海上自衛隊に求めたい新型艦艇

海上自衛隊では、各種任務に対応すべく、高性能な艦艇を、鋭意整備している。
その主たるものは、対潜、対艦、対空など、外洋での我が国経済航路を維持する為の艦艇から、機雷掃海、輸送など、多種の艦艇におよぶ。

しかし、海上自衛隊においては、PKO活動や、災害派遣など、当初想定された任務から新しい分野への対応も多く求められている。
「整備する自衛隊から、活動する自衛隊へ」というのは、前石川海幕長の言葉である。
そして海上自衛隊では、現有の部隊をもって、これら多様化する任務に、鋭意当たっている。

が、費用対効果、実効性を考えると、最適な状態なのであろうか。

例えば、緊急に人や物を運ぶには、護衛艦でもなんでも、船舶であれば基本的に可能だ。
が、トラックを10台運ぼうとすれば、護衛艦に無理矢理搭載するには、2隻前後必要となろう。
もちろん、この場合は、輸送艦が指名されるのが普通である。
ただ、輸送艦は、元来、LST「戦車揚陸艦」という艦種記号が示す通り、上陸作戦にも対応できる戦闘艦艇である。
少々の攻撃には堪え得る反面、輸送能力が若干犠牲となるのは当然の事である。
もちろん、建造費も、艦艇構造とされ、高価なものとなる。

ここで提案したいのが、新型輸送艦。
ざっくばらんに言えば、カーフェリーである。
しかも、何も新造する必要もない。
新型船の投入により、リタイアする民間の大型カーフェリーを1,2隻キープしておけばよいのだ。
どうしてもと言うなら、商船規格で新造してもよい。
大きさは1,2万トン。車両、100-200台は搭載可能だ。
速力も25kt前後。
これは、特に高価なものではない。
民間フェリーの新造価格の内、内装に関する分は削減することも可能だ。
なにより、新造の必要は、そもそもない。
民間のお下がりでも十分なのだ。
お下がりは、4,5年の内には、ほぼ定期的に数隻ずつ供給されよう。
若干の燃費高や、メンテコストよりも、トータルコストを考えるべきだ。

災害が発生した場合、陸上自衛隊の応援部隊がまず向かう。
この時、寸断された陸路よりも、海路なら直行できよう。
陸路はドライバーの負担となるが、海路ならドライバーは休養し、現場で全力で働くことができる。
しかも、本土と言われる国内はもとより、離島、はたまた、海外まで、そのまま行くことができる。
輸送力も格段に違う。
輸送艦おおすみと言えども、100と言う車両は搭載できない。
しかし、カーフェリーなら、200でも詰め込むことができる。
そして、輸送後、車両を降ろせば、その空間は、多様に使用できる。
もちろん難民収容の体育館代わりにも使える。
そもそも船舶は、1つの生活単位でもある。
電気や水が自給できるのだ。
災害によりライフラインを寸断された地上に比べ、通常の生活環境がそこにある。
客室は避難民の居住はもとより、病室としても使用できる。
一般に、日本のフェリーなら大浴場も完備している。
最近はウエイトが減ったと言え、レストラン機能もある。
旅客定員が500であったとしても、こういった緊急時なら、5倍10倍の対応は可能だろう。そして、艦艇価格ではなく、商船価格、すなわち、半額から1桁安いわけだ。
単純に言えば、おおすみ型1隻の代わりなら、2、3隻、その輸送力は5倍前後となろう。
病院船や災害時母艦の構想は、逐次あがっている。
しかし、予算の制約から、専用艦艇に絞って調達する傾向があるのは致し方ない。
が、目的を再認識し、合理的に整備することも必要ではなかろうか。


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新規作成日:2003年6月16日/最終更新日:2003年6月16日