川の海図「河川航行情報図」

海には海図があるが、川にはそういう資料はなかった。
川の場合、利用するものが限定されていたり、また、川自体が生き物のように、固定されずに絶えず変化しているという事情もあった。
もちろん、川ごとでの案内図程度はあったが、川の水深などを整理されたものはほとんどなかった。

平成になって、国土交通省関東運輸局において、川の海図の試みが始まった。
正式には「河川航行情報図」と呼ばれる。

本来の目的は、川の防災および活用であった。
管内の荒川は、首都圏の重要な河川であると共に、水害対策も重要な案件である。
そのため、長年にわたって、調査研究が進められ、多くの貴重なデータが集められた。

近年の広域防災体制においては、地元以外の応援が欠かせないものであり、応援部隊に対する情報支援は重要なポイントである。

川は災害対策のポイントであると共に、緊急時における、交通ルートとして活用できる側面がある。
すなわち、条件がそろえば、海から直接内陸部への交通路が確保できるのである。
そのために有効なのが現場の地図である。
古来、道路網が未発達の時代は、河川が重要な交通路であった。
災害により道路が寸断された場合、天然の交通ルートは重要なものである。

ということから、荒川の「川の海図」が作られる運びとなった。

もちろん、全国初の試みであり、多くの点を試行錯誤している。
海図は、国際規格に準じて、海上保安庁交通部が作成しているが、川については統一された規格はない。
陸側から見た規格と、海から見た海図としての規格の違いなど、課題も多かった。

今回、ようやく試行版として公開され、試験運用の結果を踏まえて、正式化される見込みである。

もちろん、全国の河川について、同様のものが作成されることは、費用対効果の面から考えられないが、防災拠点となる河川を中心に、広まってゆくと思われる。

図面には、船舶航行のための「海図」の機能として、水深などが海図に準じて記載されているほか、護岸の情報、周辺陸路の地図もあわせて掲載されている。

海図の場合、各海域ごとで1枚となっているが、1つの河川を一枚に収めた場合、個々の部分の情報が小さくなるため、河川の全長をいくつかのパートに分けた形としている。
従って、横長の面に対して、上流〜下流を表示しているため、海図のように「北が上」となってはいないので、コンパス表示により確認する必要がある。

また、元来が、防災を意識したものであり、机上での利用が多いことから、海図並みの大きさとなっているわけだが、狭い船舶や、小型のボートでの利用を考えた場合、冊子程度の大きさのほうが使いやすいことはいうまでもない。

荒川羅針盤 記者発表・ニュース
全国で初「川の海図」を荒川で作成
http://www.ara.or.jp/arage/news/040129.html
「荒川航行情報図」のご案内
http://www.ara.or.jp/arage/news/shiryo040129/s1.html


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新規作成日:2004年2月6日/最終更新日:2004年2月6日