平成16年 環境・建設委員会

2004年5月27日〜6月10日

馬場裕子


      一 環境アセスメント制度について
      

一 環境アセスメント制度について

◯馬場委員 このたび配布されました東京都環境白書二〇〇四を拝見させていただきました。これからの環境行政は、都市づくりへの環境の配慮がますます重要となっていくとの思いを強く感じました。
 実は、地元の課題を抱えておりますので、環境配慮を優先した都市づくりの推進には、特に興味を持ちましたので、本日はこの中から、環境アセスメント制度について具体的な例を含めながら質問、また意見をさせていただきたいと存じます。
 地球環境への取り組みの重要性は、極めて大きなものがありますが、同時に地域のことも重要なことであるということはいうまでもありません。特に、大規模な開発で絶え間なく変化する都市東京のようなところでは、環境の変化に目を光らすアセスメントは重要ではないでしょうか。
 私の地元品川区でも、今大規模開発に対するアセスメントが実施されております。都市高速道路中央環状品川線建設事業というものです。今この先の山手通りで工事を行っております。ごらんになった方も多いと思いますが、山手通りの地下に首都高速道路を通す工事ということで、新宿線に引き続き、渋谷から品川の八潮まで、この品川線、延びていくという地下道路の工事をしております。
 このことをめぐり、実は地元では反対の声が多く出ております。環境問題でももちろん、総論賛成、各論反対という状況が多く見られるわけですが、道路ネットワーク充実により、今回の道路の問題においては、交通の流れをスムーズにして渋滞をなくし、そのことで大気汚染などの環境対策を進めていく。私ももちろん地元の者も、このことに異を唱えているわけではございません。
 しかし、そのような事業を進めるに当たり、一部の人や地域に被害が集中することになってはいけないと思います。そのようなことが各論反対に結びつく、つまり総論賛成、各論反対の大きな問題になってくるというふうに思っています。アセスメントは、このような一部の人にも目を向けていくということを忘れてはならないというふうに思います。
 この工事のことで、地元五反田で都民の意見を聞く会というのが開催されました。二十人近くの地元の人々が審議会の委員の方々などを相手に意見を口述なさいました。特に、換気所のできる近辺の方々は多く参加され、本当に切実な意見を訴えたと聞いております。
 また、品川区を初め、周辺区からもこの事業が実施されたときの環境面の配慮を強く訴える意見が文書で提出されたと聞いております。今後どのようにそれらの意見が反映されていくのか、地元を初め、多くの人々が見守っている状況です。
 そこで、お尋ねします。このようにさまざまな意見が出されておりますが、これがどのように取り入れられていくのか、その点をまずお答えください。



◯百合都市地球環境部長 環境影響評価法に基づきますアセスメント手続における住民の意見でございますけれども、法におきましては、事業者が作成いたします環境影響評価方法書並びに環境影響評価準備書に対しまして、住民が事業者に意見を提出し、事業者はこれらの意見を踏まえた環境配慮を行うような形で、それを反映するという制度になってございます。
 さらに都におきましては、都条例に基づきますアセスメント手続と同様に、今お話、ちょっとございましたけれども、区市町村長の意見並びに都民の意見を聞く会の意見を東京都環境影響評価審議会や知事に提出いたしまして、審議会の審議に反映できる仕組みを条例で規定しているところでございます。
 今お話のございました中央環状品川線のアセス手続につきましては、ことし三月二十九日に都民の意見を聞く会を開催いたしまして、四月には品川区長を初め関係区長のご意見を提出いただき、五月に開催いたしました環境影響評価審議会におきまして、これらの意見を踏まえた審議を行い、四十件の指摘を意見書として取りまとめたところでございます。
 これらの意見につきましては、五月二十四日に知事の意見書として都市計画決定者に送付したところでございます。



◯馬場委員 ありがとうございました。住民が関与していくという、この制度の仕組みというか、関連がわかりました。
 そもそもこのアセスメントは、いただきましたパンフレットにもあるように、環境に与える影響を予測、評価し、良好な環境を保全するため未然防止対策をしていく、その際に、住民や関係自治体などの意見を聞き、審査に生かすということがきちんと記されております。
 しかし、今お聞きしたように、住民の関与が制度化されていても、住民の生活の中に浸透しているかといえば、どうも今回の件に関しても、そうではないように私は感じております。単なる説明をすればよいのではないかといった手続だけになってしまっていないでしょうか。
 特に、この五反田品川線については、工事期間も長く、広範囲にわたり、地下方式という、新しいというんでしょうか、工法を採用する品川線のような場合は、特に住民の不安は大きなものがあります。
 アセスメントは、事業に対する住民の毎日の生活の中での思いや、いたずらに大きくなる不安を解消すべく、環境面から見て事業を適切にしていくように導いていくことが重要なことだと思います。そのため、アセスメントが住民の中に浸透していく、アセスがその目的を達するために大きな力になると考えます。
 その点から、住民自身がこのアセスメントの情報に身近になる工夫が重要と思いますが、そのためには環境局はどのようなことをお考えでしょうか、お伺いいたします。



