2007.7.16新潟県中越沖地震に見る原発の安全性
2007.7.16 新潟県中越沖地震が発生した。
この際、東京電力柏崎刈羽原発の安全性が問題となった。
当初、点検中などで停止中の原子炉をのぞき、運転中の原子炉3基は、地震の揺れで自動的に停止した。
基本中の基本とはいえ、無事正常動作したことは好ましい。
ただ、この後、いくつかの問題に見舞われる。
まずは、屋外での火災発生。
停止中の6号機の屋外に設置されていた変圧器の油が燃えたとかで火災、黒煙が舞い上がった。
これに対して、自衛消防隊だけでは対応できず、消防局の到着を待って鎮火した。
また、保管中の廃液が流出した。
流出量は風呂桶いっぱい程度で、許容量内という。
また、保管中のドラム缶が倒壊し、一部の蓋が開いて廃液が流れたとか、煙突から微量の放射線が洩れたりという。
関係当局への通報が遅いとか槍玉に上がっているが、大地震という現場を考えれば、最善を尽くすべきだが、ちまちまクレームをつけても仕方ない。
ただ、関係者の発表で「想定外の揺れで」というのが気になる。
確かに、建築基準法は、ある程度の強度に耐えるものとされてはいるが、それ以上となると損壊は免れない。
耐震強度というものは強いほど良いが、あまり高いレベルを考えてしまうと、建築設計が成り立たず、ある程度の経済性を優先すれば、想定範囲が設定されるのも致し方ない。
が、わが国は地震国だ。
全国どこでも地震は起こりうる。
比較的長期間揺れた記録がないからといって、その地域のよそでは揺れているのだから、どこだって揺れる可能性は潜在する。
そして原発の場合、どこまで想定するかといえば、とりあえず過去に国内で生起した最大級のものは想定しておくべきだろう。
ただ、敷地内の全ての施設がというと、経済性などの問題もあるわけで、原子炉など最低限度護るべき部分があるはずだ。
その意味では、「想定外の揺れで」と軽々しく表現せず、明確な表現が求められる。
でなければ、やたら不安を招いてしまうだろう。
この事件は国際的にも反応があるようだ。
この中で、ロシアの放送局が、この廃液流出について「周辺国への影響」を懸念しているのには笑う。
今回の流出は、発表の範囲であれば、風呂桶一杯程度。(その後計算ミスで「1.5倍」に訂正されたが風呂桶の大きさが一回り変わった程度だ)
その昔、廃棄原潜から回収した放射性廃液を、タンカー一隻分、日本海の真ん中で投棄したことがあった。
この際、「日本海は広いし、沿岸から離れていてまったく問題ない」とのたまわったのは、ロシア政府だ。
日本海中央から比べれば、日露の対岸は2倍の距離もあるし、大体量が桁違いだ。
言ったもの勝ちとはこのことで、明確な表現がモノをいうということだ。
その後、約50ものトラブルが確認されたという。
これに対して一部報道では「50箇所ものトラブルが発覚」などというのだが、発覚というのは隠蔽していたものが露見した場合に使う言葉で、今回のように調査が進行してわかってきた場合に使用する言葉としては適切ではなく、やたら不安を煽る行為だ。
あれだけ揺れたのだから、むしろ数え切れる程度の不具合は歓迎すべきだろう。
国や柏崎市は、東電の幹部を呼んで、安全が確認されるまで使用停止させるという「命令」を発している。
あたかも行政として「きっちりやっています」ということにも見えるのだが、むしろ、パフォーマンスに過ぎない。
およそ、電力のような基幹に値するものは、特に、原子力に発電量の1/3も依存しなければならないという現状を鑑みれば、このように、他人事のような対応では済まされない。
「安全が確認されるまで使用停止させる」のは、むしろ「早急に安全を確認し使用再開させる」必要があるわけで、国や柏崎市は積極的に支援すべきだ。
東京電力も、一企業ではあるのだが、もし「やーめた」と言って、全ての発電送電を停止したらどういうことになるのか良く考えるべきだ。
即日首都圏は混乱し(いや、音も鳴らないか^^)、数日を経ずして日本経済は崩壊する。
東京電力はまっとうな企業だから、このようないい加減なことにはならないのだが、それに甘えて文句ばかりつけていても始まらない。
新規作成日:2007年7月17日/最終更新日:2007年7月19日