警察の機動隊

機動隊のあゆみ

機動隊の沿革
戦後の混乱期における集団犯罪、労使紛争等の続発に伴い、これに対処するため機動性をもった集団警備部隊として、昭和23年5月25日、警視庁予備隊が創設されました。
その後、組織機構の改革に伴い幾多の変遷を経たのち、昭和32年4月1日、警視庁機動隊と改称され、第一から第五機動隊が設置されました。
各県警でも、これに準じて、所轄の地域を越えた警備任務に当たる為、機動隊を持っています。

任務等
機動隊は、従来、治安警備、災害警備等を主任務として活動してきましたが、警察を取り巻く社会・治安情勢が著しく変化していることなどから、その任務に国際組織犯罪対策などの市民に身近な治安問題を加え、新た准任務を遂行していくのため多角的運用部隊を編成し、各種犯罪の防圧・検挙活動や交通指導取締り等に積極的に従事しているほか、専門的技能を有す山岳レンジヤー部隊、機動救助部隊、水難救助部隊による救出救助活動や爆発物処理・化学防護部隊による爆発物の処理等、広範囲にわたる地域の治安維持活動にあたっています。


機動隊の種類

・本機:(本部)機動隊
「機動隊設置運用基準要綱」に基づいて設置されている、常設の警備部隊。
全国の都道府県警察本部の警備部に所属しており、警備実施の中核として活躍しており、「基幹部隊」と呼ばれている。
一般に、1個しか持たないので、第1機動隊である。
警視庁は第1〜第9、特車が本機に相当する。
人員約9700名
警視庁の機動隊は全国の半分近い約4000名もの人員を抱え練度も高く、大警備実施に際しての応援派遣で東奔西走、文字通り、治安維持の尖兵という感がある。

・管機:管区機動隊
管区機動隊は、各県警(警視庁と北海道警を除く)の警察官(主に地域課の警察官)を警察庁の各管区警察局に派遣して編成される。
人員約4200名
管区機動隊の指揮は、管区警察局から応援を受けた県警が執ることになっている。
北海道には管区制が導入されていないため、北海道警察警備隊という部隊が特別に設けられており、管機と同じ扱いを受けている。
東京都(警視庁)も管区制が導入されていないため、管機に相当する部隊はないが、本機がその任務に相応している。

・2機:第2機動隊(特機:特別機動隊、方機:方面機動隊)
人員約1万5700名
各警察署から指名された警部補、巡査部長、巡査が、訓練や大規模な警備実施のときに召集されて編成される部隊である。
ただし、隊長は専任隊長で、訓練や実際の警備実施のときの指揮を担当し、通常は、隊員が所属している警察署との連絡事務などを行っている。
一般に、警察本部では本機を1個しか持たないので、第2機動隊であるが、本機が複数ある場合、そちらを第2機動隊、第3機動隊と呼ぶので、臨時編制の方を、特別機動隊と呼ぶ。
埼玉県警の場合、特機、方機が並存するが、特機は機動隊経験者で編制され、方機は所轄から編制されている。


編制

実際の部隊編成は、各県自治体によって異なるが、「警備実施要則」にて記述がなされている。
分隊は、隊員10名と指揮官でこれを編成する。
小隊は、3個分隊でこれを編成する。
中隊は、3個小隊でこれを編成する。
大隊は、3個中隊でこれを編成する。
連隊は、3個大隊でこれを編成する。


管区機動隊

●編成
18個大隊(38個中隊)

東北管機 870人
関東管機 1000人
近畿管機 1000人
中部管機 670人
中国管機 220人
四国管機 220人
九州管機 440人
管区機動隊に準じて北海道警察警備隊220人

●面付きヘルメットの記号
後頭部、階級表示(白線)の上部の赤色ダイヤマークが関東管区機動隊。
側頭部の2桁の数字が大隊・中隊。
2号垂れ(後頭部の防石用カバー)の数字が小隊、分隊を示している。

●隊名の呼称
「警備実施に関する訓令」
昭和46年2月15日京都府警察本部訓令第4号 第13条 部隊の呼称
一般部隊の呼称は次の各号によるものとする。但し必要が ある場合は、署名または各部隊の長の姓を冠して呼称することが出来る。

管外に派遣された場合における呼称は前項に準ずるものとする。ただし、派遣先において定められた呼称がある場合は、それによるものとする。

関東管機では、関東域内に派遣される場合においては小隊名に至るまで、建制に従った名称(○大隊○中隊・・)によらず、各部隊長の姓を冠して呼称することが多かったらしい。

成田の東峰十字路で何百人もの過激派に襲撃された神奈川県警が主力の関東管機の大隊の名前が「堀田大隊」であった。
この当時、神奈川県は1個連隊を派遣しており、1−3大隊までがあった。当時の成田は、域外派遣部隊が多く、第1大隊といっても、(例:神奈川連隊第1大隊、警視庁第2機動隊第1大隊(基幹中隊、特機混成の場合)、千葉第2機動隊第1大隊等の多くの「第1大隊」が存在するため、警備本部における指揮の混乱を避けるために名称で呼んだ。

