海上保安庁と海上自衛隊の協力関係

近年、各種海上での活動が活発となることにより、海の守りとなる組織であるところの海上保安庁と海上自衛隊の協力関係が、問題にされている。

艦船の名前がダブっているからといって、共同行動をとることが前提となっておらず、初めから協力するつもりがないという議論さえまかり通っている。

果たして実際はどうなのであろうか。

艦船の名前の重複に付いては、同一艦船名の問題において記載してあるのだが、名前が同じであるからどうのと言うことは、全く論外と思っている。
船の名前のみならず、担当者の名前が同じで紛らわしいから、別の名前でないと共同作業が出来ないなどという話を聞いたことがあるだろうか。
ダブっていて紛らわしければ、区別を付けるように知恵を絞れば良い。

組織が違うということは、それぞれの任務と役割が違うということである。
協力というのは、必要な局面において、相互に出来ることで手助けをするということなのである。

元来、組織というのは、自己完結で構成する。
例えば、自衛隊でも、陸海空統合部隊といいながら、多くの協力上の問題が山積している。
陸上自衛隊が、なぜヘリを持っているのだろう。第一ヘリコプター団などは、輸送部隊だから、航空自衛隊にあってもおかしくはない。
海上自衛隊も、なぜ大型航空機を持っているのだろう。整備保守の面から言えば、航空自衛隊が運用した方が便利だろう。
しかし、現状あるのは、作戦上の理由だ。
作戦というのは、出来るだけシンプルな運用が好ましい。
陸上自衛隊のヘリボン作戦など、航空自衛隊に輸送依頼するより、自衛の部隊の方がリアルタイムな投入が可能であろう。
海上自衛隊の航空機は、対潜が任務であり、そのノウハウは、航空自衛隊と分担共有するより、一元化しておいたほうがよろしかろう。

縦割り行政とか、縄張り意識とか言うが、本来は管轄範囲を積極的に担当する以上、軽々しく協力を求めるより、独自に行動したほうが円滑に進む。

太平洋戦争後に創設された、海上保安庁と海上自衛隊であるが、公職追放により旧海軍の者は海上保安庁に入れず、旧海軍時代予備士官であった人が海上保安庁を占めた。
その後、公職追放が解かれ、海上自衛隊には多くの旧海軍士官が籍を置いた。
旧海軍時代、あしざまにされていた、予備士官との溝は深かったという。
しかし、これはあくまで当時の個人的な感情問題の集合体ではなかろうか。
まさか、これが、組織間の伝統となり、海上保安庁と海上自衛隊は、協力関係を持たないなんて教育が、双方でされているわけではあるまい。

その意味では、防衛大学校という同一の学校で4年間机を並べた面々が、陸海空自衛隊に別れて以後、協力に不熱心といわれているほうが、意味がわからない。
組織の違いから、簡単には動けないという事情が大きいであろう。


かつてプルトニウム護衛を、海上自衛隊と海上保安庁のどちらが行うかで議論が別れた。
この問題が、今日起っていれば、護衛艦隊が担当することになる道も有ったろう。
しかし、当時は、海上自衛隊と海上保安庁の縄張り意識といっている以前に、海上自衛隊が海外で満足な活動が可能な環境が整っていなかったと言うこともある。

海上自衛隊と海上保安庁の協力関係は、実は古い。
海上保安庁の固定翼航空機のパイロット訓練は、海上自衛隊に委託されている。
最近では搭載していないが、巡視船の3吋砲の要員訓練は、海上自衛隊で研修していた。
海難が発生すれば、海の男として、付近の船舶は現場に急行する。これは海上自衛隊でも同じだ。

例えば、報道にあって、事件現場に接することも多いだろうが、当然取材優先で、必要な通報や、情報提供など後回しである。
これこそ、非協力であるが、組織の違いであり、必然でもあろう。

協力の在り方がどうのと言う以前に、頻発する事案が、今までの体勢に追いつかないものであり、それに追従しきれていないというのが実態ではなかろうか。
協力の窓は広いほうが良い。
協力を依頼し、あるいは受け入れる体勢は、効率よくあるべきだ。
現状、不備は多いだろう。
しかし、これをして、協力しないことを是とする体勢の如く報じるのは、明らかなる誘導であり、実態を伝えていない。

同一艦船名の問題



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新規作成日:2002年7月16日/最終更新日:2002年7月16日