--忘れられた男の章--  (小さいザラさん家・おまけ)









────と、新婚さん夫婦が甘くほのぼのとした休日を十分に満喫している頃。


約一名、劇中途中よりすっぱりと忘れ去られ、尚かつ名前の登場さえ許されなかったその男は、会社の一角で同僚からお説教(というか罵倒)を食らっていた。





「なにぃ?!まだ電話してないだとぉーーー?!!」

イザークの頭に鬼の角が生えた。
………勿論比喩だが(というか実際に見えたというならそれは目の錯覚だ)。

「え、あ、いや……したにはしたんだよ、ちゃんと」

これは嘘じゃない。
ちゃあんと電話はした……………一応、だけど。

「じゃあなんでさっさと伝えなかった!!急ぎだと言われたんだろうが!!」
「あー……それは、その…ちょっと立て込んでたみたいだったんで……込み入った話は無理だったっつーか……」

実際には、あれは立て込んでたというか、なんというか。
こっちも何が何やらなのだ。
とりあえず応対に出た向こうの大切な大切なお姫様が何故か途中からパニックに陥っていたいうのは分かったが。
……しかし、あれは果たして俺のせいか?俺が悪かったのか?

「この大バカ者がっ!だったらお前が直接行って書類とディスク受け取ってこい、分かったな!!」
「げぇ?!俺が?今から行くの?」
「今日中に必要なんだから当たり前だろう!わかったならとっとと行ってこい!!」

……………最悪だ。

こっちだって休日返上で働いてやったんだから、帰宅くらいはなるべく早くと思っていたのに。
これじゃ本当に思っただけ、だ。
しかし、この状態のイザークに楯突くだけムダだというのは悲しいかな長年の経験から分かりきっている。
俺がこの際言えることはただひとつ。

「わ、分かりました………」

そう、これだけ………(涙)





突然電話を切られたあの後、当然俺はリダイアルした。
何度も何度も。
しかし何故かかからない。
アスランの携帯は電源が切られているのでかけようがないし。

今日は厄日か?
俺は何かに呪われてんのか?

真剣に心配になってきて、ああどうしたもんかと頭を悩ませていたら、ふと気がついた。

というか、確信した。

途中で電話を切ったのは絶対にヤツだ、と。
そして自宅の電話に細工して繋がらないようにしてるのも同じく。


「あの野郎……電話の相手がオレだって気付いてやがったな」


内容が会社からの呼び出しだってことにも気付いてやがったな。
絶対にそうだ、そうとしか思えない。
久々の嫁さんとの休日を取られまいとしたアスランの先手必勝法だったわけだ。


「くっそー………やられた」


それが分かったところで結局俺が奴の代わりに使いっ走りしなきゃいけないことは変わらない。
イザークに言ったって無駄だろうしなぁ……。
てか、なんでこういうことは俺にばっか降り掛かってくるんだ?


……やっぱ俺、呪われてんのか………?










「あ、もしもし○○神社ですか?私ディアッカ・エルスマンと申しまして……えっと、厄除けのお祓いお願いしたいんですけど……いえ、個人で。はい、そうです。ええとそれで日にちなんですが……────」













++END++





++後書き++

過去のweb拍手お礼展示品でしたが、番外なのでこっちに持ってきました。
新婚さん夫婦話のおまけ。奥さんにオレオレ詐欺の濡れ衣を着せられた上に、旦那さんには問答無用で電話を切られた哀れなお人は、実はこの人でした。え、バレバレ?(笑)。

written by  深織

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