平成15年 建設・住宅委員会

2003年11月18日

馬場裕子

一 高齢者の住宅の確保について

一 高齢者の住宅の確保について

◯馬場委員 高齢者の住宅の確保についてお伺いいたします。
 団塊の世代と呼ばれる第一次ベビーブーム世代が高齢期に達する二〇一五年には、四人に一人が六十五歳以上の高齢者となる本格的な高齢社会を迎えます。現在でも、年金や医療、介護等への関心が高いのはもちろんですが、住まい、住宅、将来にわたってどこに住み続けられるかというようなことは、特に高齢の方にとっては大きな関心があります。
 こうした高齢者向けの住宅対策として、この事務事業でも一番初めに書いてありますシルバーピア事業、そして二つ目には、高齢者向け優良賃貸住宅供給助成事業というのがあります。建設、改良への補助ということでございますが、そのほか、その後に書かれています事業についてこれからお尋ねをしたいと思います。
 都内の住宅の多くを占める民間賃貸住宅では、家主が、家賃の不払い、病気、事故等に対する不安感から高齢者の入居を敬遠する傾向にあり、高齢者の居住の安定が図れないという状況にあるのではないでしょうか。このために、先ほど二つ目にありました補助事業、ハード面としての住宅供給だけでなく、ソフト面からの対策も必要であるとして、高齢者が安心して入居できる施策を国において決められました。
 平成十三年四月制定の高齢者の居住の安定確保に関する法律というのができたわけですが、これに基づいて高齢者円滑入居賃貸住宅の登録制度というものが創設されました。高齢者の入居を敬遠しない住宅を家主が登録し、その登録簿を住宅を探している高齢者の閲覧に供するという制度でございます。さらに、家主が国の居住支援センターと基本約定を締結した登録住宅では滞納家賃の債務保証制度を利用できる。この二つ、大きな施策ができております。
 そこで、お伺いいたしますが、国の制度であります高齢者円滑入居賃貸住宅の登録の実績はどんなでしょうか。また、二つ目の施策である家賃債務保証制度が使える住宅の数と、実際にその制度を使って入居した高齢者の数はどんな状況でしょうか。



◯小林地域住宅部長 登録制度は平成十三年十月に開始したわけでございますが、登録された住宅の戸数は現在約六千戸でございます。このうち、家賃債務保証制度が使える住宅は約二千二百戸でございます。また、実際に高齢者が入居した戸数は、家主へのアンケート調査の結果によれば、平成十四年十二月現在で二百七十四戸でございまして、このうち、家賃債務保証制度を利用して入居した戸数は十七戸でございます。



◯馬場委員 今教えていただいた戸数は、国施策であるということだけじゃないんでしょうが、大変少ないというふうに受け取りました。国の施策は、このパンフレット等を読ませていただくと、借り主というより、空き家、空き室解消対策ではないのかなというふうに私は受け取りました。特に二つ目の家賃債務保証制度というのは、一番目の登録というのができたところでなければこの保証制度は使えない。使えない方の中で、結果的にこの二年間で使った方が、十七件だということですよね。
 何でこんなに少ないのかなというふうに今見て思っているんですが、月額家賃の三五%、保証期間は二年間ということです。借りる人がまず保証料を払うんですが、実際に家賃が保証されるのは、貸している貸し主に対して六カ月間保証がされる。保証料を払った借り主さんは、払ってもらったものに対して弁済をしなければならないというふうにきちんと注意書きがされています。
 どういう場合、こういうのを申し込むのかなと私も考えてみたんですが、普通は、自分が保証料を払ったら、一定の期間保証されたら、それは弁済しなくていいとか、そういう状況でなければ、家主さんが保証されるために借りる方が三五%を払ってこの保証制度に申し込むというようなことは余り考えられないのではないかなと私は受け取りました。
 こういう状況に実際あるわけですが、国のこうした保証制度を使う、使わないということも含めて、同じような制度を各区市等の自治体でつくっているところがあるというふうな話を聞きました。国制度のほかにこうした家賃保証を行う制度を持っているところはどんなところがあるでしょうか。



◯小林地域住宅部長 家賃の債務保証を行う制度は、新宿区、豊島区など七区で行われております。



◯馬場委員 新宿、豊島はこうした要望をする対象の方が多いところかなと受け取りました。
 国制度が十分であれば、独自で区がつくるということはあえて必要ないのではないかなというふうに私も思いますので、こうした国の制度が本当に──貸す方がなければ借りられないわけですから、貸し家、貸し室対策ということも必要だとは思いますが、この辺の国の今後の制度改正ということも含めて、都はさらに国に対する要望等を含めて検討をお願いしたいというふうに思っております。
 高齢者の入居が進まない理由としては、今お話ししたように、これを望む高齢者はどちらかというと嫌だという住宅が多いわけですが、もう一方で、高齢者は保証人を立てにくいというような状況があると思います。この保証の内容も、滞納家賃の保証というような、今お話しした金銭的な保証以外にも、高齢者の方の病気等への対応等も嫌だな、できないなという民間の貸し主さんが多いのではないかというふうに思っております。
 そこでお伺いしますが、国の制度を補完するものとして、都でも、あんしん入居制度というのを平成十三年度、国の制度と一緒に創設をしたというふうに聞いております。このあんしん入居制度というのは国の制度をどのように補完していらっしゃるのか、また、都としての実績がどんなふうなのか、お聞かせください。



