平成16年 建設・住宅委員会

2004年3月17日

  馬場裕子


  一 住宅の賃貸借に係る紛争の防止に関する条例について

一 住宅の賃貸借に係る紛争の防止に関する条例について

◯馬場委員 私からも、付託議案第百二十四号、東京における住宅の賃貸借に係る紛争の防止に関する条例についてお尋ねをいたします。
 この条例は、今お話ありましたように、多くの都民、四割の都民の皆さんが民間賃貸住宅にお住まいでいらっしゃる、そうした中で最大の、三分の一を占めるトラブルの要因となっている敷金の精算などについて、退去時の通常損耗等の復旧は貸し主が行うことが基本とされていることなどの説明を、契約時点で宅地建物取引業者に義務づけることによって、トラブルの未然防止を図ろうとするものであると伺っております。
 この条例が広く宅建業界や都民に普及すれば、トラブル防止に大いに役に立つものと私も期待をしております。そうした立場から、何点かご質問させていただきます。
 まず、条例案の第二条では、「宅地建物取引業者は」とありまして、「説明しなければならない」というふうに規定をされております。それでは、宅建業者が仲介をしない場合の取引等もあるというふうに思いますが、そうした場合、この条例の対象になるのでしょうか、まずお伺いいたします。



◯安藤民間住宅部長 賃貸借を仲介する専門的な立場にあります宅地建物取引業者が、宅地建物取引業法によって重要事項説明義務を課されているということから、宅地建物取引業者に着目しまして、条例上の説明義務を課すものでございます。
 宅地建物取引業者を介さない賃貸取引は、説明の実効性が確保できないことなどから、条例の対象外としております。



◯馬場委員 この条例が宅建業者に義務づけているという条例である以上、その対象を明確にする必要があるということで、宅建取引業者が仲介をする取引に限定するということは、結果的にやむを得ないことというふうに思いますが、例えば小規模の、直接契約をしているところ、また、最近のインターネット等を通じた取引、こうしたものもふえてきておりますし、小規模のものでは、現実に宅建業者を仲介しない取引もあると思います。小規模のものかもしれませんが、こうしたものも、逆に小規模だからこそ近いという立場から考えると、紛争が起こりやすいということも考えられるのではないかと私は心配しております。
 その意味で、この紛争の未然防止の観点からは、すべての賃貸住宅にこの条例の趣旨を徹底することが重要だというふうに考えています。今後、この条例の対象とならない物件に対して、どのようにこの条例の趣旨を徹底していこうとされるのか、お伺いをいたします。



◯安藤民間住宅部長 宅地建物取引業者が仲介しない取引に対してどのように条例の趣旨を徹底していくかということでございますけれども、宅地建物取引業者が仲介しない賃貸取引におきましても、判例等で既に確立している基本的な考え方を十分に理解した上で契約が結ばれることが必要であると考えております。
 そのため、契約時の説明文書のひな形等を盛り込んだ東京都版のガイドラインを作成しまして、これを、都のホームページ等を活用し広く情報提供するなど、宅地建物取引業者が仲介しない賃貸契約においても、条例の趣旨が徹底されるよう努めてまいります。



◯馬場委員 お答えいただきましたように、宅建業者を介した取引が目的ではなく、賃貸すべての取引について、このことが借り主、貸し主に周知をされることが、紛争が起こらないということが目的だというふうに思いますので、その辺についてぜひ、きちんとした今後の対応ということをお願いしたいのですが、最初に述べられていますように、退去時の通常損耗の復旧は貸し主が行うことが基本であるという、まずこのことを一般の常識にすることが今回のこの条例の大きな目的であるというふうに私も思いますので、そのことを借り主だけでなく、すべての貸し主にきちんとご理解をいただくということが必要なのではないかと思っています。
 それで、宅建業者が契約の折に説明をするということになっているんですが、そういう意味では、借り主に説明をするということになっていますよね、この条例は。その意味からすると、借り主の立場を擁護する、借り主の立場に立ったトラブル防止法ということで、これは消費者保護ということも含めて大切なことだというふうに思うんですが、実際に紛争が起きているのは、預かった、敷金なり保証金なりの名称でありますが、こうしたものをきちんと精算ができない貸し主側に、大きくやはりこの原因があるというふうに思っています。
 そういう意味では、借り主に、あなたにはきちんと精算をされる権利がありますよということを説明すると同時に、貸し主に対して、きちんとそのことを担保できなければ紛争の解決にはならない。もっとうがっていえば、借り主にその権利をどんどん認めていくことは、さらに紛争を大きくするということにならなければいいなというふうに逆に思っているわけです。
 そうした中で、先ほどガイドラインの話もありました。敷金とか保証金とはどういうことなのか、そうした今まで慣例とか習慣という形で行ってきた敷金や保証金、こうしたものがどういう意味を持つものなのか、どういうふうに精算をされればいいのかというようなことを、これからの規則なりガイドラインなりで盛り込まれてくるというふうに思いますが、この辺の契約のあるべき姿というんでしょうか、こうしたものを盛り込んだものをつくることが真にトラブルの防止に有効であるというふうに思いますが、この辺どういうふうに考えていらっしゃるのか、もう一度確認をさせていただきます。



