艦船写真の写し方(空撮)

空撮、すなわち上空からの撮影は、地上や海上からでは得ることの出来ないアングルが得られる。
俯瞰写真、全景写真がそれである。

が、しかし、簡単に出来るものではない。
擬似的なものとしては、橋の上から通過する船舶を撮影したりするものがある。

さて、実際の空撮だが、既存のルートにより撮影するものと、取材を目的として飛行するものがある。


既存のルートによる撮影
一般の航空機路線や遊覧飛行、体験搭乗などによるものがこれである。
当然、航路は規定のものであり、その範囲で撮影することになる。
離着陸時においては、座席シートベルト着用が基本であるから、窓側の座席をキープすることも必要だ。
基本的に窓は開かないから写界は制限されているし、基本的に、全景写真ということになろう。
また、基地などの場合、防衛秘密の指定が無くとも、防衛上あからさまに詳細がわかるものについては、取り扱いは注意すべきものである。


取材撮影
取材を目的として飛行する場合、関係部署による取材便宜によるものと、チャーター飛行(報道自社飛行含む)に分けられる。
前者の場合、本来の任務が優先する関係で、後者より自由度は低い。
が、そもそも航空機の飛行については、法的、物理的に各種制限があり、必ずしも自由気ままに飛行位置取りが出来るということは無い。

飛行に当たっては、機長により飛行計画が出される。
そしてフライト前にはブリーフィングが行われ、諸注意と、撮影の要望の調整が行われる。
もちろん、安全な飛行が大前提であるから、必ずしも要望どおりの飛行が出来るわけではないのだが、ある程度の融通はしていただける。
また、状況により、飛行中の要望が可能な場合もある。

脱出方法や、諸注意について、滅多にない事故ではあるが、いい加減に聞いていてはいけない。
発生したらそのとき次第ではすまないのだ。
最悪本人が死ねば終わりということではない。
諸注意を守っていれば助かったようなケースの場合、機長やクルーに多大な迷惑がかかるのだ。
Dcim1205/DSC_2277. Dcim1205/DSC_2278. Dcim1205/DSC_2279. Dcim1205/DSC_2280. Dcim1205/DSC_2281.

また、搭乗直前にも、最終確認として行われる。
Dcim1211/DSC_2800.

飛行中には、ヘリの場合、撮影のために扉が開かれる。
写界は開けるが、ものが落ちないように最大の注意が必要だ。
レンズ交換やフィルム交換は必要最小限にするとともに最大の注意を払いたい。
通常の撮影であれば手元足元は自分の責任範囲だが、こと空撮の場合は、空に浮いたものの中にいる。
不安定極まりないというと語弊があるが、気象条件やその他の事情で、揺れや傾きなどの起こりうる確率は決して低くはない。

ヘリからの場合、シャッター速度の基本は1/500以上の高速が原則という。
しかし、撮影対象が、回転翼だと、シャッター速度を低くしたいし葛藤が生まれる。
シャッター速度を抑えて勝負に出るか、安全策とするか。
こういう場合、VRレンズが役に立つ。

被写体の位置関係、進路、速度、被写体相互の相対的位置関係、太陽方向、太陽高度、などなど考慮すべき要素は多い。

また、被写体との距離、こちらの飛行高度などにより、得られる絵柄も大きく異なる。
艦艇の甲板配置を抑えるには、ある程度真上に近い位置関係が望ましい。
距離が寄れるのであれば広角域の出番だが、むしろ高度を上げることにより見下ろすほうが、写しやすいかもしれない。

海域の全景を写すには高度を上げたほうが押さえやすい。
しかし、単なる俯瞰でおとなしい写真である。
対して高度を下げると臨場感が増してくる。
R0029030. R0030009. Dcim0407/Dsc_6447. R0029035. R0030019. Dcim0408/Dsc_6550. Dcim0408/Dsc_6565.

一般の取材ヘリの場合は、両サイドフリーだが、海上自衛隊や海上保安庁のヘリの場合、その構造から、右側の扉を開く形となる。
ここに、1,2名のカメラマンが位置につく。
3人目の場合、後方の隙間から写すか、交代で写すことになる。

ヘリの機体の向きも要素のひとつになる。
操縦の難易度は機長判断だが、ヘリは物理的に前進以外の飛行も可能である。
後退も可能ではあるが、後方視界の関係から、現実的ではない。
機体を斜めに向けたままの前進、すなわち進行方向に対して、機体の向きを斜めにすることも可能だ。
これにより、写界の取り方が大きく変わる。

搭乗機内の撮影については、事前に確認することが必要だ。
特にフラッシュの使用は、操縦に影響を与える場合がある。

船で海上に出る場合、陸上の服装+1枚が原則といわれる。
ヘリの場合も同様で、高度が高く、まして扉を開放するため、寒くないように対策が必要だ。
ただ、救命胴衣やハーネスをつける関係から、機上で脱いだり着たりということが難しい。

搭乗に際しては、救命胴衣の着用と、ハーネスが取り付けられる。
従って、自分の着衣と装備品の利用に、若干の制限が加わってくる場合もある。
ハーネスは、扉を開けての撮影に際して必須のもので、機体と体を結びつける命綱である。
もちろん、これに頼ることなく、機体から外に落ちないように注意しなければならない。
また、金属製の札もつけるのだが、言うまでもなく、遺体となった場合の識別札である。
Dcim1204/DSC_2143. Dcim1204/DSC_2144. Dcim1211/DSC_2799.

飛行中のリクエストも状況により可能ではある。
「も少し近く」とか、位置の変更とか。
が、あくまで機長判断が優先する。
高名なカメラマンが余りに指図が過ぎて「自衛隊機はあんたのために飛行しているわけではない」とたしなめられたと言う噂もあるが、要望であって、命令ではない点に留意すべきだ。
その意味では、空撮の成果は、カメラマンの経験と腕、フライト指示のコツもさることながら、最適なポジションを用意したクルーの腕におう所が大きいのである。




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新規作成日:2004年9月11日/最終更新日:2004年9月11日