Column
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2003-12-10
「イギリス」と言うと、どんなことを想像するだろうか。政治に興味のある人なら、きっと「議会制民主主義」発祥の国と思うだろう。僕もそう思っていた。 確かにイギリスは「議会制度」の発祥の国かもしれない。しかし、「民主主義」の国であるかと問われると、かなり疑わしいところだ。いや、言いたいのは、文化そのものが民主的なのか?という疑問だ。 イギリスは、「階級社会」である。これは、昔の話ではない。今でも十分息づいている。そんなことが生活のいたるところで感じられる。 代表的なものは、「言葉」である。聞いたことのある人も多いと思うが、イギリスでは、階級(生まれた家庭環境)によって、「英語」に違いがある。もっとも違うのが「アクセント」だ。地域の訛りもかなり強く影響を受けるが、その違いは本当に同じ英語なのか?と思うくらい、違う。というか、何を言っているのか分からない。それは、テレビやラジオで聞く英語と普段街中で聞く英語の違いで直ぐ分かる。言葉のアクセントで、その人の人となりがある程度推測できる。これ本当。 言葉で階級が違うなどというのは、初歩の初歩である。イギリスが非民主的だと思わせるものは、日常に溢れている。もっとも驚いたのが、スーパーマーケットのランクである。 日本では、スーパーと言ったら、イトーヨーカードーでも、ダイエーでも、クラス分けなど普通しない。どれも同じ「スーパー」だ。それ以上でも、それ以下でもない(最近は、「成城石井」などの「高級スーパー」があるけど)。しかし、イギリスでは、人々はスーパーにもランクを付けている。 僕の寮近くにあるスーパー「Netto」でいつも買い物をしているとあるイギリス人に言ったら、“あそこはレベル低いよ”と言われた。で、“Morrison'sって言うスーパーの方がランクは上。マークス&スペンサーは一番イイね”とも言う。“レベルが低いってどういうことだ?”と思う。品質が悪いのか?と思う。食料品の品質なんて、一定以上は守れてるもんだろうっ!”と思う。でも、お金持ちは、Nettoでは買い物はしないらしい。 大学にもクラス(階級)がある。それは「学位」のクラスである。イギリスの大学の学位(学士)には、成績の良さで「First Class],「Second Class」などとクラス分けされる。日本なら、同じ大学の学部・学科を卒業すれば、同じ「学士」である。でも、イギリスは違う。一見、「能力主義」なのだろうと思うが、普段の生活における階級意識の強さから、イギリス人はどうしても他人と差を付けたいという思いが強いのかもしれない。 イギリスの新聞には、高級紙(Broad Sheet/Quality Paper)と大衆紙(Tabloid)の二種類があることも有名である。この「高級」と「大衆」という分類(Classification)もまたイギリスらしい。これは、労働者と同じ新聞は読みたくない!という上流階級のエゴなのだろうか。いや、必ずしもそうではなさそうだ。大衆紙の記事の内容は、殆どがゴシップなどだ。有名人の離婚や不倫、はたまた、女優のワキ毛の比較など…。どれもあまり品の良いものではない。で、そんな大衆紙に共通してみられるのが、有名人や金持ち、政治家などへのあからさまな批判だ。そういう人たちをネタに記事は書かれている。推測するに、普段労働者階級が抱いている上流階級への不満ややっかみなどを、この大衆紙というものが代弁しているのだろう。 と、少ない例を使って、イギリスがどれだけ階級社会かを論じてみた。根拠はないが、こちらで生活すれば、そんなことがひしひしと伝わってくる。こんな階級社会のイギリスが、民主主義が云々と世界に声高にしていることに違和感を感じる。きっと、当のイギリス人の中にもそんな矛盾に気づいている人はいるだろう。でも、この階級社会は、イギリス人の深層心理に深く根付いている。こんなんで民主主義国家なのかい・・・。大きな疑問だ。 |
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