証券業務の基礎知識
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証券業務の基礎知識
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証券業務のあらまし
証券取引(株式、債券 売買)
投資信託
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証券取引(株式、債券 売買)
市場では、証券取引所において、証券取引(株式、債券 売買)が行われる。
一般の投資家は、証券会社へ、売買注文を出し、
証券会社が、証券取引所へ注文を回す。
証券取引所では、売買価格、数量の調整(斡旋ではない)をし、売買高が一致した場合「出来た」として、取り引きが成立する。
昔は全て立ち会い所で行われていたが、システム化が進み、遂に東京証券取引所では立ち会い所が廃止され、すべてコンピュータシステムによる取引となった。
実際の代金、証券の受渡日は、この日(約定日?)から起算して4営業日目。
通常、売る側は証券を、買う側は資金を、事前に証券会社へ預けている。
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投資信託
株式、債券への投資は、一般の投資家には、判断が難しい。
そこで、投資家からは、投資信託(ファンド)という形で資金を集め、
これを機関投資家が替わって、投資運用し、利益を追求する。
これが投資信託で、一般に、元本保証はされていない。
ヘッジファンド その他、みなこれである。
投資対象は、国債などの公社債から、外国債券、株式 など色々で、
ファンド毎に、その目論見書(計画書)が発行されている。
中国ファンドは、中期国債を中心に運用している。
リスクとしては、機関投資家の運用の裁量とともに、投資物件自体の債務履行状況も含まれる。
信託期間が2年〜5年程度に決定されているものと、長期で設定されているもの(オープンファンド)がある。
オープン投信(オープンファンド)は、ファンド自体を株式のように時価で売買出来る。
すなわち、途中から参加できるし、途中で簡単に抜けられる。
普通のファンドは、設定日からの投資となる。
満期償還前の現金化には、投資信託会社への買取り請求か、解約請求?ノ扱いとなる。
この時、当初期間(概ね2年)中は、信託財産留保金を差し引かれる。
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投資家
証券市場で投資し、利益を得ようと目論むものども
個人投資家
個人で投資している人たち。
貯金のつもりのおばちゃんたちから、専門知識を持つ投資家など、幅は広い。
機関投資家
投資信託会社など、組織として投資を行うもの。
一般個人に比べて、ノウハウ、情報力ともに優れている。
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株式
企業設立に当たり、出資者より出資を募り、資本金とし、
出資者に対して、株式を発行する。
額面
\50(大多数の企業), \500(電力の他は最近設立の企業に多い) \5,000 \50,000(NTT)など。
単位株
ひところ1株株主がはやって、企業経営や、証券取引に支障をきたした。
取り扱う単位として、1,000,100など、企業毎に取り決められている。
概ね、単位株 * 額面 = \50,000 となるように設定されている。
端株
単位株未満を端株と言う。
現在では、端株は、株券を発行せず、登録株数とされる。
端株は、証券取引所での売買は出来ないが、発行企業へ「買取り請求」することが出来る。
この場合、請求日の証券取引所における終値で買い取るなどの規定となっている。
尚、小額での買いやすさの観点から、端株でも買える方式もあるらしい。
一部上場、二部上場、店頭
証券取引所は、東京、大阪、名古屋 などにあり、それぞれ、一部、二部、店頭 のランクがある。
また、100%子会社や、当社を含め、非上場の株式会社も多い。
一部上場は、もっともランクが上で、二部上場がそれに続き、店頭は株式の市場取り引きに参入する残りの会社。
このランクは、証券取引所毎で、規定がある。
上場廃止
一度上場されると、少々経営が悪化しても、上場されっぱなしだが、さすがに「会社更正法適用」などとなると、「整理ポスト」へほうり込まれ、やがて整理が決まると、上場廃止される。
株式公開の意義
証券取引所での株式の取引は、株式を公開(不特定多数への売買)している企業にかぎられる。
企業は、その運営に対して莫大な資金を必要とするが、一般に借入金で賄っている。
