沈黙の艦隊 The Silent Service
かわぐちかいじ氏作「沈黙の艦隊」
雑誌モーニングに連載され、ヒットし、単行本や、ゲームにもなっている、マンガである。
潜水艦と海上自衛隊、太平洋を題材とした、ミリタリー物である。
これにより、ミリタリーファンが増え、軍事・艦船に目が向く事は喜ばしい事である。
が、反面、間違った知識や、戦争美化に繋がる事は、ありがたくない。
シナリオに付いては、昔のマンガ等のストーリー盗用と言う節もあるが、ここでは言及しない。
ただ、「沈黙の艦隊」では、リアルな潜水艦や空母の描写が魅力の一つなのだが、連載開始の比較的初期に、その絵がある写真家の写真集を無断で写したとして、その写真家から訴えられた事が有り、かわぐち氏側が全面謝罪+補償したと記憶している。
実は私も、モーニング連載途上に一部見ている。しかし、当時は「こんな事あるかい」と笑い飛ばして以後見なかった。しかしながら、世間では、結構盛り上がっているので、潜水艦を語る上で、見ておく必要を感じている。
ストーリーそのものは、空想である。登場人物や、実際の駆け引きについては、創作で何ら差し支えない。
ただ、出現する艦艇、航空機などについては、今一つの精度を期待したい所だ。
基本は1988年頃の日・米・ソ連である。その意味で、時代の統一など、艦艇、航空機が出れば良いと言う姿勢は勘弁してもらいたい。これは、著者が、マンガの絵としてのリアルさに対して、軍事・艦船への裏付けが追いついていない為かと思われる。
架空戦記、マンガとして見ている分には、問題がないのだが、このマンガを見て、現実の海上自衛隊を理解する方々が大勢おられる今日、補足の必要を感じる今日このごろである。
- VOYAGE1 「やまなみ」圧潰
圧潰は爆発ではない。艦は粉々にはならず、ひしゃげる。
横須賀基地でのDD183ありあけ型は、時代不整合。
- VOYAGE2 陰謀
潜水艦を内側にした、護衛艦とのメザシ接岸は、通常ありえない。
- VOYAGE3 生きていた海江田
- VOYAGE4 原潜「やまと」
艦体に「やまと」と彫り込むが、一般に愛艦にはしない行為。
- VOYAGE5 試験航海
機関室の絵は、ディーゼル機関の物で、原子炉区画ではない。
米潜水艦が群がってくる状況はあっても、実際1画面に収まるほどの密集は意味なく、ありえない。
- VOYAGE6 反乱
- VOYAGE7 「やまなみ」出撃
- VOYAGE8 「シーバット」浮上
- VOYAGE9 戦いの序章
- VOYAGE10 深海のアマデウス
- VOYAGE11 鋼鉄の檻
- VOYAGE12 「ニューヨーク」撃沈
魚雷不発なら、スクリューの損傷は大きくない。
また、潜水艦内で、スクリュープロペラの損傷情況は分からない。
- VOYAGE13 「スールビンソン」VS「やまと」
DDG168は、海上自衛隊の「たちかぜ」で、アメリカ第七艦隊所属の艦艇ではない。
CG5は、かつての第七艦隊旗艦のつもりだろうが、設定当時は存在しない。
- VOYAGE14 「カールビンソン」停止せよ
DDG171は、海上自衛隊の「はたかぜ」で、アメリカ第七艦隊所属の艦艇ではない。
ヘリMH53は、通常、空母搭載していない。
- VOYAGE15 シーバット宣言
- VOYAGE16 完全なる独立
- VOYAGE17 「たつなみ」浮上
- VOYAGE18 「シーバット」脱出作戦
- VOYAGE19 全艦攻撃せよ
DDK120らは、海上自衛隊の護衛艦で、アメリカ第七艦隊所属の艦艇ではない。
