くすのきの郷の不正請求問題
文京区の区立特別養護老人ホームくすのきの郷が、介護報酬の不正請求で、指定取り消しとなり、責任者の柏木所長が懲戒免職となった。
勤務関係書類に実態と異なった架空の氏名を記載するなどして、介護報酬の不正請求をしたことが問題という。
不正請求は犯罪だ。
が、その差額によって何がなされたかも考えるべきだ。
柏木所長は、減り行く人材の対策として、実在する外国人ボランティアを、形態を変えて申請することによって、体制の維持を図っていた。
体制の維持とは、受け入れ規模や、介護業務の質である。
この「形態を変えて申請」が、すなわち、不正の対象である。
ただ、その不正の結果、柏木所長の個人の懐が潤うわけではなく、くすのきの郷の利用者が恩恵を受けると言う点がポイントだ。
ねずみ小僧治郎吉といったところだろうか。
東京都や文京区の担当者は、2007.9.6のNHKの番組で「前代未聞の不正」と言う。
確かに、介護事業その物が新しい形態であるから、かかわる不正も新種であるがゆえに、過去の事例はないかもしれない。されば前代未聞はその通りだ。
では、公務員の横領着服は、昔からよく聞くから、珍しくもなく、オッケーなのか。
一担当者が個々の職責の範囲で限定的に言うならいいが、行政全体を代表するかのごときは公平さが求められる。
だいたい、赤信号を無視したことが一度もない、などと自慢できる職員はいないだろう。合法か非合法かの議論はよい。
が、杓子定規で全てが進むかといえばそうも行かない。
介護報酬額は決まっているが、人件費の高騰や、介護職員の減少など、介護業務の先行きは暗い。
しかも、要介護者は減るどころか増加の一途だ。
これに対する行政の対策は甘い。
コムスンによる不正請求も、規模は違うが似たようなもので、大企業が不正をしたという点で問題は大きい。
が、そもそも、こういった事業を、営利企業に任せようという発想事態が正しいのだろうか。
営利企業はすなわち、利ざやがナンボの世界である。
資本金を供出してばら撒いてはくれない。
そんな中、サービス向上をかもし出すには、何らかの資金が必要で、請求方法によって出方が違うなら、それを試みてくることは必定だ。
政治の世界でも、領収書のコピーを使えば何重にも経費が生成できてくる。
目先の問題を潰してみるのはよいが、本質的な課題を解決できないようでは意味がない。
新規作成日:2007年9月6日/最終更新日:2007年9月6日