未確認漁船の対応について

1/23発生した、日本海での不審船追跡。ちまたで色々取りざたされていますが、Q&Aの形を中心に、まとめてみました。

「なんで護衛艦まで出動して、押さえられなかったのか」
護衛艦「はるな」「みょうこう」が出ていきながら押さえられなかったことは誠に残念です。
が、後方で聞くとそうなのですが。
さて、実際、彼の速力は35kt、護衛艦は、公称30kt以上、ですから 「よーいどん」でも、元々、危ないものです。
また、今回、この為に待機していたわけではなく、たまたま(射撃訓練で)付近に居合わせ、 運良く、追尾できたわけで、事件の報に出港していれば、全く見えていないでしょう。
航空自衛隊のように、「スクランブル5分待機」などは、艦艇にはできませんし。
ミサイル艇でも最大40kt、海上保安庁の船も最大35kt程度ですから、 こういった対策は、専用の船舶を装備する必要が有ります。
また、その配備も、よほど良いポイントで待機していないと、ほとんど、接触できないでしょう。

「なぜ停船させられなかったのか」
停船させられなかったのは、今回の場合、やむをえないでしょう。
密漁船なら、犯人も、命が惜しいですから、発砲を見たら止まるかも知れません。
北の場合、もし捕まれば、船体を爆破、乗員は自決の覚悟があるでしょうから、 捕まって、汚名を残すより、脱出を図るでしょう。
その際、砲撃で戦死しても、名誉になります。
その相手を止めるには、物理的な破壊以外に有りませんから、 舵などの推進装置を破壊するか、しなければなりません。
しかし、実際、推進装置のみを破壊する事は不可能です。
また、停船させた後、臨検が有りますが、ここで、船上での銃撃戦を覚悟しなければなりません。
この場合、未経験の日本には、相当のリスクが有ったでしょう。
ドラマのようなカッコイイ場面はありえないでしょう。
先方は「特殊部隊」、護衛艦乗員は銃の取り扱い経験があるとは言え、白兵戦などは想定外でしょう。

「どこまでの阻止行動をとったのか」
護衛艦も射撃し、航空機の爆弾投下もありました。
推進装置の破壊も検討されたそうですが、高速航行中に、そこまでうまい射撃は困難ですから、今回は相応の判断かと思います。
ま、専用の、スクリューパンチでも、つっとく事でしょうかね。

「威嚇射撃はどのようなものか」
海上保安庁発表の写真で見る限り、砲は空を向いており、ロシアなどが行う、 近接射撃(命中もある)では無かったようです。
巡視船の速力は22ktですから、そもそも相手を威嚇するに足る圧力になったかも疑問です。
訓練展示などでの射撃などのように、接近しての示威行動は困難でしょう。
また、高速目標なら、なおさらです。
具合良くあたりません。
他国の警備隊は、ホントに船体を打ちますが、これも、狙ったのか、外したのが流れたのか判りません。

まあ、今回は、「日本もただ黙ってはいない」と言う事を見せただけでも十分な進歩です。
これこそ、十分な抑止力になります。

「領海を侵犯し、停船命令を無視し、おまけに国旗を掲げてもいないのですから撃沈しても何処からも文句は出ないのではないか」
通常、そうです。
韓国、ロシア、みなこういった発砲をしていますが、文句は出ていません。
しかし、日本がやると、何か言いたがる国も無くはないでしょうね。
この場合、特に、日本の世論として、だれか、ぐちゃぐちゃ言いたがるでしょうね。

「たかが漁船すら停船させれないほどの海軍力なのか」
これは、ある意味、偏見とでも言いましょうか。
船体の、水上に見えている部分は確かに漁船そうです。
しかし、35ktもホントニ出るなら、船底の形は、魚雷艇並みでしょうし、 機関馬力は、4倍以上のものでしょう。
きっと、船体内は、全部エンジンでは。
すなわち、専用の特殊工作艇とでも言いましょうか。
ですから、形や大きさで侮れません。

「高速艇に追いつくのは難しそうですが、問題は不審船の発見から数十時間の猶予がありながら取り逃がしてしまった捕縛術の稚拙さか」
市街地で警察が取り逃がしたのとは、訳が違います。
そう言えば、居眠りこいて、逃がしてしまい、署員総動員で探した間抜けな話も有りましたが・・・。
地図で見る通り、一直線の逃走です。
すなわち、追跡側のスタートポイントで、すでに、追跡結果そのものは見えています。
海には信号も交差点も有りませんから、それこそ、思う方向へ一直線で逃げられます。
従って、進路予測して、前方遭遇可能なロケーションにいない限り、 もともと、追いつきません。
あとは、今回のように、直接破壊を考えない以上、決死の相手は押さえられません。

「海保も小型の爆撃機くらいは持つべきではないか」
半分冗談でしょうが、要は、どこまで制圧するかです。
「船体をも撃つ」となれば、それなりにやっているでしょう。
しかし、まだ今回始めてでも有り、政府もそこまでの覚悟は出来ていないでしょうね。
また、実際「拉致逃走中」なら、撃てない事情も有ります。

あと、言葉足らずの解説なのでしょうが、気になるのは
「防空識別圏を超え、護衛艦の危険を考え、中止」との事でしたが、 イージス艦が危険になるわけが無いでしょう。
ま、迎撃許可の問題が有りますから、そういう点だとは思います。
迎撃できなければ、ただの、高価なシロモノですからね。
奴等の、外貨換算何千円程度の爆弾で、SPYレーダー1枚壊されては、採算に合いませんし。

「実は北の陽動作戦だった」
日本海での騒ぎのさなか、太平洋岸を中心に、数箇所で、工作員の潜入が見られているようだ。
日本を1つの駒として見た場合、確かに1ヶ所での陽動作戦は有効だ。1つにしか目が向かなければ、まんまと引っ掛かるわけだ。
しかし、日本海の出来事なら、海上保安庁は第八管区、海上自衛隊は舞鶴地方隊 が管轄で、ともに中央の組織ガ支援するとはいえ、他の部署部隊は、独自の管轄担当を警備可能で、むしろ、他の不審行動に対して、警備強化する必要がある。
その意味では、陽動作戦の効果は、付近の別作戦で有るべきだ。
されば、単に、全国的同時多発の不審行動の1つにすぎず、潜在的な警備体制の不足が浮かび上がっただけだ。
これは、何も、海上保安庁や、海上自衛隊が、怠慢なわけではなく、その警備範囲の広大さに比べて、あまりにも装備と組織が不足しているに過ぎない。
必ずしも比較対象にはならないが、警視庁職員4万人、全国警察官20万人に対して、海上保安庁職員は1万程度で有る。
これで、全国の海岸線を、くまなく警備する事の実態を、今回のようなリスクとともに、真剣に検討する必要があろう。


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新規作成日:1999年3月30日/最終更新日:1999年3月30日