DDA165「きくづき」は、海上自衛隊の護衛艦で、アメリカ第七艦隊所属の艦艇ではない。
対潜ロケット弾として発射されたMk108は、ウェポンアルファと呼ばれた物だが、1970年代に既に姿を消している。アメリカでは、対潜弾を乱打するのではなく、対潜魚雷1、2本で勝負を付ける。
- VOYAGE20 対潜弾回避
- VOYAGE21 モルッカ海峡
- VOYAGE22 船の墓場
- VOYAGE23 モルッカ海峡雷撃戦
- VOYAGE24 深海の魔人T
- VOYAGE25 深海の魔人U
- VOYAGE26 深海の魔人V
- VOYAGE27 「たつなみ」訊問
- VOYAGE28 外務次官天津航一郎
- VOYAGE29 ソ連原潜"赤い蠍"T
- VOYAGE30 ソ連原潜"赤い蠍"U
ソ連潜水艦が群がってくる状況はあっても、実際1画面に収まるほどの密集は意味なく、ありえない。
通信アンテナを、相手潜水艦のスクリューに巻き付け、推力停止にして引きずる設定だが、スクリュープロペラには簡単に巻き付かず、破砕されるし、まして、潜水艦の巨体を引きずる物なら、巻き取り装置が先に破壊される。
−この設定は、韓国映画「ユリョン」でも、使われている−
- VOYAGE31 ソ連原潜"赤い蠍"V
- VOYAGE32 「スコーピオン」VS「シーバット」
- VOYAGE33 死闘・深度1000
- VOYAGE34 運命の海
- VOYAGE35 天津の決断
第2護衛群 ⇒ 第2護衛隊群
港の艦番号164の絵は、訓練支援艦で、本来のDD164「たかつき」ではなく、ATS4202「くろべ」である。
「やまと」の速力50ktは、いくら設定とは言え、ちと、可能な速力ではないかと。
- VOYAGE36 「シーバット」反撃
- VOYAGE37 母国の為に
- VOYAGE38 もうひとつの日本
第2護衛隊の出動を要請する ⇒ 第2護衛隊群の出動を要請する
ただ、総理の指揮権は、自衛隊に対してて、個別の部隊の指揮は無意味。
第2護衛艦隊 ⇒ 第2護衛隊群
海上自衛隊司令部 ⇒ 自衛艦隊司令部 または、護衛艦隊司令部
群司令は、海将補の職で、一等海佐(一佐)は、隊司令である。
第2艦隊 ⇒ 第2護衛隊群
- VOYAGE39 自衛艦隊出動
- VOYAGE40 臨戦態勢
- VOYAGE41 自衛隊到着
第2護衛艦隊 ⇒ 第2護衛隊群
- VOYAGE42 ピン・ポイント
- VOYAGE43 火ぶた
ソ連の対潜ロケットも、ASROC同様、何発も乱打しない。
- VOYAGE44 もうひとつの「シーバット」
- VOYAGE45 専守防衛
- VOYAGE46 沖縄沖海戦T
- VOYAGE47 沖縄沖海戦U
- VOYAGE48 内閣官房長官海原渉
- VOYAGE49 日米会談決裂
- VOYAGE50 激突T
- VOYAGE51 激突U
- VOYAGE52 米大統領ニコラス・J・ベネット
- VOYAGE53 海原渉の選択
- VOYAGE54 海原渉の戦略
- VOYAGE55 パール・ハーバー
- VOYAGE56 デッド・エンド
- VOYAGE57 日本再占領プログラムT
- VOYAGE58 日本再占領プログラムU
- VOYAGE59 日本再占領プログラムV
- VOYAGE60 キル・ゾーン
- VOYAGE61 総理の決断
- VOYAGE62 タイム・アウト
- VOYAGE63 攻撃開始
- VOYAGE64 第2次沖縄沖海戦T
- VOYAGE65 第3次沖縄沖海戦U
以下、未
新規作成日:2001年5月2日/最終更新日:2001年5月2日