自衛隊にもトマホークを導入か
2003.3.27、防衛庁は、米軍が対イラクのピンポイント爆撃に使用している巡航ミサイル「トマホーク」(射程約1700キロ)など、他国基地に限定的な攻撃を加えられる兵器の導入に向け検討に入った事を明らかにした。
核兵器や弾道ミサイルの開発を進める動きのある北朝鮮に、国内の不安が高まっていることなどを踏まえた事らしい。
ただ「自衛隊には敵地攻撃能力を持たせない」としてきた従来の専守防衛政策の転換にもつながりかねないだけに実現には問題も多い。
が、敵の攻撃基地そのものを破壊する事は、専守防衛の範囲内とする見方も存在する。
ただ、いくつかの問題がある。
トマホークは、巡航ミサイルであり、元来、戦略兵器である。
目標を「敵の基地」に限定するとしても、諸条件による誤爆も問題になろう。
もし、トマホークを、「敵の基地攻撃に限定する」とした場合、戦略的な抑止力にはなり得ない。
先制奇襲を可とすれば、また条件は変るが、これは無理であろう。
すなわち、反撃手段として、直接攻撃兵器を保有するだけなのである。
が、わが方で「敵の基地攻撃に限定する」としても、かの国がそのように判断しなければ、条件は変る。
仮に、双方の軍事バランスが「固定」され、わが方のみが増強するという事であれば、画期的だ。
しかし、軍事力というのは、相互均衡の上に「平和」が維持されているといっても過言ではない。
されば、わが方に有利な兵器の導入は、すなわち対抗兵器の導入を誘う事になる。
結果、軍拡競争となる。
また、この軍拡競争の途上、将来、圧倒的なバランスの不利を招くと判断した側は、不利にならないうちに戦端を切って事を解決しようとする局面もある。
されば、抑止どころか、戦争の誘因になってしまうのである。
イージスシステムの改良により、弾道ミサイルの迎撃能力を向上する事は、戦略的攻撃兵器を持たない我が国にとって、防衛専門の兵器であり、かの国に攻撃意図がない場合は問題は少ない。
しかし、トマホークは、敵の基地に限定しない運用も可能である。
すなわち、かの国と、戦略兵器でのパワーゲームを執り行うという危険をはらんでいるのである。
新規作成日:2003年3月29日/最終更新日:2003年3月29日