平成15年 財政委員会

2003年9月29日

馬場裕子

一 第二次財政再建推進プランについて

一 第二次財政再建推進プランについて

◯馬場委員 先日発表されました第二次財政再建推進プラン中間のまとめの中で、今後財政構造改革を進めていくに当たっての視点として、三つの視点が示されました。そのうち、私は視点3、最後に掲げられました、国の仕組みを変えるということについて幾つか確認をさせていただきたいというふうに思います。
 今回、六月から七月、一カ月の間で、この視点3の表現が、国の仕組みを変えるということに大きく踏み込んだ表現といったらいいでしょうか、そういう形で変わってきています。このことは、今まで私どもが行政の皆さんの中で国への要望というふうに聞いていたものが、大きく変わってくるのではないかなという印象を受けました。この点について何点か質問させていただきます。
 まず、この視点3なんですが、二つに大きく分かれております。一つは、今までと同様、税源移譲などの地方税財政制度改革について、これを強く進めていくということでございます。もう一つが、今申し上げました国に対して規制改革を提案していく、このことが新しい大きな提案だというふうに思っています。表現としては、「国の規制や既存の制度が都の施策展開にとって障害となっている場合には、国に対して制度改正や規制改革を主張し、国の枠組みそのものの改善を求めていく。」というふうな文章になっているわけですが、最初の税源移譲などの地方税財政制度改革についてまず確認をさせていただくところから入りたいと思います。
 この地方税財政制度改革につきましては、前回のプラン、第一次の財政再建推進プランでも掲げられておりますが、この四年間の成果、取り組み状況や国の動きなどについて、まずご説明をいただきたいと思います。



◯熊野主計部長 まず、第一次の財政再建推進プランの策定段階では、平成十二年四月の地方分権一括法の施行予定という時期をとらえまして、真の地方自治権の確立のために税源の移譲などを掲げて、国に対して強く働きかけていくということにいたしました。このため、例えば国への提案要求の中で最重点事項というカテゴリーを設けまして、その中に税源の移譲等を加えて強く働きかけてきたところでございます。また、いわゆる都税調を立ち上げまして、税源移譲のシミュレーションなどを都みずから提案をしてきたところでございます。また、こうした動きと連動しまして、都議会の先生方からも意見書を出していただくなど、いろいろご尽力をいただいた経緯がございます。
 しかしながら、このような取り組みを行ったにもかかわらず、結局この四年間では、国からの目に見える形での税源移譲はなされることはなかったということでございます。
 そうした中で、地方税財政制度の改革がようやく動き出したのが、平成十三年六月の国の地方分権推進委員会の最終報告からでございまして、十四年六月の骨太の方針二〇〇二におきまして、いわゆる三位一体の改革が示されたところでございます。引き続いて本年六月に骨太の方針二〇〇三が閣議決定されましたけれども、ただ、その中では国庫補助負担金の廃止、縮減、さらには地方交付税のあり方について抽象的な表現にとどまっておりまして、また、基幹税を中心とした税源の移譲が明示されたのですけれども、具体的な移譲の規模であるとか、あるいは内容は示されず、依然として不透明な状況が続いているのが現在でございます。



◯馬場委員 本当にこの四年間で目に見える税源移譲がなされなかった、具体的なものも出てきていないという現状の中で、大変残念な思いがしております。東京都でも税制調査会を立ち上げて、いろいろシミュレーションをなさったということですが、今回の銀行税を初め、さまざまな自主財源の確保等も図ったわけですが、これも難しいという結果を今迎えております。
 そんな中で、この税源移譲については、私ども民主党ももちろん非常に関心を持っております。待っているだけでは実現されないということで、今回の第二次のプランでも、この税源移譲が実現されなかったということが宿題として結果的には残ったということになるというふうに思うんですが、そのことも踏まえてになると思いますが、この視点3で、結果的に、これからは、であれば国の仕組みを変えるしかないというふうに思われたのかなというふうに思うんですが。それでは、これから都として何らかの戦略を持って具体的なアクションを起こしていく必要があると思いますが、この戦略、また具体的なアクション等についておありになるか、お伺いいたします。



◯熊野主計部長 税源の移譲につきましては、現在の国の動きを見る限り、総務省、財務省、あるいは関係省庁の三すくみの権益争いになっておりまして、このままではいつまでたってもらちが明かないという感をぬぐい切れません。ただ、この間の地方の動きは以前とは異なってきておりまして、例えば全国知事会などの動きを見ましても、当初税源移譲はよこせと。ただ、国庫補助金は削減するな、地方交付税も削減するなというふうなことで、全く相矛盾する、いわば身勝手な主張を行っておりまして、都の考え方とは相入れない部分がございました。
 ただ、最近は、税源移譲がなされるならば、国庫補助金が削減されてもしようがないという主張が見られるようになりまして、徐々にではあるけれども、考え方が変わりつつあるというふうに受け取っております。また、これ以外にも岩手等六県の知事が、新しい日本をつくる国民会議というのを設置いたしまして、現在の政府の案の四兆円という規模だけじゃなくて、補助金削減を九兆一千億やっていいと。そのかわり、税源移譲は八兆二千億だというふうな主張もなされておりまして、こういった動きにも見られますように、少しずつ活発になってきているという状況にございます。
 したがいまして、都としても今まで以上に積極的に国に働きかけていく必要があると考えておりますけれども、全国知事会、あるいは八都県市、あるいは大都市間の連携ということで、大阪とかそういったところとの連携とか、あらゆるチャンネルを通じて、機会をとらえて国に対して強く働きかける必要があると思っております。



