艦船の用語
最近、テレビなどの報道・解説を聞いていると、ややいい加減と言うか、正確さに欠けるものが目立つようになりました。
こと、艦船の分野は、一般になじみが薄く、特殊な用語も多いので、一般に分かりやすい表現に努めるあまり、真意を曲げる例もありますが、
編集サイドのノウハウ不足に負うところも多々有りそうです。
更に、外国語に関わると、要素は複雑になって行きます。
私も、素人ではありますが、多少なりとも正しい姿を追求したいと思い、このコーナーを作ってみました。
艦船
- 戦艦 主として1900-1945前後に、大砲を主兵器として、攻撃・防御を求められた艦。
艦艇一般を指していわれる事があるが、これは「戦闘艦艇」などと呼ぶべきである。
古くは「戦列艦」や、往時の主力艦を指す場合もある。
- 艦艇(War Ship) 広義には海軍に所属する艦船一般を指す。狭義には戦闘艦艇を指す。
- 軍艦 狭義には海軍に所属する艦船のうち戦闘艦艇を指す。旧日本海軍では、特に定められた艦艇に限定される。海上自衛隊の艦艇は軍艦とは言わず、自衛艦という。⇒軍艦(海軍艦艇)の呼称
- Jane's Fighting Ships ジェーン軍艦年鑑。ジェーン海軍年鑑とも呼ばれる。⇒ジェーン軍艦年鑑
- 機動部隊 広義には、特定の管区や任務に限定されず、広範囲の地域・任務に機動的に運用される部隊を指す。空母機動部隊を指す事も多い。任務部隊(Task Force)と呼ばれる事もある。
- 海軍艦艇 広義には海軍所属の艦艇一般をさす。
- 海軍艦船 海軍所属の艦艇、船舶をさす。
- 海上保安庁船舶 海上保安庁所属の船舶一般をさす。海上保安庁船艇とは、巷での俗称。
- 商船構造と艦艇構造
商船構造は一般の船舶構造で、艦艇構造は戦闘艦艇の船体構造を意味します。
船である以上、水に浮かび、航行でき、ある程度の天候でも安全である事が求められます。
最近は、二重底や、タイタニックの頃でも、一個所くらい穴が空いても、沈まない事が要求されたりもしますが。
が、艦艇の場合、それに加えて、敵と渡り合う時に、少々の攻撃を受けても持ちこたえる事が要求されます。
で、船体が丈夫である事が要求されます。
鉄板が厚いとか、隔壁の数が多いとか、フレームの数が多いとか。
こういった設計により、弾や魚雷が当たっても、その部分が壊れるだけで、ほかへの被害が食い止められるようになるわけです。
当然の事ながら、材料と工数がかかるので、価格が上がります。
で、艦艇でありながら、予算の為や、戦時急造などの理由で、商船構造の艦艇も出来るわけです。
とはいえ、普通の商船よりは、丈夫に造っているでしょうが。
- 浬(海里、マイル)
海洋での距離は浬で表し、緯度1分(1度の60分の1)の距離(地球中心角1分に対する子午線の弧の長さ)が1浬である。
尚、この数値は、厳密に言えば、地球が一様な球面でないことから、実際には計測緯度によって異なり、同じはずの1浬でも一定ではないことになる為、IHOで約1.852kmと決めている。逆に海洋測量においては、緯度毎に定められた数値を使用する。
アメリカでは約1.85318kmを使用している。
英語では Nautical Mile または Sea Mile という。
ちなみに、陸上で使われる哩(マイル)は、英語でStatute Mileといい約1.6093015km。
丸い地球は全周360度で、1度は60分、1浬は1.852Kmであるから、1.852km×60分×360度=40003.2Kmで、地球の1周は約4万キロメートルとなる。
- ノット(knot)
海洋での速度はノット(knot)で表す。1ノットは1時間に1マイル(海里)走る速度である。
- ヤード (Yards / yd)
距離を表す単位。船と船の距離を表す際に用いられる。
1ヤードは、約0.9144メートル、約91.44センチ、3フィート、36インチ。
1メートルは、約1.0936ヤード。
- フィート (Feet / ft)
寸法を表す単位。
1フィートは、約30.48センチ、12インチ、1/3ヤード。
- インチ (Inches / in)
寸法を表す単位。大砲の口径を表す際に用いられる。
1インチは、約2.54センチ、1/12フィート、1/36ヤード。
- 型と級
ドレットノート級とか、むらさめ型などと、艦艇のシリーズをさす。
英語で級はクラス(Class)で、ドレットノート級など、同じカテゴリーの艦の集合をあらわす場合と、ミズーリ級など、同一艦型の集合をあらわす場合と、あわせて使用される。
また、型は本来はタイプ(Type)で、U209-1500などで、1500型など、派生型の集合をあらわす。
日本語としては、ドレットノート級など、同じカテゴリーの艦の集合をあらわし、むらさめ型など同一艦型の集合をあらわす方が、一般的のようである。
- 潜航
潜水艦が、水中に潜って航行する事。
潜行は、潜入と同意で、潜水艦の場合に用いるのは誤まり。
軍事
- 相互確証破壊の法側 核超大国間で、一方の国が先制核攻撃をかけたとして、もう一方の国が残存核兵力で相手国を十分破壊できる事。
