98.12.17 米英 イラク攻撃 の考察
98.12.17 米英の艦船・航空機により、イラクに対して、攻撃が加えられた。
時、あたかも、クリントン大統領弾劾の決議の時期でも有り、憶測を呼んでいる。
ここでは、安易な結論を出さず、風評に惑わされない、検討要素を語ってみたい。
さて、直接の要員は、イラクの、大量破壊兵器(核兵器、生物化学兵器)開発疑惑に対する、国連査察の受け入れの問題である。
世界平和の為には、危険は取り除きたいが、国にはそれぞれ主権が有り、いくら国連決議と言えども、過剰な干渉介入は許されない。
国際的に、大量破壊兵器の開発を制限する方向には有るが・・・、全世界的に見てどうであろうか。
まず、米英仏露中5大国は、既に大量の核兵器を実戦配備している。また、生物化学兵器についても、条約遵守とはされているが、かつては保有しまた、保有能力を有している。
しかも、最近、印度、パキスタンが、核開発に加わった。
そんな中で、なぜ、イラクのみが、開発に制限が加えられるかの合理的根拠に欠ける。
もちろん、こういった兵器は、全廃の方向が好ましい。
しかし、5大国を含め、現状を見るに、なにもイラクのみが施設を攻撃されるまでの正当性はないのではなかろうか。
仮にも、領土領空を侵犯し、宣戦布告なき闇討ちである。
差し迫った、イラク側の進攻意図が見られない今日、問題は残る。
攻撃の時期であるが、あたかも、クリントン大統領弾劾の決議の時期でも有り、自己の不祥事隠蔽の感は否めない。
アメリカの合理性からすると、かの議会も承認しているように、不祥事・弾劾問題と、イラクの問題は、純然と独立される問題で、公私混同はないとされる。
実際、イラク攻撃の結果いかんに関わらず、弾劾問題が消滅するほどの物はなく、確かに無関係と考えられる。
しかし、時期的に、他国に与える影響としては、理解に苦しむ時期ではある。
またラマダンに入り、また、クリスマスも迫るこの時期、それを期に「終了宣言」するタイミングとすれば、この時期を超すと、終了の機会を失う。
攻撃の成果であるが、米軍の発表では「十分な成果を上げた」としているが、どうであろうか。
確かに、核関連施設とされる物は、ある程度叩いたかもしれない。
が、生物化学兵器についていえば、元々その目標は充分確認されておらず、されば、戦果の確認は更に困難である。
さすれば「十分な戦果」と言うのは、非常に疑問が残る。
実際、研究施設などは、広く大学や、学生、工業化学施設までにも及び、それは各国類似の潜在要素を含んでいる。
生物化学兵器についていえば、日本の上九一色村にあった施設なども、充分問題の施設である。
そして、今回、アメリカに同調しているのは、わずかである点。
攻撃に同調したのは、唯一イギリス。かの国は、実は中東における植民地政策で、並々ならぬ問題を撒き散らしている国である。
攻撃に基地を提供したのは、唯一クウェート。ここは、イラク進攻時、多国籍軍の支援を受けた事情が有るが、そのアメリカの要請を拒みきれなかった可能性は大であるが、自国が望んで隣国イラクに打撃を与えるかは難しい問題である。
なぜなら、隣国の脅威が完全に除去すれば良いが、少しでも脅威が残存する場合、
これへの対抗策が必要であり、融和政策とどちらが良いかは、為政者の手腕に関わる。
分けても、もっともアメリカに友好的なサウジアラビアの基地が使用されていない点は、アラブ諸国の支援が無い証であり、今回の攻撃の正当性に非常な疑問が残る。
ノー天気なのは、実は我が国で、かつての出遅れに対する配慮か、真っ先に同調の声明を掲げたが、かわいそうに、国際世論は、ついてこなかった。
仲間は多いほうが良く、身のこなしは早いほうが良いのだが、取り残されるほうにいち早く駆け寄る事は、百年国を誤る大問題である。
また、この問題に限定されないが、西欧諸国の論理は、世界の代表を謳うが、しかし、あくまで自国の国益を中心としている。
話題はそれるが、二酸化炭素や地球温暖化も、もとはといえば、イギリスの産業革命により石炭を燃やし始めた事に始まるし、日本が先進国として国力拡張を図り戦争をし、またエネルギー問題の一端となっているのも、アメリカが鯨を追い求めて極東まで辿りつき、開国を求めたからに他ならない。
実際、アメリカの景気、国内産業、とりわけ軍時産業の景気が、この作戦に影響されていないとはいえない。
トマホークは高額な最新兵器では有るが、ハイテク兵器であるがゆえに、陳腐化も激しい。
兵器の定数が有る以上、在庫が減らないと、増産の要求は発生しないし、戦闘結果は極めて優秀な実用試験である。
こういった事情からの、攻撃と言う展開は、アメリカでは何の抵抗も無く存在する。
新規作成日:1998年12月20日/最終更新日:1998年12月20日