国連待機部隊構想

民主党は2004.1.4、自衛隊に代わって紛争地域での治安維持活動などの国際協力を行う組織として「国連待機部隊」の創設を党内で検討する方針を固め、菅直人代表が同日のNHK番組で表明した。
組織の詳細は今後検討されると言うのだが・・・

例えば、海上保安庁と海上自衛隊が別組織という問題点が既に有り、これを更に増幅させるような別組織を持つ必要性とその根拠の説明が求められる。

「待機部隊」すなわち、通常は任務に当たっていない部隊である。

例えば警察には「機動隊」がある。
特定の管轄を持たず、治安状況に応じて展開される部隊である。
これとて、警視庁などの大規模組織であれば、常設部隊を多く持つのだが、一般の自治体ではさほど規模の大きいものは持っていない。
また、第二機動隊、特別機動隊などと呼ばれ、通常は所轄の任務に付く警察官を、必要に応じてかき集めて機動隊を組織するのが通例でもある。
すなわち、予備組織は、常設するには予算的に厳しいのである。

自衛隊自体、当初警察予備隊と呼ばれ、(実働の機会がないほうが平和と言う意味で)本来は予備組織である。
そして平和が続く間、税金泥棒とまで呼ばれた時代もあった。
もちろん、世界情勢の中で見れば、自衛隊の存在自体が、国の防衛力として抑止効果を果たしていることは言うまでもなく、「役に立たない税金泥棒」と言う表現は聞き流してよい性質のものである。
あるいは(抑止効果による実働の機会がないほうが平和と言う意味で)感謝の言葉、歩め言葉と受け止めてよいであろう。
すなわち、常時の警備活動も行っているが、基本的には待機部隊である。
阪神淡路大震災の折には、待機を完了しつつも当時の法制度と、兵庫県知事の見識不足により出動が遅れた経緯もある。

さて、自衛隊は対外的には「正規軍」である。
されば、その海外派遣に関しては、イデオロギー的問題も大きい。
そういう背景の下に、「国連待機部隊」と称して組織を持つことに意味を持たせているのであろう。

しかし、過去の派遣例から、約2000名程度の規模は必要である。
また、運搬手段や、現地活動を考えれば、車輌はもとより、航空機、船舶なども必要である。
これらの維持管理や、運行要員を考えれば、軽く10000名程度の組織が必要とされる。
国内の、警察、消防、海上保安庁、自衛隊とは別に、更に10000名規模の組織ができるわけである。

即応性を言うなら、臨時召集ではなく、常設の必要がある。
ただ、災害派遣などの場合、既に警察や消防が、広域援助隊、国際援助隊として、組織し出動している。

任務は何であろうか。
単なる土木作業であれば、民間企業でもよいであろう。
自衛隊を派遣すると言うことは、それなりの危険に対する覚悟でもある。
「国連待機部隊」には、戦死のリスクをどのように持たせるのであろうか。
派遣地域での安全確保、治安状況の課題も多い。
武器を持たすなら、自衛隊の二元化に過ぎないし、武器は自衛隊が持って付いてゆくなら、そもそも別組織は必要としない。

また、組織的な詭弁とするのであれば、現有諸組織から「出向」と言う形で臨時編成させ、任務に当たればよいだろう。
看板が「自衛隊」ではなく「国連待機部隊」でありさえすればよいのであれば。
制服2000着くらいの予算ならたいしたことはなかろう。

そもそも、こういった任務は、各国「軍隊」が行っている。
これは、非常時の対応を含めてそれなりの装備を持ち、訓練をしている為なのである。
予備組織の存在意義は、よく考える必要があるだろう。

実際の提案内容は具体例を待たなければなるまい。
しかし、単なる与党対抗策として、新しいものを担ぎ上げるだけでは意味がない。
思いつきでプラモデルを集めるわけではないのだから。



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新規作成日:2004年1月18日/最終更新日:2004年1月18日