が、借入金は金利を伴うので、企業にとっては負担となる。
株式として資金調達すると、資本金の増加となるので、金利は伴わない。
また、株価上昇の局面においては、時価での発行が可能で、額面との差額が、余剰資金として企業に収まる利点がある。
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社債
企業は、その運営に対して莫大な資金を必要とするので、一般に借入金で賄っている。
一つの手段として、銀行からの借り入れがあるが、融資条件などなかなか厳しく、金利も高い。
信用のある企業なら、社債を発行して、投資家より資金を集め、運営することが出来る。
期間や利率など、企業側でイニシアチブを取ることが出来るが、あくまで企業の実態との兼ね合いがある。
売れ残る=資金が集まらないでは 意味が無い。
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転換社債
企業発行の社債のひとつ。
一般の社債に準ずるが、設定条件に従い、株式と交換することも出来る。
例
発行時株価\1,000 転換価格\1100 額面\1,000,000 として
償還時株価\2,000 なら 額面\1,000,000/転換価格\1100 で909株取得でき、\1818,000の価値となっている。
償還時株価\500 なら 額面\1,000,000/転換価格\1100 で909株取得でき、\454500の価値しかないので、償還金\1,000,000を受け取れば良い。
転換オプションは、額面\1,000,000/転換価格\1100 で909株取得 は基本的に変わらない。
資本金変化の場合は調整が行われる。
市場価格が株価に連動する為、額面割れも発生する。
株価回復の場合は、連動して価格が上昇し、額面を上回る案件も多々ある。
以前は債券の品質を指さず、単に株価連動なので、額面割れの場合、償還差益を目論む金融商品としての価値が高かったが、昨今は債務能力を反映する場合も多く、リスクも高まっている。
が、株よりも残存率は高いので、初心者向けの投資対象とされる。
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公債
都道府県などが発行する債券。
公社債といった場合は、国債も含まれる。
国公債といった場合は、国債と公債。
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国債
中期国債、長期国債、割引国債 などが日本では発行されている。
海外でも、自国債を発行している。
発展途上国のそれは、リスクが大きい。
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中期国債
国が発行する債券
期間 2年、3年
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長期国債
国が発行する債券
期間 10年
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割引国債
国が発行する債券(割引債)
期間 5年
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政府保証債
国が保証し、他の団体が発行する債券
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割引金融債
長期信用銀行が発行する債券(割引債)
期間 5年
興銀(日本興行銀行)は ワリコー
長銀(日本長期信用銀行)は ワリチョー
日債銀(日本債券信用銀行)は ワリサイ
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割引債
通常の債券が、額面金額で発行され、金利を支払うのに対し、
金利分を差し引いた金額で販売され、償還時に額面が償還される。
例
額面\1,000,000 発行価格\970,000 など
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無担保債
通常、企業発行の債券には、担保が確保されていることが多い。
バブル期あたりからか、企業の信用力を背景に、無担保 なんていう乱暴な設定がある。
とは言え、債務不履行が発生すると、債券自体の信頼性が失われ、企業資金調達力に悪影響を及ぼす為、金融業界が肩代わりして穴埋めし、投資家を保護する政策がしばし行われた。
先ごろの「ヤオハン」に至っては、金融機関との折り合いも悪かったことから、債務不履行に向かっている。?