◯小林地域住宅部長 家主が抱える不安のうち、家賃の滞納につきましては国の制度で解消されるとしても、入居者の病気などに対する不安は残るわけでございます。
 そこで、あんしん入居制度では、定期的な訪問、電話、緊急時や入退院時の支援を行う見守りサービス、それから亡くなられたときの葬儀の実施、残存家財の片づけの三つのメニューを用意してございます。高齢者がこのうち必要なものを選択して利用できる制度でございまして、これまで制度に関する都民からの相談は約三千四百件ありました。成約の件数としては、現在約百件となっております。成約の内容を見ますと、三つのメニューのすべてを選択するコースの契約が最も多く、約四割を占めている状況でございます。



◯馬場委員 この制度への問い合わせは三千四百件で、成約件数は百件ということです。
 こうした制度を有効に活用するためには、まず不動産業界、この業界の専門の方、それから家主の方の理解と協力というのが不可欠であるというふうに考えます。希望があった方が実際の契約等の中で不動産の仲介の方や家主さんの理解が得られず、実質成約件数が百件というところになっているのかなということも思わざるを得ませんので、この制度をさらに使っていただくために、どのようなPR、また普及活動をしていらっしゃるのか、伺います。



◯小林地域住宅部長 ホームページに制度内容を掲載するとともに、パンフレットを作成しまして、都や区市町村の窓口に配布してPRに努めております。
 また、直接の働きかけといたしまして、家主への説明会の開催や賃貸住宅の仲介管理を担う事業者団体の研修会などで制度の説明を行っているところでございます。



◯馬場委員 ホームページやパンフレットということなんですが、高齢の方がホームページ、決めてしまってはいけないんですが、自分が相談する資料として、どういう形であればいいのかというようなことも今後とも研究をいただきたいというふうに思いますし、また、業者等への説明というのもできるだけ十分にしていただきたいというふうに思っております。
 これは都の施策ですが、高齢者のこうした住まい、生活の問題ということであれば、それぞれの身近な区市が本来トータルに高齢者施策の中でやっていくということが一番身近な今現在の進め方だというふうに思います。
 都と国の制度ばらばらでなく、市区町村の担当の方が高齢者それぞれの状況に応じて制度をうまくコーディネートして、区市町村内の不動産等の業界の方、そして貸し主と連携してこうした制度を進めていくということが一番必要なところだというふうに思いますが、これら高齢者の住宅の確保のためには身近な区市町村との連携、このことを都としてどのように取り組んでいらっしゃるのか、伺います。



◯小林地域住宅部長 区市町村との連携につきましては、連絡協議会を設置し、情報の交換や制度運営についての検討協議を行っているところでございます。今後も、この連絡協議会を積極的に活用しながら、高齢者がより身近な区市町村の窓口で登録住宅やあんしん入居制度などについての情報の入手や円滑な相談ができるよう取り組んでまいります。



◯馬場委員 まず国の制度があり、都の制度があり、区市町村のそれぞれの制度があるという、これを使い分けるというのはかなり大変なことだというふうに思います。これは先に制度を考えるとそういうことになりますが、本来であれば、借り主さん、高齢者、つまり都民の側から考えれば、その人にとって何が一番、どの施策をどう組み合わせればいいのかということが的確でなければならない。
 つまり、本来は住民のために施策はあるわけですから、そういう意味では、それぞれそういう個人の情報を知り得ているのは一番身近な区市町村であるというふうに思います。そういう区市町村の施策の中で、基本的なさまざまにあるハードの面、そして特にソフトの面が、どういう人を対象に、どのくらいいらっしゃるのかというようなことも含めて実態を把握していくということがなければ、これを何年続けていっても実際役に立つ施策になっていかないのではないかなというふうに思っています。
 最初に述べましたように、国の施策は特に空き家、空き室対策の感がどうもありまして、一般の民間住宅と同じですから、二年で契約更新をしていかなければならない。どんどん年を加えていって、そうした問題が難しくなっていくのに対しての対策というのはここでは出てきていないわけです。
 それを考えると、住宅局さんとして、住宅の問題を考えるという中で、福祉的な要素といったらいいでしょうか、この施策も福祉局さんと協議をなされたのでは、そういう過程の中で出てきたものではないかなというふうに思いますが、実際にあんしん入居制度を委託といったらいいんでしょうか、この事業をやっていらっしゃるのも、財団法人東京都防災・建築まちづくりセンターというところがやっていらっしゃるということで、住宅局さんの事業というふうになっていると思いますが、これだけのソフトの面を充実させるということを考えますと、福祉局さん、また産業労働局さんでしょうか、そうした他の局とも十分に連携をとりながら東京としての施策が充実するように、また、区市との連携を十分とりながら、一人一人の高齢の方の安心の住まいの提供ということについて都としてきちんとした責任をとっていただけるよう強く要望して、私の質問を終わります。ありがとうございました。