◯馬場委員 先ほどの質問でもそうでしたが、今回も、いつまでたってもらちが明かないというようなお言葉や、今後機をとらえて国に対して要求をしていくという決意的なお言葉もいただきましたが、東京が──東京だけではありませんが、地方主権を確立するというためには、自主、自立の財政運営が不可欠であるという、このことは、今お話がありましたように、地方でもかなり主体的に考えてこられている状況にあると。今回の中間のまとめでも、身の丈というふうにおっしゃっていますが、この自主、自立の財源をきちんとするということがなければ、結局、身の丈も決まってこないというように私は思っています。
 私ども民主党では、マニフェストの中で国から地方への税源移譲ということを強く主張しております。都も今回ももちろんですが、国の仕組みを変える大きな一点として、速やかな三位一体の地方税財政制度の改革というのを求めていらっしゃるということで、引き続き積極的に、具体的にお願いをしたいというふうに思っています。
 もう一点、先ほどご指摘をさせていただきました、今回初めて出てきた第二点目の、視点3のもう一つの柱という形になっておりますが、規制改革ということについて確認をさせていただきたいというふうに思います。
 前回の第一次プランに税源移譲は入っておりましたが、この規制改革は今回新たに出てきました。この規制改革というものを特に今回この中に含められた、そのことについてどういうお考えからでしょうか、まず伺います。



◯熊野主計部長 第二次財政再建推進プランでは、これまでの取り組みをステップアップいたしまして、さらなる財政構造改革に取り組んでいく必要があろうかと思っておりますが、そのためには、これまでの取り組みに加えまして、新たな発想で都政を変えていかなければいけないと思っております。
 今後、大胆に発想を転換していく中で、例えば国の規制、あるいは既存の制度が都の施策展開にとって障害となるようなことがもしあれば、そうした国の規制を前提と申しますか、所与のものとするのではなくて、国に対して制度改正あるいは規制緩和を働きかけて、真に都民ニーズに適合した施策を実現していく必要があろう。そうした中で、経費の削減を図っていくことが必要であろうというふうに考えております。



◯馬場委員 今ご答弁をいただきました。もしあればという表現であったと思いますが、私も前回のときにいただいたペーパーの、例えば、東京に活力をよみがえらせる先進的な施策展開、項目がディーゼル車規制、認証保育所、痴呆性高齢者グループホーム等たくさん出てきますが、こうしたものもいわゆる国基準でない、都が上乗せとか横出しとかしている、また、単独でしている認証保育もそうですが、こうしたものは、ある意味では規制の枠があってできないというようなものが多いのではないかなというふうに思っています。
 今例を出しました認証保育制度、これは前回の「途半ば」の中の二五ページに特に、国主導から脱却し、新たな事業手法を考案した例として認証保育所のことが出ております。今回、別の記事では、国は認可保育所等の補助についても検討するというような記事も読んだような気がいたします。こうした規制と、それから補助金の関係の中で、都は、ここに挙げられている認証保育所等に関して問題点というものをどんなふうに今回の規制緩和の中で考えていらっしゃるのか、この認可保育所について構造的な問題等があると考えていらっしゃるのかどうか伺います。



◯熊野主計部長 国は、地方全体を見なければいけないということからかもしれませんけれども、認可保育所につきましては地域の実情の違いなどをほとんど考慮しない、国が全国一律に定めた制度に基づくものになっておりまして、設置基準あるいはゼロ歳児保育などの面で、都民の保育ニーズには必ずしもこたえられないという問題がございます。
 さらに、全国一律のサービスに対しまして、全国一律の補助金が交付されるということでございますので、地域の創意工夫で効率的、効果的な事業展開を行う、そういったインセンティブも働きにくくなっているというふうな面もございます。
 今後、都が真の都民ニーズに的確にこたえていくためには、国が定める一律の基準に従った事業を行うだけでは不十分でございまして、認可保育所の例にございますように、国に対して制度の弾力的な運用について要求するとか、あるいは認証保育所という新しい都の制度を創設して、地域の実情に合った事業手法を導入して、的確なサービスの提供に努めていく、こういったことが必要であると考えております。