◯安藤民間住宅部長 判例等で既に確立されております基本的な考え方に基づく契約の姿を具体的に示すということは、トラブル防止のためにも有効だと考えております。したがいまして、今後作成する東京都版のガイドラインにおきまして、標準的な契約書の例を盛り込むなどし、貸し主、借り主双方に対して普及してまいります。



◯馬場委員 この条例が実効性を持つためにも、このガイドライン、また規則というところで、きちんとできるだけわかりやすいものを盛り込んでほしいということを重ねてお願いいたします。
 先ほどの三原委員の質問の中でのご答弁にもありましたが、契約ということが民民で行われる中で、モデルケースはあっても、お互いに契約上取り決めた場合にはその範囲に入らないというようなこともあるというふうに思います。
 先ほどの判例等はあるということをわかりながら、さらに、やはり貸し主と借り主との力関係の中でさまざまな、両者が合意をせざるを得ないような条件も含めて存在をし得るというふうに思います。そうしたところで、先ほども、宅建業者、業界の皆さんが、説明責任だけでなく、これからの紛争の防止また解決については、もう一歩踏み込んだ積極的なかかわりを持っていくということも先に考えて今回の条例をつくっていくべきだというふうに思っております。
 先ほど資料でもいただいた賃貸契約に係る相談内容でも、トラブルの中に、契約また報酬、費用等の問題もかなり目立つというふうに私も思います。この仲介の手数料のあり方の問題、それから、物件を貸し主が宅建業界の皆さんに全面委託をして管理運営に当たる、そうしたさまざまな状況が考えられるというふうに思います。
 そういう面に向けて、基本ラインだけでなく、国がつくっているガイドラインをさらに上回った、都民に対して使いやすいガイドラインをつくっていただきたいというふうに思いますが、つくった上でさらに普及ということ、つまり一人一人に、貸し主にも借り主にもこれが周知されるということが必要だというふうに思いますので、この周知について、普及についてどんなふうに考えていらっしゃるのか、伺います。



◯安藤民間住宅部長 東京都版のガイドラインは、退去時の損耗等の復旧に関する基本的な考え方をわかりやすく示そうというもので、これを広く普及させていくことは極めて重要と考えています。そのため、都のホームページ等を活用しまして、広く都民へ情報提供するとともに、区市町村、関係業界団体などと連携しまして、宅地建物取引業者や貸し主に対しても十分な普及を図ってまいります。



◯馬場委員 ぜひこうした解決に向けて、民民というお話がありますが、都民にとっては大きな問題であるというふうに思いますので、今回、住宅局でこうした取り組みをされるということについては、一定の評価はさせていただきたいというふうに思っています。ぜひ、そういう意味では、手本となるようなガイドラインをつくっていただきたいとお願いをしておきます。
 あとは質問ではないんですが、ほか二点にわたって、意見をきょうの委員会で申し述べさせていただきたいというふうに思います。
 都営住宅の目的外使用ということで、精神、知的、痴呆等のグループホームの場所として提供してほしいという、そのための目的外使用の制度ができております。そうした都民に対して、この目的は、今まで住んでいるところで住み続けるための一つの方法として、都営住宅も場所として提供してほしい、公営住宅法の中でそういう意味では目的外使用ということで認められたということを聞いております。これを使いやすいものにする──今、実績を伺いましたが、精神はゼロ、知的障害の方のグループホームが十件ほどでしょうか、そして痴呆性老人の、高齢者向けのグループホームはまだ実績がないというような状況でございます。
 こうした、今現実に地域の皆さんが望んでいる住宅として、近い、今まで住んでいたところ、都営住宅等でグループホームをつくりたいというようなことをぜひ受けとめていただきたいというふうに思っておりますので、このことを一つ要望させていただきます。
 このお話をさせていただいているときに、都が全般として持っている都全体の都営住宅というよりは、やはり区市が自分のところで、福祉事務所等との話し合いの中で住み続ける、いろいろな形でその公営住宅を使っていく、そうしたことを考えると、さらに区市への移管というものも、もっともっと進んでいかなければならないというふうに私も思っております。
 この二点について、今後とも、ぜひ十六年度予算の中で充実をさせていただきたいということをお願いして、私の質問を終わります。
 ありがとうございました。