◯百合都市地球環境部長 現在、都の環境アセスメント制度におきましては、アセスメント図書の公示、縦覧ですとか都民意見の提出、また東京都環境影響評価審議会の傍聴などを通じまして、住民が関与できる機会を確保しているところでございます。
 また、アセス関連情報につきましては、環境局のホームページへの環境影響評価調査計画書の電子ファイルの掲載ですとか、各案件データの公開などを行っているところでございます。
 今後ともホームページをさらに充実させ、アセスメント制度のPRを進めるとともに、環境影響評価書などアセス図書が住民の皆さんにとってわかりやすい図書となるよう指導してまいります。



◯馬場委員 お取り組みの状況はわかりました。しかし、品川線にとどまらず、大規模な事業が実施される、そういう地元の住民は、その工事や施設が完成したときはもちろんですが、その工事期間が長くかかること等、環境面から見て困った状況に置かれるかもしれない、そんな不安を抱えて、この状況を見守っているわけです。
 なぜならば、今触れた品川線でも、特に五反田の換気所というふうに予定されている付近の住民は、この問題について近隣町会や商店街を挙げて、不安を抱えているがために学習会をし、検討会を行い、さまざまな疑問に対して真摯に取り組んでいるわけですが、そんな中で公聴会等、意見を提出しているという状況です。
 しかしながら、今回のこの道路の建設は、先ほども述べましたように地下形式であるということ、また今ある道路の下につくるというさまざまな問題の中から、この換気所の周辺住民に限って、その影響がしわ寄せとして来てしまう、このことが大変大きく懸念されております。
 私の方に寄せられた資料でも、これは新宿線でつくられたパンフレットなんですが、まず排気塔の大きさなんですが、四十五メートルの高さというような形で、こんなふうに新宿線はつくられるということで確定していると聞いています。
 場所も、新宿線で十六本でしょうか、建てられるというふうに聞きました。この換気塔、幅七メートル、長さ二十七メートル、高さ四十五メートルという状況です。
 これは新宿線の図ですが、これが今五反田で予定されているところは、この側面がそれぞれ同じぐらいの十四、五階の高さの住宅が建っている。その道路の真ん中にこういう換気塔ができるということで、今地域の皆さんは大変危惧しております。
 なぜこういうふうになるんだろうかということで、そのことも含めて皆さんが危惧している状況は、まずこの換気塔ができること、それから、この地下の出口、入り口ができること──インターチェンジというんでしょうか、そして工事期間が十年というふうに予定されている。
 せっかくこの地域の皆さんは、山手通りの道路拡幅に協力し、その結果、この沿道に住宅を建てて、いい環境をつくってきたところに、また今度の問題が起こってきたということで、新宿線と、またそれ以上に、ここは複合の被害を受けるのではないかということで、今とても心配をなさっています。
 この五反田、今までの山手通りの通行量だけでも、公害病というんでしょうか、発生している。それが、さらにこの交通量が集中する、こういう予定、これは、事業者の自分の都合でできたのではないかという、こうした不信感がぬぐえません。
 そういう意味で、今回このアセスに対して、地元も、そしてもちろん先ほどお話いただいたように、地域の品川区からも大変丁寧な意見が出されているということでありますし、またそれを受けて、局は、事業者に対しての、今回五月二十四日に意見書を出されたと伺っております。
 そうした状況の中で、五月二十四日の知事の意見でも、換気所からの窒素酸化物や粒子状物質の削減技術などでの最新技術の導入を検討することというような条件がつけられております。もちろん品川区からも、土壌脱硝方式など最新技術の導入を訴えております。
 現在、そして将来にわたって、こうした環境技術の進歩は、先ほどからの委員の皆さんの質疑の中でも、これからの技術革新というものを期待できる、そういう状況の中で、こうした最新技術の適用を初め、知事意見に盛り込まれている、こうしたことが実際に実行されるようなことを私は望んでおります。
 こうした五月二十四日に出された知事意見につきまして、もう一度地域住民の皆さんの不安を払拭するためにも、環境局の取り組みとしてご決意等を聞かせていただければありがたいというふうに思います。



◯百合都市地球環境部長 今お話の五月二十四日に知事意見書として都市計画決定権者に送付した意見、先ほど四十件と申しましたけれども、その中で特に大気汚染、それから騒音、振動につきましては、ご指摘の換気所にかかわる部分の意見として九件ほど、今改善等のお話がございましたけれども、指摘いたしました。
 今後、これらの意見を踏まえて事業者が実際に事業に入っていくわけですけれども、私どもはアセス条例の手続から申しますと、今後はこの工事の着手から完了までの間に、都条例のアセスメント手続に基づきます事後調査の実施など、事業者に対して適切な指導を行っていくというふうに考えております。



