女子フィギアスケート日本

2006.2.24朝(日本時間)、トリノオリンピックの女子フィギアスケートで、荒川静香選手が見事金メダルに輝いた。
今回の日本のオリンピック出場選手すべての中で、初めてのメダル獲得である。

思えば体重や用具の規定をロクに理解せず出場し失格となる選手や、国旗国家を愚弄する選手が多い中で、極めて賞賛に値する。

日本の女子フィギアスケートでは、渡辺絵美さんあたりから世界の舞台で活躍が認められ始めたと記憶している。
その後、天才少女と呼ばれた伊藤みどりさんは、当時唯一という三回転半を決め、オリンピックで銀メダルに輝いた。

その後、八木沼純子さん、佐藤由香さんなど、選手層も厚くなっていった。

今回、2005世界グランプリファイナルの段階では、浅田真央ちゃん、荒川静香さん、村主章枝(すぐり ふみえ)さん、恩田美栄(よしえ)さん、安藤美姫さん、中野友加里さん、らが覇を競い、すべてがオリンピック出場を嘱望される賑わいだった。

果たして浅田真央ちゃんは僅かに年齢不足でオリンピック代表にはなれなかった。
これに対して日本の事務局は「規定」をたてに国民の声を無視し、委員会への申し出をしなかった。
規定は規定だが、意味のない規定はあらかじめ改めておくべきだろう。
年少者に過酷な練習を強いることがよくないとして、オリンピック出場年齢があるのなら、そのほかの大会で、オリンピック選手を凌ぐ活躍を出来るだけの練習はナンなんだろうか。
ま、浅田真央ちゃんには、この先の楽しみもあるだろう。
次回は20歳、もっとも旬である。

さて、今回のオリンピック出場枠は、荒川静香さん、村主章枝さん、安藤美姫さんが獲得した。
金銀銅の期待も高まる。
ハイレベルな技の安定した荒川静香さん、繊細で優雅な演技の村主章枝さん、4回転ジャンプの安藤美姫さん、いずれもが実力を備えている。
立ちはだかるのは、ロシアのスルツカヤさんら。
難病を抱えていながら、技も演技も申し分ない選手だ。
日本選手3名の良いとこ取りをして立ち向かっても対等というレベルでもある。

果たして初日のショートプログラム、荒川静香さん3位、村主章枝さん4位、安藤美姫さん8位。
そしてフリー。
安藤美姫さんは果敢に4回転に挑戦したものの惜しくも失敗。それが響いたのか、後続の演技にも笑顔は少なかった。
荒川静香さんは、見ていて心配するところのないジャンプで、高得点を得た。
そして村主章枝さんはほとんどノーミスでスタンディングオベーションを受けた。惜しむらくは、高得点の技があまり盛り込まれていないところでの点数の伸び悩みか。
対するスルツカヤ選手は、まさかの転倒等、上位を維持できなかった。
思えばスルツカヤ選手は前回の2005世界グランプリファイナルでも、優勝を浅田真央ちゃんにさらわれており、ここぞという局面での運がなかったのか。

表彰式では、金銀銅制覇こそなかったが、中央には日の丸、そして君が代が演奏された。
今回のトリノオリンピックの中で、初めて日の丸の掲揚、初めての君が代の演奏である。
注目すべきは、表彰台の荒川静香選手は、君が代を歌っていた。
当たり前ともいえるが、これが満足に出来る日本人は少ない。

思えば、長野オリンピックにおいて、スキーモーグル競技で不幸にして金メダルを受賞したがために表彰台に上がり、着帽のままであったとして顰蹙(ひんしゅく)を買った女子選手がいた。
品位の有無の差を象徴する。
雲泥の差とはこのためにある例えだ。

女子フィギアスケートのフリーは4分間。
銀板の女王と謳われる選手は、この4分間に集中する。
他の種目と違い、途中で休むことはない。
演技後、しばらくは息が上がっているのは当然だ。
そしてまた、一部の失敗の後も、残りの演技を果たしきる。
途中棄権の姿は見たことがない。

メダルに対して、日本では奨励金制度がある。
メダル受賞者の、今後の営業収入は億単位ともいわれる。
特にフィギアスケートでは、他国でも、そのステータスは高く、為に過剰な競争ともなっている。
が、特にフィギアスケートの場合、その錬成コストは形容しがたいといわれる。
かつては、財閥のお嬢様でもなければ、続けられないとも言われた。
伊藤みどりさんの場合、このハンディを、山田コーチをはじめ、多くの支援者が支えている。
それよりも、なにより、過酷な孤独な戦いは筆舌に尽くしがたい。
株で億を稼ぎ出すものは何人もいるが、オリンピックの女子フィギアスケートでメダルを取れるものは何人もいない。
目先の額面は、貧乏人の妬み以外のなんでもない。

なによりも、国を代表し、国威高揚という、オリンピックの側面を見事固めたことは賞賛に値する。

「オリンピックに出るだけでも名誉なことだ」とは、安藤美姫さんの言葉だ。
この価値がかみ締められるのも、女子フィギアスケートならではである。
枠があるから誰か出られるという程度のスポーツとはわけが違う。

かつてオリンピック選手の中に、成績不振で命を絶った方がいる。
そこまで思いつめるのは実に気の毒だ。
しかしながら、遊び感覚で行ってろくな成績も残せず、時間と経費の無駄というものと、同一レベルにはおきがたい。

フィギアスケートは、冬季オリンピックのメインエベントでもある。
後半の競技はその位置づけだ。
その最後を飾る競技、まさに銀板の女王である。


荒川静香選手の地元の宮城県では、県民栄誉賞を出すという。
そういえば国民栄誉賞なんてものがあった。
今回のオリンピックで、唯一日の丸を掲げ、君が代を吹奏ならしめたとすれば、国民栄誉賞の資格は十分あると思うのだが。


さて、このスケートを舞台に、協会の連中が私服を肥やしていたとか。
言語道断だ。
協会の施策で、国内に有力な選手が育ってきた。
が、育てて私服を肥やすつもりならとんでもない。
スケート選手にぶくぶくした奴はいらない。

2006末、荒川静香選手は引退したが、女子フィギア界はすごい。
浅田真央ちゃんを筆頭に、村主章枝、安藤美姫かと思えば、恩田美栄、中野友加里、武田奈也、澤田亜紀、浅田舞と、国内だけでも表彰台が足りない。
3回転ジャンプは当たり前のように飛び出すし、ジャンプの失敗も少ない。
演技の優雅さも求められる。
頑張れ女子フィギアスケート。




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新規作成日:2006年2月24日/最終更新日:2006年12月29日