●福岡県警2機は78年3・26の際、ゲートを突破された罰として1年間居残りさせられたらしい。

管区機動隊の連隊
1連隊 北海道警察警備隊
2連隊 東北管区機動隊
3連隊 関東管区機動隊
4連隊 中部管区機動隊
5連隊 近畿管区機動隊
6連隊 中国管区機動隊
7連隊 四国管区機動隊
8連隊 九州管区機動隊
9連隊 新東京国際空港警備隊

9321といったら、空警隊(9連隊)3空機(大隊)2中隊1小隊という意味。
管機によってはこの連隊番号を出動服に付けているところもあります。
師団という言い方はないようです。




管機と特機の隊員の選任
特機(機動隊が複数編成されている都府県)および第2機動隊(本機1個隊の道府県でこう呼ばれる)は、機動隊経験者、若手の警察官によって構成されているようです。
警視庁等の大規模な機動隊を有する警察本部では、経験者を中心に特別機動隊を編成し、さらに外勤警官を主体に方面機動隊(各方面本部毎)に編成しています。そのため、基幹中隊、特機、方機という大きな警備力になっているようです。
機動隊の規模が小さい警察本部では、経験者、外勤警察官を主に、第2機動隊を編成しています。第2機動隊は各警察本部の実状に応じて、1個中隊から数個大隊が編成されています。さらに、警察学校生徒等による第3機動隊を編成するところもあるようです。
管区機動隊は、経験(本機、空港警備隊等)と年齢が基準のようです。また特別警ら隊、直轄警ら隊の隊員が編入されているようです。

第2機動隊(方面機動隊)は外勤警察官によって構成されるため、その都度、幹部が異なっていたりするようで、また「中年部隊」化している部隊も少なくなく、管機、本機に対して警備力が低いともいわれます。平たく言えば、その辺のお巡りさんを集めて編成しているもので、「警備は本来の仕事ではない」と考える人もいるようです。
そのため、地方の第2機動隊は、域外に派遣されることも少なく、管区機動隊は、大規模な警備、成田闘争等にも派遣されています。
大規模事案における部隊配置状況を見ると上層部が各部隊の能力をどう評価しているかがよくわかると思います。

管区機動隊の訓練
いわゆる警備実施の訓練を1ヶ月間延々と行う。管区機動隊は通常各県個別で訓練しているが、年に2回は連隊合同で警備実施の訓練を行います。
防石ヘル、小手、鉄板チョッキ、タレ、すねあて、大楯の完着装備で運動場を1時間延々と走ったり、対向(左翼・右翼役)と実施(機動隊)に別れて実戦と同じように火炎瓶や投石の中検挙訓練を行ったりします。
また、新隊員はボロ雑巾のようにしごかれます。走るのに少しでも遅れたら、旧隊員達の足蹴りや小手叩き、楯叩きが容赦なく行われます。


地方の機動隊

地方の機動隊の人数
神奈川 520名(2個機動隊)
福岡 350名(2個機動隊)
愛知 200名
埼玉 342名
北海道 180名(3個小隊)
兵庫 180名
京都 180名
大阪 1200名(3個機動隊)
長崎 38名
奈良 25名
長野 25名
千葉 900名(3個機動隊、空港隊を除く。以前は1隊2個中隊編成で、必要時に特機で増強した)

北海道
第二機動隊(特別機動隊)が2500名程度
管区機動隊に相当する北海道警察警備隊が220名程度

奈良
第2機動隊が120名
管区機動隊が25名
方面別(県内を3方面に分けて部隊を編制)機動隊80名程度


機動隊のマーク

北海道 黄色地の北海道型の中にヒグマが1頭
茨城  ばら(梅?)
埼玉  シラコバト
p2300026.
警視庁 ヘルメットは黄色で「1〜特」の文字。中隊表示等、細部は各機動隊で異なる。警視庁は1機〜9機、特車でそれぞれのマークを持っている。
1機=なにかの鳥。若干丸みを帯びたデザイン。胸に桜。
2〜9機=幾何学的なデザイン。
8機=87年頃まで8の数字に引っかけて蜂。その後、鳩除けの目玉マーク(マンションのベランダ等で見かけるやつ)みたいなデザインに変更となったことがあった。
9機=葉をくわえた鷲。
特車=特科車両の上に虹が架かっているのがシンボルマーク。バックに桜。
神奈川 1,2の数字の外側に羽
山梨  武田菱
静岡  三葉葵に「静」の文字
長野  真田六連銭
京都  桜に「京」の字
愛媛  牛
福岡
1機=博多にわかの面
2機=三つ巴
長崎  竜
佐賀  鬼のような面
沖縄  シーサー
各府県機動隊と管区機動隊は、所属府県管区機動隊と同じマークを使用するが、表示位置が異なる。
例:山梨県警
本機:後頭部、階級表示上に武田菱
管機:後頭部中央に赤ダイヤマーク、2号垂れ(後頭部防石カバー)に武田菱

