正確な情報が伝えられなくなったNHK
NHKといえば国営放送とも呼ばれる存在で、全国規模の放送局である。
民放も、系列によって全国ネットは取っているものの、その組織力はNHKにはかなわず、かつまた、特にニュースについては、国民のNHKへの負託も大きい。
しかし、昨今、その内容は、いい加減さが目立っている。
NHKといえども、バラエティー番組なども放送するから、こういった放送でいい加減なものがあっても、これはギャグですむかもしれない。
が、ニュース報道は正確さが要求され、面白おかしく編制されたのではたまらない。
事件事故などで、関係機関が徹夜で対応することがある。
これを「夜を徹して」というのだが、「よをてっして」と読むのであって「よるをてっして」とは読まない。
確かに、漢字の読みとしては「よる」も「よ」もあるわけだが、文章としての読み方で決まっているものもある。
常識を知らないアナウンサーが増えたのかは知らないが、これを聞き慣れた国民は、「よるをてっして」に違和感を覚えなくなってしまう。
もちろん、こうして育った若者が、NHKのみならず、民放のアナウンサーとなって放送に加われば、「よをてっして」が間違いかの時代もやってくるだろう。
原稿にルビを振る必要があるのか、はたまた、ひらがなで書くべきなのか・・・。
小学生の漢字の読み書きのテストで「なんと読みますか」というのではなく、ニュース報道と言う「商品」を提供しているわけで、この品質は、欠陥商品といわざるを得ない。
同様の事例では、「若干二十歳」もそうだ。若干は二十歳の枕詞だから、若いというだけの意味ではなく、若干十六などとはありえない。
2006.10台風接近で各地で海難が多発した。
このとき、海上保安庁が捜索救助や事故調査に当たるのだが、この報道で「海上保安本部が」という報道が目立つ。
海上保安庁は、国土交通省の外局で、全国に11の管区に分けて海上保安本部を置き、その下に海上保安部がある。
よほど大規模な事案でなければ、海上保安本部が主体となることはなく、通常は海上保安部が対応する。
大きな事案とは、例えば10万トンの船が沈んだ程度は含まれない。
従って、「(鹿島)海上保安部で救難に当たっている」という報道は正しくても「海上保安本部で」ということは正しくはない。
海上保安庁の船舶は、一部の例外を除いて、海上保安本部直属ではなく、海上保安部所属であるから、「海上保安本部の巡視船が」というのも正しくはない。
例えば、警察の捜査でも、よほどな大規模事案でなければ、所轄警察署が当たる。
このときに、いちいち「県警本部で捜査に当たる」とは言わないだろう。
110番通報によって、県警本部からは警察官はやってこない。県警の警察官が、警察署からやってくる。
むしろ、手を抜くつもりなら、「海上保安庁が」という全体表記にしたほうが正しい。
あえて海上保安本部を言いたいのなら、第三管区海上保安本部などと特定しなければ手抜き以外の何ものでもない。
むしろ、聞きかじった単語をただ並べたという、実に品質の低い報道といわざるを得ない。
以前はこういった報道はなかったから、担当が交替し、ロクな知識を持たないものが一度耳にした単語をなんの精査もなく使い始め、チェック機能もないさまががここにある。
NHKを巷では国営放送とも言うが、報道の場面では公共放送であって、国営放送とは言わないだろう。
しいて言えば、アナウンサーの一言のいい間違いすら、交通事故くらいの重い認識を持つべきであろう。
度重なる指摘がようやく功を奏したのか、2006.10.15 夜のニュースでは「第三管区海上保安本部に通報があり」「横須賀海上保安部が救助に」とまっとうなアナウンスが蘇っていた。
が、再び後戻りし、2007.2にはすべて「海上保安本部」の表現になっている。
当方の指摘に対して、
> 一般的には、情報の提供元をクレジットとするのが原則。
> 海難事故の場合は、各海上保安本部が情報提供するケースが多いということだ。
という回答が来たが・・・。
発表者が誰かではなく、捜索救助に当たっている組織体、船舶、航空機の所属について、言っているわけで、海上保安庁、または、海上保安部が正しいこと。
これを、海上保安本部といい続けることに疑問を持たない精神がおかしい。
極端な言い方をすれば、xx組の暴力団員が逮捕された場合、逮捕者がxx組ではなく、発表した警察署の所属という報道をしているのと同じということだ。
ニュース報道としては、極めて不正確な情報である。
民放が正しく報道できる点を確認してもらいたいものだ。
新規作成日:2006年10月14日/最終更新日:2007年2月13日