テレビ朝日 サンデープロジェクト 特集「潜入密着 沖縄の米軍基地は必要か」(2000.7.23放送)

サンデープロジェクト 特集「潜入密着 沖縄の米軍基地は必要か」(2000.7.23放送)で、米海軍佐世保の両用戦作戦艦艇 の写真を放送して頂きました。
また、スタッフの方へ軍事の基礎情報をレクチャーするなどの機会が有りましたので、ちと気になる番組でした。
直接番組の内容にはタッチはしていませんが、佐世保の揚陸艦艇の事や、海兵隊の装備、その他評論家諸氏の見解の信憑性論など、やりとりさせて頂きました。

テレビマンユニオンの制作で、テレビ朝日の放送です。
テレビ朝日の放送と言うことで、かなり明確な方向性を持った評論内容になっていましたが、テレビマンユニオンの制作サイドでは、なるべくバイアスのかかっていない内容とするべく苦労もあったようです。
関係者誰一人、何の知識も無い所から始めたそうですが、聞きかじりの偏ったものとならないよう、かなり神経を使っているようです。

また、評論家や、こう言った報道の場合「あれこれ考えられる」という形より、「こうなんだ」と言いきった方が、インパクトを持って受け入れられると言う面もある。
そう言う意味では、視聴者・読者が、各種情報収集と判断の能力を備えることが必要です。

当初「佐世保の両用戦作戦艦艇4隻の写真を放送したい」との事でしたが、最終的に、強襲揚陸艦LHA3ベローウッド(6/14 LHD2 WASPと交代)のみ放送となりました。

番組の論旨は、総じて「沖縄駐留の意義は薄い」を訴えるものでしたが・・・。

「沖縄の海兵隊は15000人も居るが、揚陸艦が4隻しかなく、過剰である」のか。
確かに佐世保には4隻しか居ない。しかし、アメリカは、全部で42隻もの各種揚陸艦を装備するとともに、さらに数十隻の地上軍支援の輸送艦を保有している。これらの約半数は、太平洋・インド洋に展開していて、必要と有れば、1週間で集結できる。
また、海兵隊10000人も、空軍の輸送機を、ほんの20機も使えば、たちどころに移動できてしまう。
したがって「海兵隊は15000人と、揚陸艦の4隻」は、比較する意味が無い。

「有事に佐世保から沖縄に迎えに行くだけで2日もかかる。」のか。
佐世保−沖縄は800kmなので40時間、沖縄−韓国は900kmなので45時間、航行するだけで、ざっと4日かかる。
で、実際ですが、なぜ揚陸艦が必要かと言うと、本来は戦場正面での上陸です。
単なる輸送は、ヒコウキでも出来る。
海兵隊10000人も、空軍の輸送機を、ほんの20機も使えば、沖縄−韓国2時間で昼寝つきだ。
従って、実際は、沖縄の海兵隊は、空輸で韓国の港へ行き、佐世保からやってきた揚陸艦に乗り換えて作戦と言う事も1つ。この場合、発令から、2日前後で終わる。前提は、韓国の飛行場、港が使える場合で、朝鮮戦争の時のように、殆ど制圧されていた場合は駄目で、この場合は、九州・沖縄で体制をくんで、と言う事になりろう。5日かかっても、仕方ない。
作戦や運用をグローバルに考えれば、何ら問題点のテーマとはなり得ない。
「有事に佐世保から沖縄に迎えに行くだけで2日」もかかるが、米本国からやってくれば1週間もかかる。更に、戦争と言うのは2、3日で解決するものは稀で、この場合、他の準備作業などを勘案すれば、1週間程度は、準備期間と見ても問題は無い。海兵隊の作戦の前に、当然、航空機などにより、敵部隊の制圧が行われる。

