平成15年 財政委員会

2003年7月3日

馬場裕子

一 会計制度改革の基本的考え方について

一 会計制度改革の基本的考え方について

◯馬場委員
 私からは、東京都の会計制度改革の基本的考え方と今後の方向について、四点にわたり質問させていただきます。
 数年前から公会計の制度を複式簿記・発生主義に変えていくべきだということを強く申し述べてまいりました。行財政の効率化とか世代間の公平の確保ということに加えて、今長時間にわたって質疑がありましたように、財政危機ということが大きく、今回、都だけでなく、国も含めての問題ということになってきております。その中でこの会計制度を変えていくということが大変大きな意味を持つと私は思っておりますので、きょうはあえて、もう時間がないんですが、この公会計制度の改革について、応援をするという意味から質疑をさせていただきたいというふうに思います。
 今長くありましたように、前段の報告事項一のように、今回第二次財政再建推進プランの策定に向けて「途半ばにある財政再建」が発表されました。その中では、右肩上がりの時代が終わり、税収の自然増が望めない中にあっては、持続可能な財政運営の実現が不可欠であり、そのためには財源不足の解消という量的改善とともに、財政の弾力性を回復させる質的改善が必要であるということを述べられましたし、委員の皆様からも多数出ました。
 この身の丈というのがどういうものかということは、この財政再建の中にありますが、いつから気がついたかというような質疑もありましたが、ある意味では個人はもっと早く気がつき、自分の身の丈で自分の日常生活を変えてきている。しかし、都の財政の中では、もう少し財政、頑張れば──景気回復に大きく影響するのではないかというような意見が今までもあり、なかなかこの身の丈というところが出されてくるという状況にはなかったのではないかなと私も思っていますし、今でも国はまだそのことをでき得ていないというふうに思っています。
 しかし、じゃ、身の丈というのがどのくらいなのかというのは、出された資料の中でも、景気に左右されるということで予測がし切れていない部分があります。その予測されない身の丈に支出の方も合わせていこうというわけですから、これはやはり大変な作業になるというふうに思っています。
 こうした課題、これを中長期的な視野から抜本的に解決し、真の財政構造改革を実現していくためには、現在の会計制度を見直し、行政コストや資産、負債の状況を明らかにすることができる複式簿記・発生主義に基づく企業会計方式を導入し、受益と負担の関係等、都民と情報を共有し、ともに考えていく、そういうことが重要であるというふうに思っております。
 いろいろ質疑が出ました。この会計制度に合わせながら質疑を聞いておりました。ある一定の固定経費に近いような割合がどういうふうにあるのか、それを構造改革していくということがどういうことなのか、どうしていけばいいのかというようなことを具体的にこれから考えなければならない。そういう中で、この会計制度というのは大変重要な資料になるというふうに思っています。
 こうした観点からの取り組みとして、今回、この会計制度改革の基本的考え方と今後の方向ということで出されましたが、現段階でこの報告書をまとめた趣旨というのは何であったのか、改めてお伺いいたします。



◯熊野主計部長
 東京都におきましては、単式簿記・現金主義を基本とする現行の公会計の欠陥を補うために、平成十八年度から会計処理に複式簿記・発生主義を本格導入することとしております。この報告書は、今後具体的な取り組みを進めるために、会計制度改革の基本的な考え方をまとめたものでございます。今後、これを指針といたしまして、取り組みを進めていくつもりでございます。




◯馬場委員
 今の現状を、早い話、数字にしてあらわしていくということなのだというふうに思います。数字にすることで状況が見えてくる。つまり、さらにいえば身の丈が見えてくる、そしてそれを改革する方向も見えてくるというふうに思います。
 この会計制度は、都のすべての会計に導入をするというふうに書かれております。こうした大きな会計制度の改革は、あらゆる施策、事業について行政コストが明らかになるとと思います。しかし、この数字が単に総コストを明示することだけになるのではなく、そのことが施策効果をあらわす、そういうことでなければならないというふうに思うんですが、先ほどお話がありました補助金の取り扱いについても、いろんな意味がその数字の中から見えてこなければならない。どういう補助金がどういう形であればいいのかというのを、数字とともに、アカウンタビリティーでしょうか、説得力ある改革にするためには、その数字も一緒につけるということが大切だというふうに思っております。
 このことについて今後どんなふうに取り組んでいらっしゃるか、伺います。




◯熊野主計部長
 行政部門で企業会計方式を導入する場合におきましては、単に施策のコストを認識するということだけでは不十分でございまして、施策の効果等を把握して、それらを比較検証した上で、経営改善あるいは説明責任の課題に対応していくということが重要であり、むしろそれが本当の目的だと思っております。
 しかしながら、施策の効果を把握する手法というのは、個別の事業あるいは施策の性質等々さまざまでございますので、企業会計方式とは違って、統一的な基準を設けて測定していくということは、大変困難かなというふうに思っております。
 したがいまして、今後は、企業会計方式を導入して、そこで明らかになった行政コストを行政評価とどう結びつけていくかとか、あるいは直接事業を所管している各局と連携しながら、どうそれを役立てていくかということを検討することが大切だと思います。
 今後検討を進める中で、施策の効果なども踏まえた適切な財務諸表の活用がなされるように工夫をしてまいりたいと思っております。