もっとも、どの企業も担保があったとしても、十分な担保価値があるかなどの問題も多い。
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外貨建て債券
日本人の投資家にとっては、為替リスクを、投資家が負うことになる。
日本の企業にとっては、海外での資金調達の場合に利用される。
この場合、為替リスクを、企業が負うことになる。
反面、海外投資家にとっては、為替リスクを「円」によらずに済む。
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円建て債券
国内債券のほとんどがこれ。
日本人の投資家にとっては、為替リスクを、負わずに済む。
日本の企業にとっては、海外での資金調達の場合に利用される。
この場合、為替リスクを、海外投資家が負うことになる。
反面、海外投資家にとっては、為替リスクを「円」によるので、敬遠される場合がある。
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為替リスク
国内では円、海外ではドル、ユーロなどの外貨だが、
外国為替(外為)の換算レートは、社会情勢により日々刻々と変化している。
\100/$1で $100買うと \10,000だが、
これが、
円高で\120/$1になると \12,000、
円安で\90/$1になると \9,000となる。
円高の場合、為替差益が生じ、
円安の場合、為替差損が生じる。
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TTS TTB
TTS:電信為替売価格
TTB:電信為替買価格
直物売買取引価格。
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直物、先物
一般の社会では、売買は 今:直物である。
証券取引も、多くは直物。
これに対して、先物取り引きがある。
現代の情勢から、数ヶ月先を見通し、想定価格で売買する。
当然、将来の推移は予想通りとは限らないから、リスクを伴う。
一般に、このリスクヘッジ分、価格は安く設定される。
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市場価格
株式、債券 ともに、日々価格は推移している。
発行サイドの状況(潰れかかった会社の価格は低落)、社会情勢による先行き(戦争が始まると軍需産業が伸びる)など、要素は多岐にわたる。
低金利時代の今日、金融情勢によるところも大きい。
投資家は、有望なところを買い集め、利ざやが(買い値と売り値の差益)乗ったところで売却して、差益を得る。
下がると見たら、早めに売る。
先見の明と、権謀術数がひしめき合う世界。
希に価格操作もある。
多額の資金を投入し、株価誘導し、上がったところで売り抜けると儲かる。が、更なる資本力が介入すると、予定道理の推移を見ず、資金投入の航過が見られない。そんなに甘くはない。
最終的には、証券取引所での売買価格が、市場価格となる。
これは、商品の価格とは異なり、刻々と変動する。
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初値、最高値、最安値、終値
初値
証券取引所における売買で、その日の最初の価格
最高値(さいたかね)
証券取引所における売買で、その日・その時点の最高の価格
最安値(さいやすね)
証券取引所における売買で、その日・その時点の最低の価格
終値(おわりね)
証券取引所における売買で、その日(または前場)の最後の価格
尚、一日のうち、前場(ぜんば 午前)、後場(ごば 午後) がある。
年初来最高値
証券取引所における売買で、毎年毎の、その日・その時点の最高の価格
年初来最安値
証券取引所における売買で、毎年毎の、その日・その時点の最低の価格
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指値、成行き、ストップ高、気配値
株式注文時の、価格指定方法。
指値(さしね)
言った値段での注文。
いくら以上とかの幅は指定できないが、
指値以上の売り値、指値以下の買い値 での調整はされるようである。
いくらを指定しても構わないが、寄り付かないと、絶対買えない。
成行き(なりゆき)
とにかく売買すると言う場合の指定。
出来る順位は高いが、乱高下(らんこうげ)する局面では、いくらで寄り付くか分からない。
ストップ高
急激な乱高下を抑制する為、証券取引所では、価格の変動に対し、制限幅を設けている。
従って、この範囲を超えた値を付けての取引は出来ない。
気配値(けはいね)
売買は成立していないが、買う(または売る)と言う価格の指標。
この価格で、売る(または買う)と言えば、概ね出来る。
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信用取引
株式売買は、現物と、信用取引がある。
信用取引は、現物を持たないものが、現物を借りて取引するもの。
空売り、空買い、がそれである。
現物取引には、売買代金の総額が必要だが、信用取引は総額の10%程度で出来るので、同じ資金なら、10倍の取引が出来、損益も10倍となる。当然リスクも10倍。
空売り
現物を持たないものが、現物を借りて売る信用取引。
借りたものは当然返さなければならないので、期日までに現物を買って、返す必要がある。