- 相互確証破壊の法側による安全保障 相互確証破壊の法側により保たれる安全の構造。当事する両国とも、反撃による破壊を恐れ、先制攻撃をかけないと言う論理。
この法側を維持する為に、米ソの条約で、モスクワ周辺にはABM(迎撃弾道弾)が配備されているが、アメリカのABM(迎撃弾道弾)配備は禁止されている。
戦後50年、大国間で大戦争や、核戦争が発生しないのは、この論理に元づいているとされる。
反面、小競り合いが多発する局面はある。
また、危惧される点として、一方が限定核攻撃をした場合、反撃をすべきか(この場合、相手方の残存戦力の再反撃を覚悟する必要がある)、難しい選択を迫られる面もある。この場合、相互確証破壊の法側による安全保障が成り立たない側面である。
- CEP(半数必中界) 戦略核弾頭が、その半数が、半径何mに落下するかの値。小さいほど精度が高い。
核兵器は、言うまでも無く、大量破壊兵器ではあるが、都市は破壊できても、大地の構造は少々の威力では変えられない。(最大級の核兵器が数発、東京駅に落ちたとして、新宿の高層ビルは跡形も無くなるが、新宿地下街は、直撃破壊からは免れる。放射能等は別)
ここで、核超大国は、出来れば相手の核兵器を先制攻撃で無力化したいと考え、また、相手の攻撃から温存する手段を考える。そこで、防御として、地下サイロへ装備し、相手の攻撃からの残存性を向上しようとする。ここで、CEP(半数必中界)に命中し、その破壊力で破壊できれば、1目標に2発向ければ大体清算できる。一般に、西側の命中精度は高く、核弾頭の威力が小さくて済んでいるが、共産圏は、逆に、命中精度が低い分、核弾頭の威力を大きくして大型のミサイルで、等価な結果をもくろんでいる。(アメリカので2-300mかなー、ソ連はその倍=4倍の破壊力で同じ能力となる)
米ソの核削減条約は、このバランスを維持するように、策定されている。
海上自衛隊
- 護衛艦(海上自衛隊) 日本の場合、国防問題は政治問題が絡み、出来るだけ柔らかい表現と言う傾向から、護衛艦と呼んでいるが、英訳するとDestroyer=駆逐艦。従って、英文を逆翻訳される場合、注意して訳されるべきである。
- 海上自衛隊艦艇 広義には海上自衛隊所属の艦船一般をさす。
- 自衛艦 海上自衛隊所属の艦艇のうち、警備艦・補助艦を総称し、支援船を含まない。
国際法上は、軍艦に相当する。
- 警備艦 海上自衛隊所属の艦艇のうち、戦闘など正面で活躍する艦艇。
国会予算上、護衛艦を指している場合もある。
- 補助艦 海上自衛隊所属の艦艇のうち、警備艦の活動を支援する艦艇。
- 支援船 海上自衛隊所属の艦艇のうち、主として後方で支援する船艇。
その他
- 拿捕
拿捕とは、「とらえること」や「つかまえて自由を得させぬこと」を言う。
国際法上、漁業関係等の法令違反により、公海上の外国船舶を捕まえ、押収し、又は船長その他の乗組員を逮捕するといった意味で使われている。
また、戦時に敵の船舶や貨物又はある種の中立船舶や貨物を、封鎖侵破または戦時禁制品輸送などの理由で一時押収する意味でも使われている。
- 逮捕
逮捕とは、「人の身体に直接に力を加えて、その行動の自由を奪うこと」を言い、法的には、主に刑法上と刑事訴訟法上の2つの意味を持っている。
刑法上は、人の行動の自由を剥奪する罪である逮捕監禁罪としての意味で、刑事訴訟法上は、捜査機関が裁判官の発する令状(逮捕状)により司法警察官が被疑者を引致し、短期間抑留するための強制手段としての意味である。
- 拘束
拘束とは、「行動の自由を制限すること」や「拘引して束縛すること」を言い、法的にも一般的な意味として使用されている。
- 抑留
抑留とは、「おさえとどめること」や「強制的にとどめておくこと」を言い、一定期間、留置場などに入れ、自由を拘束することを言う。
法的には、比較的短期間、強制的に自由を拘束することといった意味で使用されている。
また、国際法上、特定の人又は物を国家の権内に置き、拘束するといった意味としても使用されている。
- 連行
連行とは、一般的に「つれていくこと」といった意味を持っている。
法的にも同様に拿捕した船舶・乗組員や逮捕した被疑者を海上保安部や警察署等へつれていくといった意味で使用されている。
- 便宜置籍船
FOC(Flag Of Convenience=便宜の旗)船ともいう。
便宜置籍船は、登録料と税金が安いほか、本国の船員組合からの干渉を逃れ、低賃金の外国人船員を乗せやすいなど船主側のメリットがあるといわれ、「国名貸し」する国にとって外貨稼ぎにもなる。
しかし、船の設備などが国際条約の基準を満たしていないなどのトラブルも多い。
第2次世界大戦後に米国が余剰となった戦時建造船の海外売却を発端に広まったとされる。
国際運輸労連(ITF)がFOC国とみなしているのは現在32ヶ国で、2005年1月には北朝鮮も指定された。
誤った用例
- 海上自衛艦 海上自衛隊の艦を指しているつもりだが、海上自衛隊艦艇、自衛艦、などが正しい用例。(海上自衛官は、海上自衛隊の自衛官を指し、通常でも使われている。)
- 機動艦隊 機動部隊のように使われる事が多いが、ちと違う気がする。
新規作成日:1998年8月16日/最終更新日:2005年9月26日