいのは大きい選挙で大変です。そういう意味で、ぜひ区市町村等にもっと積極的に導入支援というのをお願いしたい。
 そして、一番は、やはり国へぜひこのことの不備を、特例を早く解消し、国の公職選挙法の全面改正というところで、オンライン化、そして不在者投票を対象にするとか、すべての面で、東京が研究して得られた成果をそのまま国で使っていただければいいのではないかなというふうに思っておりますので、積極的な取り組み、ぜひよろしくお願いを申し上げます。
 終わります。