◯馬場委員 ありがとうございました。法では、事後のモニタリング等は必要に応じてというふうな、私どもにとっては不十分な条件なんですが、都では、そういう意味では、評価制度の中でもきちんと工事、事業後の調査手続の中にも、必要に応じて、審議会の意見を聞いた上で、報告書の内容を審査し、環境に著しい影響を及ぼすおそれがあると認めるときは、直ちに事業者や規制権者に対して必要な措置をとるよう要請するというふうに述べられております。
 今私が述べましたように、環境が……

 つづき(2004.06.10 : 平成16年環境・建設委員会)
◯馬場委員 前回の委員会におきまして、私の質疑中に鈴木委員長が急に体調を崩されたために委員会が終了となりました。本日、ごあいさつを受け一安心いたしましたが、委員長の一日も早いご回復を願っているものでございます。
 本日は、前回の質疑で終了しております部分を簡単にまとめて、意見を述べさせていただきたいと存じます。
 質疑は、環境配慮を優先した都市づくりの推進、特に環境アセスメント制度が都民からの期待どおりに機能するものになっているかについてでございました。
 まず、法アセスメント制度において、住民の意見がどのように反映されていくのか、その仕組みを伺いました。続いて、住民が意見を述べる機会はできていますが、住民にとって、環境アセスメントでの情報がより身近になるような工夫についてお伺いをしました。最後に、今アセス対象になっています高速品川線の課題を例に挙げて、都アセスの状況と今後の対応についてお伺いをいたしました。
 ご答弁はそれぞれ受けまして、情報については、ホームページ、またアセス図書が住民にとってわかりやすいものになるように指導していくというご答弁、それから、中央環状品川線のアセス手続については、平成十六年三月二十九日に都民の意見を聞く会を開催し、四月には品川区長を初め関係区長の意見を提出していただき、審議会の審議を踏まえ、五月二十四日に知事の意見書を都市計画決定権者に送付した、環境局として、今後は工事の着手から完了までの間、都条例のアセスメント手続に基づく事後調査を実施させ、事業者に対して適切な指導を行っていくということでありました。
 このときも述べましたが、この品川線は、五反田という地域に重複をしてさまざまな問題点があるということを指摘させていただきました。品川線の出入り口、そして、巨大な換気塔ができるということ、そして、さらに工期が長い、十年の予定である、そういうことで、この都民の声ということでは、こうした状況に最大の都の配慮が欲しいというようなご意見がたくさん出されました。
 これを受けて、品川区でも、都に対して、環境影響評価準備書に対する意見ということで、かなり丁寧に住民の意見を反映した回答を出されております。
 それを受けて、都も環境局として、アセスとして、都知事に対して、この品川線に対する意見というもの、意見書を出されております。この中を見させていただきますと、総括的事項のところでも、計画路線周辺への環境影響が極力少なくなるよう考慮すべき、また、住民に対しての十分な説明、大気汚染については、換気所関連についてということで、ア、イ、ウ、エと、四つ項目を出して、品川の意見、そして、都民の意見を反映するものになっているというふうに私は読ませていただきました。削減技術の適用について検討すること、それから、窒素酸化物及び粒子状物質の排出濃度を明らかにすることなどなど、必要なことはここに盛り込まれているというふうに私は読み取らせていただきました。
 都は十四年にこの条例改正をして、都が策定する計画に対し、みずからということですが、立案段階に行う計画段階環境アセスメント制度の導入と、それから事業の後に行う事後調査、これを十分に行うという、アセスとしては国に先駆けて都が初めてということでしょうか、つくられたということで、大変期待をしております。
 そして、今回の環境白書、それから、その前にいただきました東京の環境等にもきちんと触れられておりまして、実効性の確保と今後の課題というところで、これからの都の姿勢というものをきちんと出していらっしゃいます。
 つきましては、今アセス、ちょうどこの問題に都民から大変不信感を持たれて、まだ解決しておりませんこの品川線につきまして、地下構造であること、そして、地域が大変広いという状況、先ほど大西委員さんからもありましたが、広い地域だけでなく、特定の場所、先ほどは大和町交差点、それから相生の交差点がありました。そういう広い中で一部問題のある、そんな場所についても、丁寧な調査をし、住民とともに十分な解決策をとるべきだというふうに考えております。
 そういう意味で、この品川線でアセスの制度が十分効果を発揮されて、都民の不安が取り越し苦労であったというような状況になることを願って、私の意見とさせていただきます。