動力船の歴史



「蒸気船」の登場

18世紀に蒸気機関が発明されると、多くの人たちがそれを船の動力として使うことを考えました。はじめはなかなか成功しませんでしたが、やがて1786年アメリカで、船体の両側や船尾にとりつけた、水かきのある車輪をまわして走る蒸気船が生まれました。スクリューではなく、水車を船にとりつけたような形であったため、「外輪船」と呼ばれています。
川船を動かすのに初めて蒸気を利用したのは、アメリカの発明家ジョン・フィッチです。フィッチの初期の試験用の川船には12のオールが垂直にとりつけられていて、それが蒸気機関で前後に動く仕組みになっていました。後に造られたモデルはデラウエア川で船客用に使用されましたが、数ヵ月後にその事業は失敗してしまいました。
 蒸気船が実用的な乗り物になったのは1807年のことです。アメリカのロバート・フルトンが、ハドソン川でクラーモント号(外輪船)を走らせたのが最初です。
初期の蒸気船は燃料をたくさん使うわりには力がなく、大きな川や運河でだけ用いられていました。外輪船の蒸気船はその後あまり発達せず、スクリューを推進器に利用する船が主役をしめるようになりますが、現在も、アラスカの川などでは観光用として外輪船が活躍しています。

汽船

蒸気船の登場によって、機関を動力とする船を、手こぎ船や帆船に対して「汽船」と呼ぶようになりました。汽船の誕生は、船の歴史をかざる一大革命で、これによって船は、「より速く、より大きく」という時代に突入したのです。また、動力も、蒸気機関よりさらにすぐれた蒸気タービン、ガスタービン、ディーゼル機関といったものが利用されていくようになります。「汽船」という言葉も、本来は蒸気を動力とする船のことですが、ガスタービンやディーゼル機関などの内燃機関船に対しても使われています。


「シリウス号」蒸気の力だけで大西洋横断に成功

1819年にアメリカのサバンナ号が蒸気船の大西洋横断に成功しましたが、蒸気機関を使ったのは短い時間で、航海のほとんどは帆走でした。
蒸気の力だけで大西洋を完全に渡った初めての船はシリウス号(アイルランド)でした。1838年4月4日にアイルランドのコークを出発したシリウス号は18日と10時間の航海を終えてニューヨークに到着しました。航海を終える前にほとんどの石炭を使いつくしてしまい、残りはキャビンの家具、あまった帆げた、そして1本のマストを燃やして蒸気をおこし続けたということです。
同年、「グレート・ウェスタン号」(蒸気船)が、太平洋を初の定期運行で結ぶ。

シリアス号
Dcim1998/DSC_6392. Dcim1998/DSC_6418. Dcim1998/DSC_6473. Dcim1999/DSC_6496. Dcim1999/DSC_6516.

木船から「鉄船」へ

丸太船の時代から何千年ものあいだ、船は木で造られてきました。蒸気機関で走るようになっても、木の船でした。しかし、大きな船を造ろうとすると木では限度があります。
製鉄技術が進歩してくると、小型の鉄船があらわれ、しだいに大型の船も鉄で造られるようになりました。鉄は薄くのばして使えるので、木で造るよりもかえって軽く、丈夫にしかも安く造ることができたのでした。
1843年にイギリスの造船家ブルネルによってつくられたグレート・ブリテン号は大型船として初めての鉄船で、外輪のかわりに、現在、船の主力の推進器となっている「スクリュー・プロペラ」を用いたことでも有名です。

装甲艦登場

1860年には、鉄だけで造られた初の軍艦が登場します。イギリスの「ウォリア号」という名で、40門の大砲を備え、蒸気を動力としていましたが、同時に帆で航行するための装備も備えていました。敵船の大砲の攻撃に備え、ウォリア号の船体は厚さ11cmの鉄板で装甲されていました。

鉄船から「鋼船」へ

ジーメンス法というより質の高い鋼鉄を製造する新たな方法の開発によって、船は鋼鉄で造られるようになりました。鋼鉄の板は同じ強度の鉄板よりも軽く、薄くすることができます。鋼鉄だけで建造された初の貨物船は1881年イギリスのセルビア号という船でした。この船は乗客をのせることもあったので船内の公共スペースに電灯をつけた最初の船でもありました。


蒸気タービン高速船の登場

汽船を動かす機関として、それまでの蒸気機関よりずっと力の強い蒸気タービンやディーゼル機関が発明され、大型船や高速船に用いられるようになりました。1897年イギリスのチャールズ・パーソンズのタービニア号が蒸気タービンと呼ばれる特別なエンジンのおかげで34.5ノットという驚くべきスピードを記録。通常の蒸気エンジンより軽量のタービンは蒸気の噴射によって、プロペラ・シャフトにつけられた羽を回転させました。

タービニア 模型
Dcim1869/DSC_7665.

海運旅客競争が過熱。モーリタニア号の活躍

モーリタニア号 最高馬力7500PS、最高速度26ノット。北大西洋を最速でわたった船に贈られるブルーリボンを22年間(1906年〜1929年)保持していた。
このころ海運旅客会社は、現在の航空会社同様、激しく競い合っていました。そんななか、ピストンエンジンをやめタービンエンジンにしたイギリスのキューナード社の「モーリタニア号」は高速を誇る太平洋航路の花形客船として活躍していました

モレタニア 模型
Dcim1869/DSC_7666.


ディーゼル・エンジンで動く船の登場

1910年オランダ、はじめてディーゼル・エンジンを搭載したオイルタンカー「フルカヌス号」
船の燃料が石炭から石油へ変わり始めました。まず、石炭のボイラーが石油用に変わり、ディーゼル・エンジンの発明は、造船技師たちに新しい動力源を提供しました。ディーゼルは、燃料消費がタービンの半分で済んだのです。現在、貨物船や客船で用いられる代表的な主機関はディーゼルエンジンです。


「原子力船」の登場

1959年、原子炉を動力とする初の商船がアメリカで誕生しました。「サバンナ」号と名付けられたその船は、3年半もの間、燃料を補給する必要がありませんでした。原子炉は原子核を分裂させることで熱を発生させ、その熱によって生み出された蒸気が、タービンの動力となります。しかし原子力商船は建造費や管理費が非常に高くつくのでほんの数隻しかつくられませんでした。

むつ模型
Dcim1869/DSC_7647.


世界最初の省エネ型の帆船

1980年代になって燃料費が高くなると再び帆船が使われるようになりました。つまり、燃料を節約するため自然風力エネルギーを利用しようというものです。世界初の省エネ帆走商船として誕生した日本の「新愛徳丸」は、2つの帆をつけることで燃料消費量を10%も減らすことに成功。帆が張られるとそれに応じてコンピュータがディーゼルエンジンのパワーを下げていくというものでした


参考
原子力船
舶用機関
蒸気タービン



戻る TOPに戻る

新規作成日:2002年2月6日/最終更新日:2002年2月6日