◯馬場委員 ほかの事業もそうですが、今は認証保育所を例にとりましたが、都市型のいろいろなさまざまな事業を含めて、都がこれまで、私も都の一員として都の状況に合わせたということは、結果的に先進的であり、先駆的な取り組みであり、またそれを財政を伴ってみずからやってきたという状況にあると思いますが、それができなくなってきている。そういう中で、都は内部努力等をするのももちろんだけれども、国の仕組みを変えなければならないということになっていったんだと思いますが、そういう意味では、まず一義的には都と国の関係で、都が国に対して積極的に変えるように働きかけていくという一つのパターンがあります。
 しかし、都が一義的に国に働きかけていくという形のほかに、地方全体を巻き込んで、地方全体として変わっていく取り組み、そうした取り組みが都だけではないんだよということも含めて、大きく国を変えていく方法になるのではないかなということも思っております。つまり、地域が一体となって国へ規制緩和を初めとするさまざまな事業を変えていく、そういうことになるのではないかというふうに思っていますが、その点についていかがでしょうか。



◯熊野主計部長 お話しのとおり、国の仕組みを変えていくということは、まず都みずからの施策を再構築して、真に都民ニーズに合ったものにしていく。そういった過程の中で、国に強く働きかけていくものでございまして、言葉をかえていえば、事業を所管している各局とともに、すべての施策について新しい発想で聖域のない見直しを行っていく中で、国に対して規制緩和あるいは制度改正を要求していくことだと思っています。
 ただ、ご指摘いただいたように国の反応が鈍いこともございまして、都だけの取り組みではなかなか国を変えていくことは容易ではございません。したがいまして、都の新しい取り組みをモデルといたしまして、他の自治体にも発信していくことが重要でございます。同時に、先ほど税源移譲のところで申し上げましたけれども、知事会とか関東知事会とか、あるいは八都県市とか、大都市間の連携とか、そういったあらゆるチャンネルを通じてお互いに連携を図りながら、国に対して粘り強く要求していくことが重要かと思っております。



◯馬場委員 今まで都は国へ要望していたものから、国に対する提案要求という、表現も含めてかなり強いものになってきていると思っています。そのことが今回この国の仕組みを変えるという大きな強い表現になってきたというふうに思っています。この国の仕組みを変えていく取り組みは、中間のまとめで示されているように、まず歳入面では、税源移譲を初めとした地方税財政制度の改革を実現すること、そして歳出面では、国が示す全国一律の施策を絶対視せずに、都がみずからの判断と責任において都民サービスを向上していくための施策を行っていくという、この両面の取り組みが必要であるというふうに私も思っております。
 ただ、この国の仕組みを変える、ここの表現もそうですが、いうことはやすし、行うはかたしということになると思うんですが、私からすると、今この中間のまとめで今回出てきた国の仕組みを変えるということは、知事を初めとする国を変えるというスローガンに終わらないために、具体的な取り組みをきちんとするということを今回の答申に入れて、中間のまとめからもっと具体的なものを盛り込んだ上で答申という形にぜひお願いしたいというふうに思っています。
 その意味で、局長にこの取り組みへの決意についてお伺いをいたします。



◯櫻井財務局長 お話しのように、国の仕組みを変えるということは、国主導から脱却しまして、地方、東京都がみずからの判断と責任に基づきまして、例えば税財政の運営やら、あるいは各種行政サービスの再構築、提供をしていくという取り組みを進めていくことでございます。そのためには、都の現状をよくよく踏まえまして、効果的、効率的な事業手法をみずから考案しまして、これまで行ってまいりました、例えば認証保育所やらディーゼル規制のように国に積極的に提案していく、こういう取り組みが必要だろうと思います。そういう意味で、国の全国一律的な、あるいは硬直的な仕組みを変えていく、そういう取り組みになるわけでございます。
 また、三位一体の改革のお話が出ましたけれども、この地方税財政制度の改革が行われまして、国のひもつきの補助金を減らし、各地方地方、東京都は東京都なりに、みずからの判断で自由に財源を確保し施策展開をしていく、こういうことがこれまでにも増して都民ニーズに機動的、柔軟に対応する上でも重要だろうということで、今後とも都議会の御支援をいただきながら、そういう働きかけと同時に、私ども財務局も各局の力をかりながら具体的な提案をしていきたい、このように考えております。



◯馬場委員 局長から決意をお聞きいたしました。東京が先んじて動くことで国を動かしたいという思いが私どももあるわけですが、今回の銀行税等も結果的には自主財源化を阻まれてしまった、外形標準課税、国の制度で取り上げられてしまったというような意見も聞いております。
 都が先んじて動くということは、これだけやはり国に対して大きく影響を及ぼすことだというふうに思います。そういう意味では、慎重にも慎重に、都全体が地域の影響も含め考えて、そして東京みずからが──身の丈というのはあいまいな表現で、余りよくわからない表現だというふうに私は思っていますので、答申までには身の丈という表現も本当は変えていただきたいな、つまり、もう少しわかりやすい表現でお願いしたいというふうに思っているんです。なぜかというと、じゃ、東京の身の丈って何だか、だれもによくわからないという、そんなふうに私は受け取っているんです。済みません、余計なことをいいましたが。
 そういう意味で、東京がやはり影響を与えるということを十分に踏まえた上で、今後のこの国の仕組みを変えることについても、ぜひ積極的な取り組みをお願いしたいというふうに思います。
 以上で質問を終わります。