食物燃料の功罪
地球温暖化の対策として、穀物燃料が脚光を浴びている。
大豆などの穀物から、エタノールを作り出し、化石燃料と混合して使用するという。
ミソは、穀物は植物だから二酸化炭素を吸収して育つから、これを燃やして排出される二酸化炭素の総量と一致し、穀物燃料を燃やした分の二酸化炭素排出量は、大気中の二酸化炭素排出量として増加しないというものだ。
一見すばらしく見えるのだが・・・。
これを育て、加工するための資源、エネルギーも換算しなければなるまい。
第一、抑制にはなっても、混ぜて燃やす以上、増加傾向は止っていない。
そして、更に大きな問題を潜在している。
既に始まっているが、穀物価格の高騰。
作付面積が、突然独立して増加するならともかく、転用となるわけで、穀物燃料が脚光を浴びることにより、穀物価格が高騰する。
されば、食料価格が高騰し、貧しい国民の食を脅かす。
また、穀物燃料のための穀物は、人間が食べることを前提にしていないから、遺伝子組み換えにも農薬使用も触りはない。
が、虫や鳥が食べ、食物連鎖の結果として、人間に影響がないとは言いがたい。
ましてや、穀物価格は、市場経済によって動くから、生産者は、より条件のよい売り方をする。
食用、燃料用として、別々の生産方法を選択して生産し、流通させるべきモノだが、農作物は自然の影響を大きく受けるから、作付けの時点と収穫の時点では、市場経済は大きく異なる。
このとき、燃料用として生産したにもかかわらず、食用需要が増大していたら、食用として売ったほうが儲かる。
もちろん、食用を燃料用に転用すれば害はないものの、燃料用を食用にすれば、食の安全に問題が残る。
しかし、すべてがまっとうな生産者ならともかく、腹黒いものもいれば、管理がいい加減とか、更には流通業者が悪い事を考えれば、いくらでも食の危険が蔓延する。
そもそも、食べ物を別の用途に使用するという発想が問題だろう。
思えば、太平洋のマッコウクジラを、油をとるためだけで獲り尽し、やがて化石燃料に転換したとして鯨保護を言い出すのが西洋流の論法である。
聖書には、鯨を食べ物とは書いていないというのだが、食べ物を燃料にしてもよいとも書いていない。
2007.4 国内でもバイオエタノールの販売が始まった。
含有率は3%という。
これは、腐食等のエンジンへの悪影響を考慮した数値というから、無条件に影響がない性質のものではないことを明瞭に示している。
食品の価格は着実に上がっている。
直接的な穀物価格のみならず、他の食品へも波及し始めた。
バイオエタノールへの転作が始まれば、減作となる食品の価格が値上がりするのは当然だ。
一点豪華主義の環境配慮はせせら笑うしかない。
新規作成日:2007年2月13日/最終更新日:2007年2月13日