高速道路の問題
経済低迷の昨今、道路行政が大幅に見直されている。
その一つとして、高速道路の民営化が検討されている。
その一貫として、当初計画されていた、全国高速道路網を、継続して建設するか、中止するかで議論が続いている。
小泉首相の肝いりで審議会が設けられ、審議がされたが、中途半端な状態で、極めて偏った結論が出された。
なんなんだろう。
日本列島改造論と言うものがあった。
高度成長期でもあったのだが・・・。
当時の日本は、太平洋ベルト地帯と行って、京浜、中京、阪神、北九州などの大都市圏を中心に、先端産業が機能していた。
これに対し、時の田中角栄首相は、全国各地を高速道路で結び、物流を円滑化すれば、各地が繁栄し、日本全国が繁栄するとして、日本列島改造論を打ち立てた。
彼の選挙区である新潟には、上越新幹線と、関越自動車道が整備された。
そして、首都圏とごく間近となり、新潟は繁栄した。
これを地元誘置と言うかも知れない。
しかし、彼は、全国を視野に入れていた。
が、政権が変り、建設費が高騰してくると事情も変って行く。
一般の道路は、国道、県道など、国や自治体が、税金を持って管理している。
その財源は、自動車税などの道路財源である。
高速道路は、建設費も高額であり、必ずしもすべてのものが恩恵にあずかるわけではないとして、受益者負担の制度が採られている。
すなわち、建設費と維持管理費を、通行料収入であがなうのである。
が、建設費と維持費が高騰する割に、通行料を値上げも出来ず、交通量も伸び悩むと言えば、償還予定も狂ってくる。
積もり積もった累積債務に耐え兼ねて、民営化議論が展開された。
が、そもそも道路は何の為にあるのであろう。
行楽の為なら、どうでも良かろう。
が、全国機会均等を図り、産業を活性化させると言う見地であれば、全国均等に高速道路網があってしかるべきだろう。
審議会は、結論を1つにまとめた。
議論の末、まとめるのもよろしかろう。
しかし、国民の声を代表するつもりなら、あらゆる角度から検討し、答えを出さなければならない。
それは、単に財政の問題だけではならないのである。
高速道路の整備をうちどめるなら、代わりにどうするのか。
一般道路の制限速度を100kmにあげてしまうと言うのも一つの方策だ。
高速道路の料金体系も、料金所の人件費が馬鹿にならない。
ETCなどに力を入れているのだが、鉄道のようなカード清算方式でも、十分ではなかろうか。
道路公団の組織が問題となっている。
この組織維持の為に、無駄にコストがかかっている事は確かだ。
これを打ち破る事は必須条件であろう。
が、建設を凍結するかどうかは、別の問題だ。
そしてまた、モーダルシフトと言うものもある。
海路を活用する方法だ。
東京−高知は約1000kmだ。これを100km/hで飛ばせば10時間だと言うのは、机上の空論に過ぎない。
海上なら、約800kmで、20ktなら約20時間だ。倍もかかると言うが、実効的には大差ないはずである。
どうしても急ぐなら、飛行機で2時間だろう。
発言者個人のなにやぶしは聞いても始まらない。
別にヒーローが必要なわけではない。
要するに、拠点間の便利さが求められているわけだ。
大阪市の渡し船は、人道の代わりなので、無料である。
高速道路も、償還すれば無料化と言うが、計算方法のごまかしで、無料化の時期は無限に未来である。
高速道路のみならず、海路空路を含め、交通行政をトータルで見直す必要が有ろう。
そして、料金を取るのが能ではない事を、あらためて確認する事である。
船より橋だと言う。
もちろん、気象に影響されにくいと言うメリットは大きい。
が、船の輸送量はキャパシティに上限が有るが、橋なら連続して無限と言う見積りもいい加減だ。
そもそもの物流の現状と、将来展開は、シビアに算定しなければならない。
審議委員会の結論は、色々な議論を呼んでいる。
人選自体から、問題とされている。
松田委員は、JRの人だ。
人選の理由は、国鉄民営化の経験からのはずなのだが、どうも、鉄道輸送の売上を脅かした陸上輸送への報復的気配も見えている。
JRは、国鉄のかなりの負債を国に押し付けて民営化し、JR東日本は東北新幹線を建設しつづけている。
にもかかわらず、高速道路網は建設できないと言うのはおかしな話だ。
高速道路網は、あって邪魔とか困ると言う性質のものではあるまい。
もし、建設費も維持費も不要と言うことであれば、いくらでも線を引きたいだろう。
すなわち、必要なものなのである。
しかるに、費用をどうするかに知恵を絞らなければならない。
新規作成日:2002年12月7日/最終更新日:2002年12月10日