機動隊腕章を付ける隊もある。

大阪:黒地に白色2本線、中央に丸に機の赤色刺繍。車両にも丸機マークを入れている。
和歌山:紫に白線2本とマル機。大阪(黒)、兵庫(緑)の色違い。
奈良:大阪の白線2本に対して3本

九州管機  袖に「8」のワッペンを着けている。
近畿管機  ヘルメットの後部に3桁の白数字。
関東管機  赤いダイヤのマーク、側面に赤字で2桁の数字で大隊・中隊を、2号垂れの左右に小隊、分隊を記す。
東北管機  近畿管機に似ているが細部が違う。


機動隊の装備・携行品

警備実施出動時の服装・携行品の基準
伝達呼称

治安1号
服装:常装、出動靴、手袋
携行品:手ぬぐい、印鑑、名刺5枚(他県へ応援する場合は、部隊名、血液型、生年月日、共済組合 番号を記入したもの)、黒色ボールペン、雨衣

治安2号
服装:常装(拳銃を除く)、出動靴、手袋
携行品:手ぬぐい、印鑑、名刺5枚出動靴、手袋、黒色ボールペン、小盾、防石面付ヘルメット、雨衣

治安3号
服装:出動服、盛夏ワイシャツ、出動用バンドまたは帯 革、出動靴、手袋、略帽、警棒、面付きヘルメット防護衣、防護手袋、防炎マフラー(11月1日から3月31日の間及び必要時)
携行品:手ぬぐい、印鑑、名刺5枚、黒色ボールペン、 小盾、水筒、雨衣、防炎マフラー(4月1日から 、10月31日の間)
警部以上の幹部・防石盾(中盾)
小隊長以下・防御盾(大盾)

なお、各号において警部以上の幹部はトラメガ、警部補以上の幹部は携帯無線機又は無線受令機。警備が夜間に及ぶ場合には、小隊長差出所属:強力ライト1個、分隊長差出所属:懐中電灯4個を携行する。

機動隊員の装備
ソフトな警備実施を行う時は、地域課の警察官と同様、制服に短銃を携帯。
デモ規制などを行う時は、出動服に防石マスク付きのヘルメット、防炎マフラー、出動靴、大盾などを装備。
銃器犯罪に対するときは、それに防弾チョッキ、防弾ヘルメット、防弾盾を装備。
また、行方不明者や刑事事件の証拠品の捜索の際は、出動服に略帽で出動。

古い時期の装備品

装備品予算単価(昭和43年現在)。
出動服・略帽 2900円
ヘルメット 1100円
防石面 800円
2号垂れ(後頭部カバー) 400円
防護衣 3250円
防護手袋 1800円
出動靴 2400円
警棒 210円
大盾 3250円


機動隊、全国展開へ 警察庁が運用見直し

警察庁は全国の警察本部の機動隊について運用を見直し、要人来日や国際イベントに伴う大型警備、大規模な災害・事故が起きた時の救助活動などで、警視庁や大阪府警などの部隊を“全国機動隊”と位置付け、都道府県の垣根を超えて広域派遣することを決めている。
2000年の主要国首脳会議(サミット)の地方開催や、全国10自治体で試合が予定されるサッカーの2002年ワールドカップ(W杯)をにらんだ措置で、各県警の機動隊を経験豊富な警視庁などの部隊がバックアップすることでより効率的な警備を行うのが狙い。
機動隊は警視庁の10隊(約4000人)を筆頭に、大阪府警と千葉県警に各3隊、神奈川、福岡の両県警に各2隊、その他の道府県警は1隊が配置されている。活動範囲は原則的にそれぞれの都道府県と近県に限定される。
長野冬季五輪では、周辺の県警だけで十分な人員が確保できず、要請を受けた警視庁などの部隊が警備の中核を担った。四月のエリツィン・ロシア大統領来日(静岡県)、11月の江沢民・中国国家主席の来日(東京都、宮城県、北海道)など大都市以外への要人訪問も増えており、より充実した警備の必要性が高まっている。
見直しはこうした現状を受け、機動隊の活動範囲を拡大。従来のような「応援」という姿勢ではなく、警視庁などのノウハウのある部隊が本来業務として全国展開することにした。
安保闘争が激しかった時代と違って日常的なデモ、街頭闘争などは少なくなっている。警察庁は「今後、全国どこで行う警備も本来の仕事の一部、という位置付けになる。隊員にも意識改革をしてほしい」と話している。


主な車輌

p2141032. p2140018. p2140022. . p2154031.
指揮官車、投光車、輸送車、待機車、放水車、など、機動隊の主力をなす車輌です。
しかし、現在の機動隊の任務は多岐に渡り、これ以外にも、数多くの種類を装備しています。

警察車両(特殊車両/警備)
警察車両(特殊車両/災害対策)


警察関連
警視庁 機動隊



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新規作成日:2002年6月5日/最終更新日:2007年1月24日