「沖縄には戦車も無く、戦力として役に立たない」のか。
海兵隊1個師団の装備は、おおむね
戦車70、迫撃砲150、ロケットランチャー450、装甲車350、榴弾砲12
0、機関銃700、擲弾筒350、
あと、普天間と岩国の海兵隊の航空部隊は、
AV8B 60,F/A18 50, A6E 20 その他180 くらいの航空機を持っています。
これらの装備は、その種類により、複数の個所に分散配置されている。
確かに沖縄に戦車を置いていないかもしれないが、これをして、戦力になるかどうかは別問題だ。アメリカ軍の海兵隊自体は、相当数の戦車を保有している。有事に戦場に集結できさえすれば、どこにおいてあっても問題は無い。
実際、戦車は重量物であり、当面の目標たる朝鮮半島に、事前配備されているはずだ。また、沖縄の県民感情を配慮して、戦車を置いていないと聞いたことも有るような気がする。
戦車と言えども、ヒコウキで運べば世界中どこでも1日。多分、佐川急便より早く届くと思う。戦車100台といっても、大型輸送機を、50−100動員すれば1回だ。よその国では出来ないが、アメリカはそんだけ持っている。

「実際、米本土からの訓練部隊の受け入れ機関と成っていて、沖縄駐留の意義は薄い」のか。
現場で訓練を重ね、暑い状態とすることにより、高い錬度も維持できる。
ただ単に、駐屯しているよりも、より価値は有る。

「若い新兵ばかりで、戦力たりえない」のか。
かつて徴兵があった頃も含め、一般に兵士は若い。敗戦の色濃い軍隊は、更に15才前後の少年も駆り出す。これを以って、戦力如何は論ぜられない。


「訓練している海兵隊員も、記念撮影をするなど緊張感が無い」のか。
だからこそアメリカ軍なのだ。
太平洋戦争のとき、開戦前、アメリカは怠惰な国民で、日本軍の敵ではないとしていたが、日本国民が一丸となって、飲まず食わずで精神力で必死に戦っていたその頃、アメリカ軍は、ガムをかみながら、乱痴気騒ぎを持ちながら、涼しい顔をして戦っている。そして日本軍に圧勝している。
国民性が陽気なのと、仕事は仕事オフはオフと明確に切り替えられる欧米民族と、公私混同となる日本国民は違う。実際、泥まみれになって進軍する海兵隊の姿は真剣そのものではなかろうか。

「在日米軍は日本を護るためにある訳ではない」とは。
アメリカの政策は、アメリカを中心とした資本主義経済を守ることである。従って、アメリカのサイドについていれば守られるし、アメリカの政策に反すれば守られない。当たり前のことであり、周知の事実だ。
沖縄米軍はいわば文鎮。軽くては意味をなさない。極東・インド洋への睨みであり、極東アジアの平和に貢献している。
在日米軍は、日米安全保障条約に基づき、自衛隊との防衛責任を負っている。この責任は、在日米軍のみが果たすものではなく、アメリカ合衆国全体をして履行される。
そしてまた、極東アジアを含む、世界の安定が、長じては日本の安全保障に繋がっている。

海兵隊の存在意義
言わば精鋭の決死隊任務をこなせる部隊です。
突破口を開き、あとは陸軍の増援でと言うのが、アメリカのシナリオだ。
だから、海外で戦争が始まった時には、まず海軍と海兵隊が展開する。
陸海空の3軍で、全部カバーしているハズと言うのは、漢字の話で、アメリカの分担は、まず海兵隊、後詰めで陸軍。なので、出番は陸軍より多い。
また、大使館などの警備も海兵隊がやっている。


「沖縄の海兵隊は15000人も居るが、揚陸艦が4隻しかなく、過剰である」と言う論説は、田岡さんのものであるが、氏がかつてロシア艦アドミラルビノグラドフ来航時に「極東ロシアには稼動する大型艦は2隻しか存在しない」と豪語していものの、世界の艦船誌上に掲載された写真には、1枚の洋上写真に4隻も写っていた。
要は、発言者の情報ベース、分析力、など、もろもろの要素があり、数学のように等しい結論が導き出されるわけではない。


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新規作成日:2000年7月24日/最終更新日:2000年7月24日