売った値段より、買い戻す時に下落していれば儲け。潰れる局面では有利。
空買り
現物を持たないものが、現物を買って貸す信用取引。
貸したものは当然返ってくるので、期日までに現物を売って、清算する必要がある。
現物を引き取っても良いが、差額を準備しなければならない。
買った値段より、清算する時に上昇していれば儲け。
信用取引残高の推移で、この動きを見ることが出来る。
清算時期には当然動きが見込まれ、機に乗ずるもの、反対取引で利ざやを稼ごうとする動きなど、権謀術数のうごめく世界となる。
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新発、既発
債券の状態を言う。
既発債など。
新発
新規発行のもの
発行価格は、発行時点の約定(やくじょう)による。
既発
既に発行され、市中に出回っているもの
価格は、市場(しじょう)価格となる。
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株式、債券 売買諸費用
単価 * 金額 の他に、売買手数料、有価証券取引税、などが必要。
売買益に対しても、課税される。
尚、債券に関しては、償還時点では、売買ではないので、通常の満期償還である。
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保護預かり
個人投資家は、株券などの現物の保管は煩わしく危険である。
債券の利金の受け取りも面倒だ。
証券会社では、保護預かりをしてくれる。
実質株主制度と相俟って、便利になっている。
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株主と名義
株式は、名義人に対して効力を有する。
売買は自由だが、株主としての権利は、名義人のものとされる。
名義変更
通常、株式を取得すると、株券を会社(一般には代行してもらう)へ提出し、名義変更する。
これにより、名実ともに株主となり、株式の配当などを受けることが出来る。
名義書き換え手続きは、幹事?信託銀行などが行っている。
通常、10日前後かかるので、この間売買は出来ない。
実質株主
保護預かりの利便や、売買手続の簡略化から、名義変更の手続きをすること無く、株主の扱いを受けることが出来る制度。
株主の特典
・株式配当
企業は、儲けを株式配当として、株主に分配する。
日本企業は、欧米に比べ還元率が低く、大半を資本準備金として、社内に留保している。
=その分潰れにくいが。
・株式の増資
資本準備金が溜まってくると、株式に組み込む。
この時、無償増資が行われる。
例として、無償増資により、資本金を1割増加させる場合、もち株数は、1割増える。
・株主優待
無料パス、割引券などが支給される。
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資本金の増減
第三者割り当て増資
資本金を増加させる手段として行われる。
通常、親会社、バックとなる企業、金融機関に対して行われる。
相当額の資本増加を伴うので、資本参加構成に変化を伴い、持ち株比率が変わることにより、経営体制も変化することが多い。
グループ傘下に入る場合など。
減資
企業成績が思わしくなく、財務諸表上の資本構成が現実と乖離している場合、行われる。
50%減資 の場合、資本金を半減して消却し、実質体力にあわせる。
100%減資
事実上倒産した企業でよく行われるが、要は、現時点の資本金をすべて放棄し、1からやり直すもので、その時点の株主にとっては、株が紙切れとなるもので、迷惑千万。
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格付
AAA A+ B ・・・ など、最近週刊誌を賑わしている。
企業の経営状況、先行きなどを客観的に見て、その安定度をランク付けし、投資家への参考としている。
しかし、粉飾決算とかがあると、どうしようもない。
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価格変動要素
株価の変動は、主に企業動向による。
社債の場合は、企業動向と、市中金利の動向に、影響される。
転換社債の場合は、企業動向と、市中金利の動向、更に株価に、影響される。
国公債の場合は、市中金利の動向に、影響される。
市中金利の動向
公定歩合の動向により、市中金利は変動する。
経済活性化の為に公定歩合を引き下げ、金利を下げることにより、資金利用が容易たらしめ、経済循環を活性化させる。
また、経済緊縮化の為に公定歩合を引き上げ、金利を上げることにより、資金利用を困難たらしめ、経済循環を抑制させる。
こうして、以前は日本経済を操縦してきたが、昨今では、こう簡単には行かない。
だいぶ前、3年定期の金利は年6%前後だった。
5年前でも年3%前後だった。そのころの社債は、概ね年2%前後だ。
しかし、今日、長期定期預金と言えども、年0.5%程度であろう。
\1,000,000を5年置いても、\1,025,000にしかならない。
が、当時の社債、\1,000,000なら、\1,100,000にもなる。
ここで、年0.5%程度で、5年後に\1,100,000にするには、\1,073,170が必要で、
すなわち、既発債券を、額面以上で買っても、利益は取れるわけだ。
この原理で、社債の市場価格が左右される。
新規作成日:2005年4月12日/最終更新日:2005年4月12日