民間探査船「大陸棚」

希少な鉱物資源が眠っている大陸棚の地殻を調べるため、沖縄県・大東諸島に向かう民間探査船「大陸棚」(約2500トン、40人乗り組み)の出港式が5月26日、東京・晴海埠頭で行われた。
同船はいったん横浜に寄った後、5月28日に大東諸島へ出発した。

国連海洋法条約に基づき、条件によっては200カイリを超える海域も、天然資源を探査し開発できる大陸棚として画定される。
これまで海上保安庁では大型測量船2隻(HL01昭洋、HL02拓洋)で調べていた。
が、その調査項目や範囲の増大により、従来の体制では条約の期限までに調査が完了せず、わが国の権利として主張することが危ぶまれていた。
そのため、国を挙げての対策が講じられ、今回の調査では初めて民間船を起用、官民一体での作業が本格化する。
物理探査船「大陸棚」は、大陸棚画定に必要とされる様々な調査のうち、音波を使用して海底下の地盤の性質を探る「屈折法探査」と「反射法探査」を実施する能カを備えている。

正式な業務名称は、平成16年度第T期精密地殻構造調査作業。
調査は大東諸島周辺で約40日。
エアガンで圧縮空気を海底に送り、地殻を伝わり跳ね返ってくる波をとらえ、地殻の構造をとらえる方法がとられる。
主として地震計(OBM)の設置回収で、船団を組んで活動している。


民間探査船「大陸棚」
船籍港 東京港
総トン数 2,491t
全長 64.5m
幅 14.0m
喫水 7.5m
航行区域資格 近海
主機 Watsia Wichmann 3000kW(約4,100PS)
推進器 可変ビッチプロペラx1
バウスラスターx1
航海速度 13.0knots
航続距離 112,000マイル
航続日数 38日(作業時)
乗船定員 40人
音波探査装置 SerceI社製探鉱機、ストリーマーケーブル、Bolt社製工アガンシステム、LMF社製コンプレッサー

日本大陸棚調査株式会社
所管は海上保安庁海洋情報部海洋調査課大陸棚調査室


ストリーマーケーブル
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日本大陸棚調査株式会社
日本周辺の海底資源の採掘権拡大を狙った政府の大陸棚調査の実施を受け、その受け皿となる日本経団連主導の民間会社が2004年2月3日、設立された。
国連が定める2009年5月の期限内まで調査を間に合わせるため、官民一体による調査体制がいよいよ動き出した。
新会社「日本大陸棚調査」(東京都千代田区、TEL03-5205-2621)は、資本金1億円で、石油資源開発と新日本製鉄が各30%、鹿島と大成建設が各15%、五洋建設が10%をそれぞれ出資。社長は鈴木啓之・石油資源開発顧問が就任した。
沿岸国に海底資源の採掘権が無条件で認められる海岸線から200カイリ(約370km)までの大陸棚の外でも、地形・地質的に地続きであることが国連に証明できれば同350カイリ(約650km)まで延長可能なことに対応。政府はまず2004年度予算で総額104億円の調査費を計上し、このうち海上保安庁が手がける音波探査など計54億円分の調査の一部を新会社で請け負う。
同社によると、調査の結果次第では日本列島の約1.7倍の約65万平方メートルが新たに大陸棚として認められる可能性もある。域内には推定でコバルトやマンガンなどの鉱物資源、天然ガスなどの埋蔵も見込まれ、金額にして数10兆円との試算もある。ただし、調査結果の提出が間に合わなければ無効となってしまうため、重要課題とされていた。
また、調査資料提出後も厳しい国連の審査を通過するには費用が1000億円以上かかるともみられ、政府は調査に民間の力を最大限活用するため、日本経団連に協力を要請していた。


大陸棚の定義(国連海洋法条約第76条) (概要)
沿岸国の大陸棚とは、当該沿岸国の領海を超える海面下の区域の海底及びその下であってその領土の自然の延長をたどって大陸縁辺部の外縁に至るまてのもの又は、大陸縁辺部の外縁が領海の幅を測定するための基線から200海里の距離まで延びていない場合には、当該沿岸国の領海を超える海面下の区域の海底及びその下であって当該基線から200海里までのものをいう。


新規作成日:2004年7月5日/最終更新日:2004年8月18日