壱秒
いちびょう
とどかなかつた。
いちびょう
わたしの瞬きに
うつるはずだった。
あなたが逝き
このこが産まれ
すれちがい
手をつなぎかけ
指先の触れ
吐息
この足を踏み出す
大地を踏みしめる
はじめての
あきらめも
星の流れる
いのりも
わたしのゆび いちみりのびろ
なゆた
このいちびょうに
この壱秒に起こる全ての事
重なり合う地層
いくつもの壱秒がわたしを突き抜けて
届け。
届ける。
ｋｉｓｓ
「１秒長いらしいよ」
「ふぅん。・・・何が」
「1年の時間が」
「ああ、うるう秒ね」
「１秒で何ができんだろ」
「１秒っていえば”皿に残ったスパゲティを食べきるのに要する時間”ね」
ああ、あの心理テストの？」
「そう。望んでいる”理想のキス”の長さってやつね。我ながらびっくりするような短さ」
「１秒てどんなだよ」
「あんたに至っては”そもそも残さない”って答えだったじゃない」
「・・・色気ないな」
「・・・お互いにね」
「あるはずのない一秒・・・かぁ」
「ね?」
「ん?」
・
「・・・え？何？」
「一秒がどんなかって聞いたじゃない」
「・・・まぢですか。」
「まぢです」
「・・・やっぱ瞬間すぎてなんかわからなかったのでもう一度お願いできませんか」
「二度とお願いされません。あるはずのない１秒ですから」
「じゃあ」
「はい」
「あるはずの時間でお願いします。理想としては”そもそも残り物でなく”」
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