まやかしのコンピュータ神話

コンピュータが導入されて以来、すでに久しく、もはやコンピュータの存在無くして何もできない時代になりつつある。

しかし、その実態は、きわめて御寒い事情が潜在する。

「コンピュータは正確だ」と皆、口をそろえてのたまう。
もちろんそうであってもらわないと、困ってしまう。
しかしそんなに正確なのだろうか。

例えは電卓。
電卓は、コンピュータには入らないが、電子回路で計算すると言う部分は、類似性がある。
電卓の計算は、完全無欠だろうか。
先ずは桁あふれ。9999999999 × 9999999999 の結果を正しく表示できるものは少ない。ま、これを不正確の範疇で言うか、使用制限と言うかの問題は有る。
特に多いのは、キーの押し間違い。もちろん、思ったとおりの結果は現れない。これも、オペーレーションミスと言えばそうかも知れないが。

コンピュータと言えども、人間の作ったもの、予期しない問題は多々潜在する。
コンピュータが出現して半世紀、先端を行く最新鋭大型コンピュータは、科学技術の粋を極め、十分な予算と管理体系に元づいて設計・製造されているので、機械自体の間違いは極めて少なく、発生しても、チェック再試行などにより、リカバリされることが多い。

が、コンピュータも千差万別、安値のパソコンに至っては、ここまでの水準は維持されていない。もちろん費用対効果から、かなり十分なレベルであるとも言えるが。

とまあ、機械そのものは、かなりの精度で出来上がっている。

しかし、コンピュータは、機械そのものでは、何もしない。電力を消費するだけである。
コンピュータの動作には、さまざまなソフトウェアが必要である。

が、このソフトウェアが、眉唾物だ。

コンピュータのソフトウェアには、OS(オペレーティングシステム)と、アプリケーションソフトウエアに大別される。
OS(オペレーティングシステム)とは、コンピュータを使いやすくするために、常時動作している各種プログラムである。
大型コンピュータでは、メーカーが、機械本体と同じように、技術の粋を集めて設計・製造されているので、問題は極めて少なく、発生しても、チェック再試行などにより、リカバリされることが多い。
しかし、巷に流通しているパソコンに至っては、多種多様な展開になっている事情もあり、ここまでの精度は維持され居ない。
パソコンの使用中に、ハングアップ(固まる)等と言うものは、OS(オペレーティングシステム)が、トラブルを処理し切れなかったために起きている。
もちろん、マイクロソフトなども、適当で良いとは思っていないが、あまりにも大衆化したニーズを同じに消化することは困難で、しわ寄せとして信頼性の低下につながっている。

アプリケーションソフトウエアは、実際にコンピュータを使用する、各種ソフトウェアである。
銀行業務用、在庫管理用、航空管制用、オンラインサービス用、はたまたゲーム用、あらゆるソフトウェアがあり、そのいずれを動作させているかにより、そのコンピュータの使い道が変わる。

ここで大きな問題がある。
こう言ったソフトウェアを設計・開発している者を、ソウトウェア技術者と総称するが、この質が問題なのである。
コンピュータ発生当初は、こう言った仕事は、技術者、研究者に限られ、どちらかと言うと科学者に近い、極めて能力の高い人たちが関わっていた。
が、昨今では、誰でも、それこそ小学生でもプログラムを作ることができる。
これは、開かれた世界と言う意味では歓迎すべきなのだが、業務としてソフトウェアを製造し、利用者の用に供する場合、極めて問題が多い。

自動車であれば運転免許、医者なら免状などの資格が必要だが、事、ソフトウェアに至っては、必須となる資格が存在しない。
通産省などで、ソフトウェア技術者の資格試験を実施しているが、あくまで技術水準の指標にしか過ぎず、せいぜい就職の裁定にしか役に立っていない。
ほとんどの産業には、必ずと言って良いほど監督責任と必要な資格が存在するが、なぜかソフトウェアにはこう言ったものが存在しない。
これほど恐ろしいことは無いのである。

ソフトウェア技術者の資格と言うのは、その手順を熟知し、工程管理により、高度な水準を維持した開発を実現させるのに必要な部分である。
子供が遊びで作るプログラムや、ゲームソフトと、企業や利用者により重要な業務ソフトが、同じレベルで論ざれて良いわけは無いのである。
しかしながら、巷のソフトウェア開発業者の大半は、満足なソフトウェア技術者の資格保持者を抱えておらず、それこそ「プログラムを書きさえすれば良い」連中が多い。
中には、プログラムが満足に作れず退職したものが、社長として素人を集めて、ソフとウエア開発業者を経営する場合すらある。そのしわ寄せは、一部の有能な者と、発注元、押し付けられた孫受け会社等に波及し、更には利用者に迷惑を及ぼすであろうことは創造に固くない。

しかもコンピュータ産業は、主に機械メーカーが受注し、関連するソフトウェア部門が、ソフトウェアの設計・開発を請け負う。
が、この組織は、需要に対して極めて貧弱で、関連会社などに下請けとして発注する。ソフトウェアの開発には、設計、製造、試験、等さまざまな工程が存在し、期間も投入人数も、多岐にわたることが多い。為に、下請け孫受けは当たり前で、中間マージンを経て、あちこちに分散される。
末端では、薄利多売の生産をするから、碌な物が出来上がるはずも無く、トラブルの温床となる。
こうしてあちこちで適当に出来上がったものを、再び集めて、確認試験をするのだが、膨大なものと成って、とてもすべての試験など実施しない。
管理された開発体制の場合、試験範囲を限定しても、問題は少ないのだが、通常、管理された開発体制など夢物語で、烏合の衆が製造したものを、時間と予算の関係で、通り一遍の試験しかしない。
最終確認で、特に何も起こらなければ、完成とされる。
こんな恐ろしいことは無い。

例外的に、航空自衛隊のバッジシステム開発に際し、受注元社員のみの条件がついていたらしいが、当然そんな要員が存在しているわけも無く、関連会社・下請けの社員を、一旦退職・採用の手続きをとり、開発終了後、解雇・復職と言う手段まで使っている。
これとて、オウム関係者が作業に関与していたと言う間抜けな話も存在するようだが。

金融機関を利用して、おかしいと思って窓口で確認すると「コンピュータがやっているので間違いはありません」と簡単に答える。もちろん、こちらも相応のノウハウで試算した上で確認しているのだから、ちゃんと手計算してもらわないと収まらない。
「ンナ事面倒くせえなあ」と言う態度の担当者にやってもらうと、1回目の計算が終わったところで、筆が止まる。そして再びやり直して、筆が止まる。あちこちから本を取り出して、ぱらぱらめくり、何度も何度もやり直す。本部へ電話したりと忙しい。当然こちらへは一言も無くなっている。そして平身低頭、菓子折何ぞを持参してくる。
こんな状況は、すでに何度も出くわしている。

コンピュータの計算結果は正しくあってほしいものだ。
しかし、こう言った状況を考えると、とても安心して使えない。


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