◯馬場委員
 ありがとうございます。今述べられたように、数字というのは大変怖い部分があります。ひとり歩き。数字をどう使って施策を見せるかという、その見せ方も、数字の使い方で幾らでもできる。どちら側に向いてどう出していくかということも含めて、これは大変大きな問題であるというふうに思いますので、今後さらに一般の企業会計と違う部分をいかにつくっていくか、いかに説得力ある表示なり組織にしていくかということも含めて検討いただきたいというふうに思います。
 先ほどの質問にもありましたように、本当に都がやらなければいけないこと、アウトソーシングも含めて民間委託やさまざまなことが考えられると思いますが、そのときに、実情なり、そのことがどういうことかというのがきちんと相手にわかる、相手というか、どういうところにそれを任せればいいのかということもわかる資料ということになってくると思いますので、そういうことも含めて、早急に会計のシステムをつくるということが、構造改革にとって大変大きな意味を持つというふうに、何度も申し上げますが、思いますので、お願いいたします。
 ただ、今、東京では十八年ということで計画が出ておりますが、東京だけでこの会計制度をやるということは、さっきお話ししましたように、地方分権や、さまざまな点でこの企業会計は大変大きく意味をなすものだというふうに思っています。他の府県等の比較や、自立をしていく、自分の自治体がどういう状況にあるのかというのを把握するためには大変必要な状況でもありますし、それをもって、国に対して、分権、補助金、先ほど出ましたように、補助金等も含めてどういう形で国と連携をしていくのか、そういう材料にもなり得るものだというふうに思っています。
 その意味では、東京だけのものにするのではなく、導入に向けて、ほかの自治体との連携ということを考えなければならないというふうに思いますが、国や他の自治体の検討状況、今どんなふうになっているのか、また、ほかの自治体の取り組み状況がわかれば教えてください。




◯熊野主計部長
 国におきましては、財政制度等審議会におきまして、本年一月から公会計制度について検討を進めてございます。六月末に公会計に関する基本的考え方を取りまとめたところでございます。この報告書では、企業会計方式による省庁別財務書類を作成すべきとしてございます。また、経済財政諮問会議でも議論してございまして、骨太の方針二〇〇三におきましても、民間企業会計手法の導入など、公会計制度の改革を進めると記述しているところでございます。しかしながら、これらの報告書等は、公会計制度改革について一定の必要性は認めているところでございますが、抜本的な官庁会計制度の改革まで踏み込んではおりません。
 また、他の自治体につきましては、普通会計決算からバランスシート等を作成している自治体は多いんですけれども、会計処理に複式簿記あるいは発生主義の導入を検討している自治体については聞いてございません。今後、東京からの発信の一つにできればいいと考えております。



◯馬場委員
 今までお話しいただきましたように、大変難しいシステムだというふうに思います。それをどこかが考えて、モデルのようなものでしていくことによって、他の自治体もそれを利用することができる。そういう意味では、都がこの財政規模でこうした会計制度を複式簿記等でやっていくことができるんだということは、他の自治体にとっての大変大きなモデルになるというふうに思っておりますので、ぜひ積極的に進めていただきたいと思っております。
 この中で、ただ一つ残念だというふうに私が思いましたのは、予算等への反映ということなんですが、これはこれからの課題ということで述べられているんですが、公会計で何が大切かといったら、私どもが一年間で予算の審議、予算をどうするかという、そのことが大変大きな、あえていえば、決算よりも予算重視というのが、税金を預かる私たちに、何に使うか、どう使うことを約束するかというような予算の重視ということがあるというふうに思います。それが一般の会計と少し違うところかなというふうに思っているんですが、その肝心な予算というところでこれが使われてこない、つまり、このシステムを使うようにならないということ、これは大変残念だというふうに思いました。
 先ほどの質疑の中で、これからの人口予測やさまざまなシミュレーション、例えば、税収が、さっき身の丈がありましたが、身の丈が伸びるか、また縮むのか、そういうたくさんの予想の予算編成というものが、これから、このシステムさえできれば幾らでもできるのではないか。こういう場合、それから、来年から、先ほど都債の話もありましたが、二十年先、三十年先にどういうふうに償還できるのかということも含めてきちんと明示されなければ、二十年先、三十年先の都債をだれが意識して買い、責任を持ってそれを売ることができるのかということになるというふうに私は思っています。
 そういう意味では、予算、つまり、これからの東京の計画、財政も含めて、福祉、サービスをどうするか、どういう予算をどう使えばどういうサービスができるのかということ、それから、これをやった場合はこうなる、これをやめた場合はこうなるというようなことのさまざまなシミュレーションが、この予算編成という形で幾らでもできるのではないかというふうに私は思っています。
 そういう意味で、都民にきちんとした予算の審議を、私ども議会が審議をするためにも、予算の部分にきちんとした、決算を反映しての会計システムをつくっていくということが、これからは構造改革や財政難の解消にとって一番大事なことだというふうに思います。
 そういう意味で、真の財政構造改革のモデルを東京からつくる、発信していく、このことを最後に局長のご決意としてお伺いして、終わりたいと思います。




◯櫻井財務局長
 複式簿記・発生主義を導入することを主眼とします会計制度改革を実施するということは、明治以来百年以上にわたりまして続けられてきました我が国の官庁会計の仕組み、あるいは事業運営の仕方、あるいは私ども公務員の感覚、いわば大げさにいえば、文化そのものを抜本的に改革する、こういうことになりまして、いわば新たな行政風土をつくっていく、こういうようなことになろうかと思います。
 そういう意味で大変大きなテーマですし、困難な課題でもございます。我が国で初めての取り組みということをもちまして、コスト意識を醸成し、行政の体質を変革するという、今我々都職員に求められている姿勢、こういうものを実現していくよすがにもなるかなということで、そういう大きな意味もございますことから、今後全庁一丸となってこの会計制度改革を推進しまして、東京から新たな公会計のモデルを全国に発信してまいりたいと考えております。