外貨建て債券

尚、本情報の利用に関する責任は、当方では一切関知いたしません。


日本国内では超低金利が続くが、諸外国の金利はある程度まっとうである。

ここで外国の債券に魅力が出てくる。
外国債券は、基本的に外貨建て債券である。
正確に言えば、外国債券は、債務者が外国籍のものであり、
逆に、国内法人であっても、外貨建てで債券を発行することも可能ではある。

さて、では実際どのようなメリットとリスクがあるのだろうか。

たとえば、スウェーデン地方金融公社発行の2006年4月21日満期のニュージーランドドル建債券を見てみよう。

売買単位 5000NZドル
販売単価 100.00
クーポン 5.73%
期間   1年
となっている。

ここで、買い付け時の為替レートが、78.75だとしよう。(*2)
買い付け価格は 5000NZドル x 78.75 = 393750円となる。
393750円の支払いで、5000NZドルの債券を保有することになる。
これに対して、年2回の利払いが発生するので、
5000NZドル x 5.73% = 286.5NZドルがもらえるところだが、20%税引きされるので、229.2NZドルが残ることになる。 (*3)
一年後の償還時には、5229.2NZドルが償還する。
正確には、年2回の利払いなので、利回りには若干の変動要素がある。

償還時点で為替レートが同一であれば、
5229.2NZドル x 76.75 = 401341.1円が受け取れる。(*2)

償還額401341.1円 / 買い付け額393750円 = 1.019278984126984126984126984127であり、実質1.92%の利回りとなる。(*1)

さて、ここで問題なのは、為替レートである。
同一なら想定どおりだし、
円安NZドル高となれば、日本円換算での額面割れは生じないばかりでなく為替差益の恩恵が受けられる。
が、円高NZドル安となれば為替差損が生じ、日本円換算での戻りは減ってゆく。

国内の一年定期のレートは0.030%である。
仮に、393750円を一年定期で運用すれば、
393750円 x 0.030% x 0.8 = 94.5円しか利息がつかない。ただ同然である。
393750円 + 94.5円 = 393844.5円を割らなければもともとであるから、
393844.5円 / 5229.2NZドル = 75.316396389505086820163696167674 の為替レートがしきい値となる。
TTBが75.316以上であれば、差し引きおっけーである。

逆に、
393750円 / 5229.2NZドル = 75.298324791555113592901399831714 から、
TTBが75.29以下となれば、元本割れを生じてくる。

この時点での対策だが、償還時点に円貨換算して清算しなければならない場合は、為替差損が確定してしまう。
が、取扱商品によっては、外貨のまま預け置くこともできる。
たとえば、外貨建てMMFというものがある。
ここに一旦プールしておき、為替レートの回復を待つという対策もある。
考え方の問題だが、仮に評価損が発生していても、決算上の物であり、決済しなければ実損は生じないのである。
当初買い付けた5000NZドルが、元利合計で5229.2NZドルとなり増えているのである。
そしてまた、外貨建てMMF自体も、金融商品であるから、多少なりとも金利もつく。
更に、新しい外貨建て債券に、ここから買い付けることも可能なのである。
この場合、他の通貨に乗り換える場合は往復の手数料(NZドルTTB/他の通貨TTS)が発生するのだが、NZドル建てであれば、丸々額面が有効になる。

また、途中売却の場合、売却益は非課税という条項もある。
従って、償還前に、著しい円安NZドル高などの良い条件で売却できた場合、税法上のメリットも享受できるのである。


2006.3頃の例として、1ドル117円時点で

外貨建て債券に投資して1000ドルを4.72%で4年間運用した場合
4年間の利息 1000 x 4.72% x 4 = 188.8
税引き後 188.8 x 0.8 = 151.04
元利合計1151.04ドル

円建て債券に投資して117000円を0.8%で4年間運用した場合
4年間の利息 117000 x 0.8% x 4 = 3744円
税引き後 3744 x 0.8 = 2995円
元利合計119995円

119995円 / 1151.04ドル = 104.24920072282457603558520989714
すなわち、為替レートが104.25以上なら国内運用よりも実質有利といえる。
104.25 / 117 = 0.89102564102564102564102564102564%
約11%の為替変動に耐えられることを意味している。

更に
117000円 / 1151.04ドル = 101.6472060050041701417848206839
為替レートが101.65以上なら元本は保証されている。
101.65 / 117 = 0.86880341880341880341880341880342%
約13%の為替変動に耐えられることを意味している。

また、円安になっていれば、当初予定の金利を超えてのリターンが得られる。
更に、途中で市場で大幅な金利変動によって債券価値が上昇した場合には、売却により差益を得ることも出来る。


外国国債・公債
国や公共団体が発行するもので、基本的に信頼性は高いが、国によっては債務状況がさまざまである。


ハイイールド債券
償還リスクがやや高いものの高利率の債券。


エマージング債券
償還リスクが高いものの高利率の債券。
償還リスクが高い分、既発債の市場価格が安く、満額償還時の償還差益は大きい。


尚、言うまでもないことだが、債券の案件ごとに、取引条件は細かく異なり、また、税制などの扱いも異なる。
ここの試算も、細かい条件は簡略化している。
公示されている数値に嘘はなくとも、実際の手取りで比較すれば大差ない場合も少なくない。
また、為替変動や国際情勢により、先のことはわからない。
リスクを含んでいることを前提に考える必要がある。

(*1)
細かい話だが、外国口座管理の為に手数料3000円と消費税150円が必要なので、
(償還額401341.1円 - (手数料3000円 + 消費税150円))/ 買い付け額393750円 = 1.011278984126984126984126984127であり、実質1.12%となる。
尚、外国口座管理手数料は、債券残高に無関係なので、一度開設すれば残高が多いほど、手数料の負担按分は安くなる。

(*2)
買い付け時の為替レート78.75はTTSであり、償還時点で為替レート76.75はTTBで、片道1.0円の手数料を含んでいるため、双方には2.0円の差を持っている。
従って、この差分を超えるメリットがないと、そもそも往復で目減りする。

円相場/対米ドル(1988-2004)
Pict_0039.

各国政策金利の推移(2000-2006/1)
Pict_0412.

InfoCode: O3



戻る TOPに戻る

新規作成日:2005年4月14日/最終更新日:2005年12月24日