草加市では拾得物を届け出ると窃盗罪になるのか
2004.2.23 草加市のごみ集積所三十数カ所から古紙を回収した八街市の男性が、埼玉県川口市の古紙回収問屋で分別作業中、ポリ袋に入った状態で現金2800万円を発見し、警察へ届け出た。
これに対して草加市は、男性が市の指定業者でなかったこともあり「2800万円は古紙として捨てられた以上、市のものだ」と主張し、窃盗罪で告訴するという。
確かに、資源ごみとして出されたものを、勝手に持ち去り、利を得ようとすることに問題もあり、資源ごみを「ごみ」ではなく「資源」として扱い、持ち去りを規制する制度も始まりつつある。
が、黙っていればわからないものを、善意に届け出たものに対して、「窃盗で告訴」とはどういうことであろうか。
「本来であれば、指定外のものによる勝手な持ち去りは不届きではあるが、拾得物としての届出は殊勝」という扱いがまっとうなものだ。
が、草加市では、この現金自体の所有権を主張し、そのうえ窃盗罪で告訴するという。
実際の訴訟になった場合、ごみの所有権について論点になり、優秀な弁護士なら、「善意の拾得物」で決着できるであろう事は想像に難くない。
そして窃盗としての告訴も、名誉毀損として損害賠償の対象にできるであろう。
直後より草加市へは苦情が相次いでいるという。
「草加市はセコイ」「子供に、拾得物を届け出ることを教えられない」という物もあるという。
これらに鑑み、草加市では、告訴を取り下げる方向だというが、窃盗には変わりがないとがんばるらしい。
窃盗というには、所有権が草加市にあって初めて成立する。
資源ごみの中にあったとしても、前所有者が「資源として供出した」のでなければ成立しないだろう。
そしてまた、貨幣を資源として処分するのかという問題がある。
草加市が所有権を主張した後、持ち主が現れ、草加市による略奪として訴訟が起きても楽しい。
また、所有権を言うなら、しかるべき管理義務も存在する。
たとえば、現金1000万程度をむき出しで公園において置くとする。
そして数時間後確認すると、なくなっていた。
「盗られた」と警察へ訴え出るのもよいし、持ち去ったものは窃盗罪にはなるかもしれないが、多額の現金を置き去りにして失われたという落ち度は十分に指摘されるだろう。
資源ごみの所有権で争うということは、そういうことだ。
しかも、草加市においては、明確な条例はまだない。
確かにリサイクルというシステムから、本来あるべき姿はあるだろう。
しかし、こういう局面でまで、杓子定規にする意味はあるのだろうか。
いや、草加市に、それほどの資格があるのだろうか。
職員の汚職等に対して、法の規定とは別に、微罪でも懲戒免職、そして死を持って責任をあがなうくらいのことがなされているのだろうか。
市内でタバコの吸殻を放棄したものは、全員罰せられているのだろうか。
今までに資源ごみの持ち去りに付いて、検挙の実例があるのだろうか。
他者に過剰にものを言うなら、自らが十二分に律せられなければならない。
自治体の財政難もあるかもしれない。
しかし、拾い物の所有権を争うなど、子供のすることだ。
拾った男性は、権利を放棄したという。
これは、市側の圧力、暴力によるものだろう。
大岡裁きなら「業者としての届出が、市の台帳に記載漏れがあった」位のものだろう。
最大の問題は、拾ったものを届けると、捕まるかもしれないというおかしな事例を、草加市が作ったということだ。
新規作成日:2004年3月7日/最終更新日:2004年3月7日